鐘が6回
5話
──そう、いま西の酉の中にはサウロ、市長の中には西の酉、少年の中には市長が入っている。──
西の酉の貴族の姿となったサウロは考えていた。いま、何が起こっているのかはわからない。しかし、新しい肉体が手に入った。言葉は話し方がわからない。この肉体を利用して奴隷から抜け出すことができるのではないか。
西の酉改めて、サウロは冷静になるため、屋敷の物陰に身を潜めた。
その頃、市長の中に入った西の酉は目を覚ました。
市長となった西の酉は考えた。そして、自分の市長の身体を見た。
そして、気付いた。まさか、肉体が入れ替わったのか。更に考えた。剣は何処だ?そうか西の酉の貴族に入った少年が持ち去って…そして奴隷にはおそらく市長が入っている。確かめてみよう。
市長に入った西の酉が自分を指差し言った。
「私は西の酉。お前は?」
ぐったりしていた少年が目を見開いた。そして答えた。
「私は市長。」
そのとき、西の酉には欲望が走った。少年に入った市長にたずねた。
「あなたはおそらく市長でしょう。だが、言葉を喋れますか?」
市長は言葉が出なかった。西の酉の欲望が燃えたぎった。高級奴隷に命じた。
「何が起こったのかは、わからないだろうが、西の酉は私を騙して剣を盗んだ。そしてこの奴隷はもう駄目だ。殺してしまえ。」
高級奴隷も戸惑っていた。何が起こったかはもちろんよくわからないようだ。
そこで西の酉が命じた。
「殺せ!お前には貴族の称号を与えよう。貴族の称号は欲しいだろう?」
高級奴隷は頷いた。もっていたこんぼうで少年の頭を思い切りなぐった。少年はぐったりした。そして、喉元に向かって突きを深く入れ、とどめを刺した。
少年は死んだ。
西の酉は高級奴隷に言った。
「よし、お前に貴族の称号は与える。これかれ私は忙しい。後始末だけやって貰う。安心しろ。身分は保証する。」
市長に入った西の酉は屋敷に使える奴隷に命じた。
「いまから貴族達を闘技場に集めるのだ。」
西の酉の貴族が裏切った。捕まえて、殺さねばならぬ。」
一方その頃、西の酉に入ったサウロは屋敷から出て、ポリスをとぼとぼ走りながら考えていた。どうにかして、言葉が話せないという問題を解決しなければ…そのとき…
──カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン──
音が六回鳴った。何やら周りが慌ただしく、貴族や高級奴隷達が動き出すのを目でとらえた。
貴族と高級奴隷たちは闘技場に召集されていった。