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2話

果物は一見硬そうにも柔らかそうにもみえる。

しわがれた果物だ。

奴隷達は一列に紐に繋がれていた。

市長がいう。

「申し訳ないが、紐の都合上、順番に果物を割ってもらおう。」

一人目の奴隷の番だ。奴隷の紐がほどかれ解き放たれた。市長がいう。

「さあ、一人目、この果物を割るのだ。何か一つだけ道具をやろう。何が良いか。」

奴隷は答えられなかった。

奴隷達はバルバロイ、異なった言葉を話す。貴族達の言葉は通じない。市長が言う。

「そうか、こいつらはバルバロイか。おい、こいつらの言葉がわかるものはいるか。」

一人の貴族が応えた。

「へい。私が伝えてみせましょう。私はバルバロイを研究しているのでね。」

市長が応えた。

「西の酉の貴族か、やってみせよ。」

西の酉の貴族は異なる言葉を単語、単語で話しかけてみた。」


──しかし、通じない。──


西の酉の貴族は悔しそうに言った。

「駄目だ。こいつらは私の知っているバルバロイじゃねえ。一体どこから来たんだ。」

市長が応えた。

「うむ。私にもわかるぞ、こいつらは大分遠くから運ばれてきたようだな。ふふ、実に面白い、そして仕方がない。道具を予め、出しておこう。」

市長が命令した。

「おい、道具を出せ。」

高級奴隷が応じ、高級奴隷は道具を運んできた。

そこには、こんぼう、貝殻、紐、大きな石、がいくつかあった。

高級奴隷は一人目の奴隷にそれらをみせた。

一人目の奴隷はこんぼうを選んだ。そして、彼は果物の前に行くとこんぼうで果物に振りかぶって叩いた。

果物は割れたがぐちゃぐちゃになってしまった。」

一人目の奴隷は戸惑いながらも、喜びの叫びをあげた。

市長が言った。

「ふむ、どうやらゲームの趣旨を理科していないみたいだな。」

しちょうは高級奴隷に小さな林檎を持ってこさせ、ナイフだ。真っ二つに切ってみせ、叫んだ。

「これを見よ。このようにするのだ。」

奴隷達は確かではないが少し理解したようだ。

「おっと、ところで、果物をお前はぐちゃぐちゃに割ったな?果物の気持ちを味わってもらおう。」

市長が一人目の奴隷に言った。

そうすると、高級奴隷がこんぼうを持ってきて、一人目の奴隷をこんぼうで後ろから、殴った。

奴隷は持ちこたえた。そして、こんぼうで高級奴隷に反撃した。

しかし、高級奴隷の方が上手で一人目の奴隷の振り被るこんぼうをかわし、後ろに回り、背中をこんぼうで思いっきり殴った。

一人目の奴隷は倒れて意識を失ってしまった。

市長が言う。

「ふふふ、気を失ったか。これでは戦場に行くと奴隷にもなれないな。どうだ、この奴隷を欲しい貴族はいるか。」

…誰からも反応がない。

「誰もいないようだな。こいつは石を運ぶ奴隷にでもしようか。」

市長が言い、一人目の奴隷は意識を失ったまま運ばれていった。

「さあ、二人目の奴隷の番だ。」

市長が言い、二人目の奴隷が紐から解き放たれた。

二人目の奴隷は筋骨隆々で道具を見たが、そっぽを向き、何も持たずに果物を手に取った。

そして、果物を地面に置き、力を込めて、手刀で振りかぶり、思いきり果物に手刀をあてた。

「おお、惜しい。」

貴族達から歓声があがった。果物はほぼ真二つに割れたものの、欠片が散らばってしまった。市長が言う。

「どうだ。真二つに割れなかったが中々ではないか。どれ、この奴隷が欲しい貴族もいるだろう。」

貴族達から声があがった。

「よし、私はこの奴隷を買いたいぞ。」

「いや、私も買いたい。」

続々と声があがった。市長が言う。

「よし、それでは奴隷オークションだ。各々金額を出すが良い」

オークションが進み、二人目の奴隷はとある貴族に仕えることになった。

次は三人目の奴隷の番だ。

その奴隷は少年か青年にみえた。

三人目の奴隷は紐を選んだ。

市長が言う。

「紐か、紐なんかで果物が切れるとは思えないが、しかし…」

三人目の奴隷は紐を両手で持ち、横向きにし、果物にあててみた。

紐がぐにゃっと曲がって切れない。

今度は紐で果物を囲って巻いてみた。

そして、引っ張ってみたものの、果物はごろっと転がった。

一人の貴族が野次をいれた。

「そんなことで切れるわけがないだろう。お前は石拾いの奴隷だな。」

三人目の奴隷はまだ続けた。

諦めていないようだ。

今度は紐を片足で押さえた。そして、片手で果物を押さえて、紐で果物を巻いて引っ張ってみた。

しかし、切れない。果物がみしっと締まりはするのだが。

また、一人の貴族が野次を入れた。

「こんなことやるだけ無駄だ。さっさとこの奴隷を片付けてしまえ。」

しかし、市長が言った。

「いいや、面白そうじゃないか。続けてみよう。」

三人目の奴隷は試みを続けた。思い立ったように紐に噛り付いた。そして、紐はばらけ、糸になった。

三人目の奴隷はその糸で同じように片足で紐を踏み押さえ、紐を果物に巻き、片手で押さえ、もう片手で引っ張ってみた。

そうすると、今度は糸が切れてしまった。

貴族達は半ば飽き飽きしていた。

しかし、三人目の奴隷はまたひらめいたかのようにこんどは果物に爪をあて、縦に爪あとをいれていった。

そして、爪あとに糸をあてて、同じように巻いた糸を引っ張った。

そうすると…

──ザク──

果物に切り込みが入った。そして…

──ザク、ザク──

果物は真二つに切れた。

──オ、オッー──

貴族達が歓声をあげた。

「私がこの奴隷を欲しいぞ。」

「いや、私だ。」

市長が声をあげた。

「ふふふ、面白い、そして、実においしそうな奴隷だ。私がこの奴隷をもらうぞ。」

他の貴族達が野次をあげた。

「そりゃ、ないですぜ、市長。確かにこれはあんたの催しだけどよ。」

市長が応えた。

「なあに、私が市長で居られるのもあと、少しだ。少しくらいわがままをきいてくれないか。」

「ちっ仕方ないなあ、市長、あんたがこんなお遊びをやるのも珍しいもんな。」

こうして、少年は市長に仕える奴隷となった。

(序章─完)

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