第42話 一刈り行こうぜっ☆
9月某日日曜日、練習無しリハ無し現場も無しで俺は実家で稲刈りの今日!如何お過ごしでせうか、残暑が厳しいざんしょな阿久津ヒロムでーす。
…何故に派遣会社のレギュラーメンバー勢揃いで我が家の前に居るのでしょうか、しかも全員長靴持参で履いてやがる。アレか前回快く送り出したおかんの笑顔の理由はコレか沖田さん。
「おぅ☆秋の行楽シーズン真っ盛りな頃と稲刈りシーズンがギリギリ被るってネットで見たからさー、ちゃっちゃと終わらせればヒロムは我が社で現場三昧☆俺等は体力作りも兼ねてお手伝いでWin-Winな上に親御さんからの好感度はMAXだぜ☆」
あーでもアレですよ、稲刈りは虫とか蛇とか鼠とか出ますから女の子には無理が…「なら芋掘りお願いしようかしらー♪」この機会に家1件分の畑の紅あずまンとこ全部掘らせる気だなオカン…。
きゃいきゃいと女性陣はオカンと芋掘りに行っちゃったので、残った野郎共に軍手・鎌・ビニール袋を持たせ田圃へ移動、皆から見るとコンバインは何やら漢の浪漫が溢れてる様なのでオトンが手本を見せて後は順番で刈らせるらしい。公道に出なけりゃ運転免許無い俺でも動かせられるのである。
えーと、先ずは田圃の四隅をコンバインのターン場所として手刈りお願いします。後は稲をかきわけてって途中ポツポツ生えてる粟とかの雑草を刈っちゃって下さーい、刈ったらその辺にポイしちゃ駄目ですコンバイン拾っちゃいますからね。あぁ後はモグラの穴で転ばない様にお願いしまーす。そしてお手持ちのビニール袋は何かと申しますと、コンバインが刈ってる後ろをよーく見ると回収しそこねた稲穂が落ちてたりします。絵画で落ち穂拾いってあるじゃないですか、まさにアレです。麦じゃ無い分ちっちゃくて面倒ですけど頑張って下さーい。
「ンじゃやるぞー!体力不足を払拭しちゃうぞレクリエーション第2回☆チキチキ稲刈り大会~」
山崎さんの掛け声に応と答えて散らばるみんな…甘い、甘いよ皆の衆…テスト前日に早く起きて勉強するから寝ーちゃお♪並に甘いよ…。
「ぬぉおおおぅヒロムゥゥウ!稲穂の根元にピンクのプツプツがぁぁぁあ」
ジャンボタニシの卵です、けして画像をググってはいけないモノです、踏み潰して下さい。農家の宿敵です。ついでに本体も見付け次第お願いします。
「うぁぁぁあ泥濘に足がぁぁぁあ」
田圃の端っこはまだ水が引ききれてなくて膝まで沈む位じゅるってるなんてザラです、市販のレインブーツは…まぁ用意するだけ無駄なんですよねー女子の履いてたくるぶしよりちょい上丈のなんか特に。誰かに根性で助けて貰って下さいねー、ミイラ取りにならないように。
「いゃぁぁぁあなんか羽虫が顔に向かって大量にぃぃいー」
ユスリカのお仲間です、血は吸わないので…ただ不快感ハンパないのですよ。頑張れ☆
「ヒロム君ンンン、コンバイン通った後大量に蛙とかバッタとかが出てきて可ん愛いぃぃいー♪」
雨蛙だけ捕まえて横の川に投げ入れて泳がせるのがいい気分転換になります、可愛いですよー♪ウシガエルよりは。あ、ソイツら狙ってそろそろ鴉と鷺が飛来しますよ。鷺がコンバインの後ろついてまわるのは確かに可ん愛いですぜ。
「ヒロムゥゥウ、用水路にザリガニ居たんでチョッカイかけてたら鴉がぁぁあ俺のザリィィィイ(泣)」
あー、食物連鎖の一端を見れて大人になりましたねー見応えあるのは鳶vs蛇です、見られると良いですねー。…てか遊ぶな働け。
「ヒロム君ッッ、腰っ!腰がっっ!」
屈んで拾って移動して…えぇ妙齢な方にはシンドイでしょうねぇ、腰もですけど背筋もとんでもない事になりますよフフフ…。今日のお風呂は念入りに解すと良いです。
あ、余談ですが今現在身体中に刈った稲の細かい繊維が付きまくってますんで風呂で擦るとエライ目にあいます、シャワーオンリーか湯船に浸かるだけ&服は単独洗濯必須ですよー。
「おいお前ら!コンバイン10時の方向に野生のネズ太郎出て来たぞ!茶色のかわうぃーヤツだ!!」
あー…みんなで捕まえようとするのはいいですけど押さえ付ける得物は鎌ですからね…、ビジュアル的に鎌持った野郎共がネズミ追い込んでるのって超怖いからね。
因みにどんなに可愛らしくても害獣なんで末路は………ですからねー。あんまり情持っちゃ駄目ですよー。
その後もギャーギャー大騒ぎしながらも稲を刈り、芋掘りを終えた女性陣と合流しての焼き芋大会で今年の稲刈りは幕を閉じたのでした。余談だけどとれたての芋って美味しくないからね、数日寝かせなきゃいけないので食べたのは倉庫に備蓄してたヤツ。掘ったのは欲しい分だけお持ち帰りして貰う事になりました。
…芋は毎年家族で食べきれない&ご近所にお裾分けしても余ってしょうがないので消費してくれるのは正直有り難いっす☆なんて事を溢したら、この百姓貴族めがっと怒られました。
分かるまい…季節になると毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日同じ食材が食卓に出る地獄をっ…(血涙)
味噌汁の具がさつま芋と芋蔓がエンドレスだぞっ、味噌汁が甘いのは嫌じゃぁぁぁあ!と絶叫したら、贅沢言うなとオカンに殴られたでござる。味噌汁は豆腐とワカメが最高ですぅシンプルなヤツがいい、毎回豚汁並みに具材モリモリじゃなくていいレトルトのちーっちゃい豆腐入ってるのが好き…。
前は味噌とか醤油とかも自宅で作ってたし、卵は鶏だし肉もゴニョゴニョ…だからろくに買い物なんかした事無いから俺正直その辺の値段の差がわかんない。沖田さんちのお泊まりお好み焼き大会の買い出しん時にアイアンクロー喰らったのも、なんか超高級キャベツとかマヨネーズとか選んでたらしい。マヨネーズだっておかんが無駄にこだわった手作りだしお酢なんて御用聞きのサブちゃんが来てたし…。
ーあ、みんな芋は各自最低でも5個ずつ持って帰ってね~。何だったら倉庫のジャガイモとか軒先の玉葱とかも腐る前に貰っておくれ☆ニンニクとかおとんしか食べないのに作ってちまちま剥いていつのまにか腐らせて結局畑の肥やしになったりとかさぁぁぁぁあ(愚痴愚痴)
そんな事を延々と言ってると「意外と坊っちゃん?」「土地と家屋に倉庫持ってるから…」「健康面は問題無さげだよね…」なんて女子達がヒソヒソしてるのを猛禽類の目でおかんが見てたと土方さんからにこやかに報告がありましたとさ☆
…釘刺そう大釘挿そう五寸釘なんて目じゃない奴。
中学の頃、文化祭の模擬店話し合いの時に来てた女子達に延々と土地持ちは勝ち組とか国道作る為だからと田圃売ってやったとか、大昔1円が大金だった時代に国から借りた借金百円を最近リアル百円で返済したとか、「結局これからは土地があって米作る農家が強くなる時代よっ」とかどや顔で演説ぶっこいて一時期「農水大臣阿久津」って渾名がついたあの日の二の舞は断固ごめんだコノヤロウ(怒)




