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第38話 掘れたぜ恐竜展 ぴぴぃザウルス

先輩をスタッフに付けて今日の現場は楽になるなーとマッタリ茶ぁ啜ってまーす阿久津ヒロムです、控え室の冷房の効いた部屋で熱々のお茶…たまらんですなぁ☆因みに冬はコタツで雪見大福でござる。


へ?先輩?護慈羅の木箱に入ってご満悦です。「ダンボール箱を如何に使いこなすかが…」なんて遊んでます、先輩ソレ木箱です大きすぎてステルス活動には無理があります。


あ、10分前のアラーム鳴った。先輩そろそろ着て出ますんでよろしくお願いしますねー?


ぴぴぃザウルスの衣装はピンクのもこもこのズボン・膝丈のこれまたもこもこピンクの長靴・体の簡単な造り。体が頭部・胴体前・後と分かれてて内部でパッチンロックとマジックテープで固定して被る。頭部から両肩に鳥の足みたいな骨組みがあって、ガシッと固定されてる感じで身体を支えてる。…コレ途中からすっごい肩凝ってちょっと痛い。


ラッキーだったのは上にデカくて、俺の身長だと常時屈んだりしなくても良い事。『アストロ犬探偵』の『岩タートル』とかは胴体が亀の甲羅状で妙なカーブがかかってる丸くなってて、ずーっと猫背で体バッキバキになるし『どえらえもん』の『どえらえもん』は身長が120センチあるか無いか位だから内部で膝やら首やら曲げたまんまで演技しなきゃとかで大変なんだよねーそれが無いからまだ衣装的には当たりな方。


でも横にもでっかくて、手も自分のウエスト位の高さでも掌分しか使えないから役に立たない。視界はほぼほぼ正面しか認識出来ない(首無いから見渡せない)からスタッフさんは必須。「護慈羅展の手伝いでスタッフを割けない」って言われた時はビックリしたけど、先輩居てくれてほんと良かった☆タダ働きだけど☆さ、て、行きましょうかね。


横にでっかいから観音開きの親子ドアの両方を開けて貰い、てちてちと中央の吹き抜けフロアへ。


仕事内容は写真撮影と握手やら交流やら。撮影は多少並ぶけどヒーローショーみたいにズラリとじゃないし、小学生未満の子達に囲まれて握手したり触られたり何時ものショー現場と違ってとってもまったり平和☆まぁ触られるって言うか叩かれるって言うかーー?



フロアに溢れんばかりの外国人学生さん(制服で判断)




「某国の中学生修学旅行団だよー、行く予定だった海中水族館が改装中でねぇ、急遽コッチに来たいって言うから許可しちゃった☆」


ボーゼンと立つ(表側はただ佇んでるぴぴぃザウルス)俺に、にこやかに館長さんが寄って来て話しかけて来る。…事前にコチラにも連絡欲しかったです…まぁ、中坊が着ぐるみに興味なんか無いだろうから放置プレイでいいか。


気を取り直して近くに居たちびちゃん達に寄って行くと周りの親子連れも集まって来た。うーんみんな三歳位かなー可愛いねー、その澄んだ目は汚れた俺には眩しぃぜぇ握手するかーい?撮影もおっけーよーん☆


出来るだけ目線をちびちゃんに向けて「握手しよー♪」と手をパタパタさせる。…張りぼてタイプなので、結果的にオケツをプリッと上に上げた体勢がナナメなカタチになるのを…海外とは言えFourteen(厨二)sick()な中学生が見逃す筈無かったのである…。微かに聞こえた会話の断片は


…turning …upside down


…ん?アップサイドダウン…ひっくり返…せ…?理解すると同時に尻尾を数人がかりで持ち上げられてる感覚と周りで何やら囃し立ててる声…いつの間にか中学生達に囲まれてる?っ…てか待て待て待て!前方に倒す気かっ!?ちびちゃん達居るんだぞ手ェ付けねぇのに!!kickじゃねぇぇえ!!!!


ちょっっ、ちびちゃん達の保護者様っ!?駄目だジャレてると思って微笑ましく見てるだけだ!おのれ外国人に優しい国民め!

先輩っ!?あぁぁ遠くで掻き分けてる気配はするけど間に合わなそう!先輩俺には「スタッフは常に傍に付いて直ぐに対応出来るようにしとけ」って言ってたじゃんかぁぁぁ馬鹿ぁぁぁ!!あぁぁあそう言えば親子ドアのロックかけてるの置いて来てたんだった!?俺の馬鹿ぁぁああ!


前にはちびちゃん、後ろには悪ガキ。前門の虎後門の狼ってこの事か…いや泣きっ面に蜂か、あ、爪先プルプルする…コケる…駄目だちびちゃん達が怪我…先輩…



 「やめんかぁぁあああ!!!」

 「Watch out! Front!Is there a child!」


俺と先輩の叫び声が館内中に響く。

さすがに手を離す中学生達、何が起きたか分からなくてポカンとするちびちゃんと親御さん達、居たたまれなくなって逃げ帰る俺。でも扉は開けられないから控え室の前でぴぴぃザウルスの中で座り込む。


やったやっちゃったやってしまった…俺は今阿久津ヒロムじゃなくてぴぴぃザウルスで…喋っちゃ駄目で…子供に夢を与える仕事で…怒鳴るなんて…あんなに教わったのに…俺じゃなかったらもっと上手くかわせたんだろうか…俺だからこんな事に…


感情がいっぱいいっぱいになってボロボロ溢れる涙…うずくまって泣きじゃくってると後頭部分をポンポンと叩かれる音。


「館長には説明しておいた、あの中学生達には引率者から注意してくれる様に話を通してくれるらしい。ちびちゃん達の保護者も理解してもらえたから心配すんな。ごめんな、油断してた。俺が先導してなきゃいけなかったのに、悪い。お前は気にすんな。」


尚更涙止まんなくなった俺。衣装の背中部分撫でながら、ずっと先輩は「間に合わなくてごめんな」って謝ってくれてた。違う、ごめん俺の方こそごめんなさい居てくれて有り難う先輩ごめんなさい先輩











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