第31話 体力強化月間 最終日
殴って蹴って立ち回って踊って、後は歌を極めれば…俺都会でビッグになれると思うんだ。
ゴロゴローゴロゴロ、あーぁ間違えて3musicとかが俺と契約しねぇかなぁ。
なーんて現実逃避をしても、体からの「酸素よこせゴルァ」が治まりせん阿久津ヒロムでございます。6月最終日…そう強化月間最終日でもあるのですが、相も変わらず準備運動の時点でヘロヘロでございますぅぅう。
山崎さん曰く終了試験。
…何やんのかね合格出来なかったら来月もやるのかな、てか来月夏休み突入だからリハーサルとかで練習日って無くなるんじゃ無いかな。…な、我等の不安を余所に告げられた内容は
「3対1の立ち回り連続20回♪」
をぅ…
回数は多いけど試験にする程でも無いかな、我等新人に対して山崎さんが「暑そうだしヘロヘロだしちょぴっと手加減☆」的な優しさの表れなんだろうか感謝♪
な ん て☆
思ってた俺がお馬鹿さんでしたぁぁぁあああー!!!!!
当然此方が1の立場で次々とかかってくる先輩達をスパスパーンと捌くんだけども…、1立ち回り約2分×20で俺達新人10数人…。
いけいけどんどんでやってかないと時間が掛かりまくる、回数が増えるにつれ体力は削られて遅くなるのは必然なのでどうするかと言うと…
先輩達が煽る煽る、そりゃあもうって位に煽る。
「うつ向くなー顔あげろーぃ!」
「ヤダー、そんなヒーローに声援送れなーい☆」
「スピード落ちてんぞ!ヘバんのはやっ!」
「惰性で動くなー惰性でー、最後までキッチリ技決めんか!」
「胸張れっ!ヤられてるシーンじゃねぇぞーぃ」
「鼻っ面引き回されてんよーかっこ悪ぅーい」
最初のうちは立ち回りながらも「スミマセンやってますよぅ」だの「足その角度が限界ですがな」だの返答出来てたんだけどソレも出来ない位に息があがる、それでも反応しないととすると…「あ"ぁ"い"」濁音だらけの返事。
段々段々煽りも聞こえなくなってきて、段々段々3人が「先輩達」ではなく「敵」なんだとしか認識しなくなる、今やるのはこの3人の敵をやっつけなきゃやっつけなきゃやっつけなきゃやっつけなきゃ俺が俺が俺が俺が俺が俺がやんなきゃ!!!
「はい、20回修了!ヒロム君お疲れっ!」
手締めで響く山崎さんの柏手1つで我に返るー。
同時に襲いかかる倦怠感、倒れるかの様にその場に突っ伏す。てかリアルに倒れる。次の人と交代…場所空けないと…でも目を開くのさえ億劫すぎ…酸素…とにかく酸…素
「お疲れ~、こんなになるまで何かをやるのって初めてだったろ。顔付きドンドン変わってくの自分で分かってた?[侵撃の巨神兵]のハンターみたいで怖かったぞー。そんだけのめり込んでたんだろうけどな☆
どうよ今身体中ギシギシで動けないべ、シンドイべ?でもなーんかスンンンゲェーーエ気持ち良くない?達成感堪んなくない?」
「コレがあるからやめらんねぇのよねー☆」と、ケラケラ笑いながら先輩が俺の両足もって端まで引き摺ってってくれた。痛い痛い、頬が削れる頬が。
「あー言い忘れてた、毎年恒例なんだけど1回目と20回目の立ち回りは編集後に強化月間参加記念DVDとして各自プレゼントするからねぇー、その為に土方君達ビデオ回してるんだから☆」
そーいえば立ち回りの真正面センターに定点カメラとにこやかな土方さんが…、そんでもってハンディカメラ持ってる数名。とてもよい笑顔で。
……うそーん。
「「「「「いやぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」」」」」」
「あぁぁああのあのあのあの最後のはダセェから駄目ッス!」
「あたしラスト猫パンチしてた気がするぅうううう」
「途中の見栄を切るとこ止まれなかったよねっっ」
「アレ映像として残すのは駄目でしょおおおおおぅ!?」
「ちょっっ、ソレ言われて今からやる俺しんどいっすよ!!」
次々に上がる新人達の悲鳴、「勉強になるじゃーん♪」と、にやつく先輩達。ちっくしょういつか新人時代の先輩の分、部屋漁って見てやるかんな。
ところで山崎さん試験の合否って…?
「えー?20回こなせた時点で全員合格、コレが出来るなら夏場乗り切れる体ですって事だしねぇ。良くできました花丸っ☆お疲れ様ー。
そ・ん・な合格者には、我が派遣会社ロゴ入りジャージの注文購入出来る権利獲得ぅ☆欲しい人は俺まで☆お給料からの天引きOKよ♪」
山崎さーん色々台無しですぅ……ワンセット天引きでお願いします。
「毎度ー♪」