第19話 一度きりの人生
怒涛の3日間が過ぎ…爆睡者に囲まれて帰宅中の車内からコンバンハー阿久津ヒロムでーす、両隣の枕になってまーすどちくしょう。
うん、眠れると思ってたんだけどねー、何故に高速のSAってホットスナックあんなに美味いんだろうか、小籠包とかたまらんでござる、ソフトクリームもウママママ♪…で、食べ過ぎて眠れないというお馬鹿さんしてます。
「阿久津くーん、起きてるー?」
山崎さんがバックミラー越しにこっち見てました、はい見ての通りのクッションに最適なボディのおかげで眠れませーん爆睡した人間の体って重いでーす。
助手席の2人を見ればそちらも爆睡中、MCさんも眠気には勝てなかったらしい…。鼾かいてたのは、女性にはかなりのダメージだろうから黙っておこう。
ーえ この3日間ですか?楽しかったですよ。
えぇ確かに、捌いても捌いても終わらないサイン会とか、おつり銭無くなりかけた時に出てくる万札に泣いたりだとか。
獣神者の変身スーツ着てて、大ファンなんだ~☆と見せ掛けておいて撮影会で大号泣でそばに行くのを拒否するお子様とか。
本番前の呼び込み直前に、ゲリラ豪雨で急遽店内パレード撮影会に変わった時とか…。
あはははーん、今思い返しても目が虚ろになりそうな位わちゃわちゃしましたけどー
けどー、なんですかねぇ1度も面倒だーとか嫌だーとは思わなかったんですよねぇ……
騙されて連れてこられた仕事でしたけども。えぇ覚えてますよぅフフフ…忘れませんよ(断言)
黒い笑いの俺を見てちょっと苦笑いの山崎さんが言葉を紡ぐ。
「阿久津君はさー、仕事の前にゴールデンウィークだけですから!って念押ししてたけど、この3日間一緒に仕事して思ったんだぁー。
向いてると思うよこの仕事。
まぁ阿久津君の言う「普通に普通の仕事」とやらには当てはまらないんだろうし、体張る割りには稼げるって訳でも無いけどさー。
井上君のサイン色紙の話聞いたよね?ドキドキしなかった?スタッフも楽しかっただろうけど自分でアレを経験したいって思わない?
あははー、社長直々のスカウトだよーゆっくり考えてみてよ☆
最後にごり押しに僕の好きな「地方英雄・僕熊猫」の言葉を贈ってあげようー、「失敗をおそれず、勇気を持って自分らしく生きてみないか」って意味なんだけど今の阿久津君のドンッと背中押してくれるんじゃないかと期待ー☆」
「一度きりの人生、棒に振ってみないか?」
後悔はさせねぇぜぇー☆とミラー越しの山崎さんは男前に笑ってました。




