四方山話 土方さんとの話
既に阿久津ヒロムは派遣会社に取り込まれてバリバリやっている頃の話です。
「あー偶然ですね、お疲れ様です土方さん。」
現場終わりの阿久津ヒロム君から声をかけられたのは駅構内のバーガー王様の店内、手をヒラヒラさせて挨拶したら、嬉しそうに寄ってきたので隣を勧める。
えーと今日は[ビーンジャムブレッドン]の現場でしたっけ?敵役のウイルスンを?30分のショー中20分は出てますよねぇ体力使いましたね、お疲れ様でした。
んー?演じた事?ありますよ、今は人材が充実してるから私はアクションショーメインですけど。
ビーンジャムは20年前からやってるアニメですからねぇー。デビューして4・5年位はメルヘンのショーもやってますねぇ。
んー?「今日のクライアントが見た目をディスってきて最悪だった」?ビーンジャム班は今日は何処でしたっけ?あぁアソコの…、ひょっとして担当S馬さんかな。
……前あんな事あったのに懲りないんですねぇあの人。
何かあったかですって?あの人大抵言うんですよ「着ぐるみでキャーキャー言われても中身の人見てガッカリするんだよなー所詮外側ダケで持て囃されるんだよなー」的な事を。
しかも直接言わずに連れてる部下相手に喋ってるんですが、私達にしっかり聞こえる様にですよ。
んー?いいえ別に。睨んだりもしてませんよ、目の前で面外して「お疲れ様です」って微笑んだダケです。
んふふふ、こう考えませんか?ヒロム君に直接言ってきたって事はですね、きっとよっぽどウィルスンがお客さんにウケたって事ではないかと。
やっかみが我慢出来なかった位に。
ですから気にする事じゃありませんよ、あの人の言動は誉め言葉として受け止めておきなさいな。ショーの内容に関しては何も言ってこなかったんでしょう?上出来だったって事ですよ。
明日あの現場は私行く日ですから、キチンと挨拶しときましょうかねぇ。
なーんて微笑んだらヒロム君が「自覚あるイケメン怖っ」ってガクブルしてましたよ、んふふふふー。