第71話 色々複雑な問題。
「…………」
「……………」
事務所に沈黙がコンニチワで居座って帰ろうとしません、お疲れ様でーす阿久津ヒロムどすえ。俺の目の前には山崎さん、面接時の応接間にて2枚の新聞投書の切り抜き記事を挟んで心此処に在らずです。
「どーーーーしたもんなのかねぇー」
重ーいタメ息と共に意識が戻ってきたみたい、うぅぅソレもコレも話は前回のプリティ&キュアGrand Princessの現場の撮影会での話…。
撮影会はステージ上で階段2ヶ所、どちらにも介添えスタッフ配置して安全確保。登り側が撮影位置まで連れていって降りる側が捌けさせるって事でスムーズに☆
何時もならお友達と手を繋いで順番を待ってプリティ&キュアの前に連れていくけど、女の子は結構な確率で嫌がるから極力触れないで目線を合わせて声をかける様にしてる。
「要は子供扱いされるのが嫌なんですよ。口調はそのままで、執事になったと思ってお嬢様として対応してあげなさい。」って土方さんが言ってたのを思い出す。…てか土方さんは笑顔ひとつでどんな年代の女の子もイチコロで手ェ繋いでるよなぁってのは気付いてはいけない世界のお約束なので何も言わない。
そんなこんなで撮影会は続きます、スムーズに流れる様に…さーて次のお友達は…
車椅子に乗った小学校中学年位のお友達でした。
……………どう対応していいのか分からない。
分からない時は沖田さんである、独断で動いて良いことなんてないのは今までの人生でとっくに悟ってるやい(泣)
問:沖田さんこんな時は?
答え:保護者の方に聞く、車椅子だから下にプリティ&キュア2人降りて撮影だろうなー。
あっさり答えを頂いたので保護者に伺う事にする。
「こんにちは、えっとプリティ&キュアの2人が下に降りての撮影でよろしいですか?」
「上で。他の子と同じ様にお願いします。」
……思ってたのと違う。
あ、上ですか…。えーとえーとお嬢さんは車椅子に乗ったままで…?
「乗ったままです」
そんなやり取りをしてる間に順番が来たので、スタッフ全員集結させる。シャウト役の俺と音響スタッフ沖田さん。スタッフのみで来ている、前に忍者ヒョッコ乱れ丸の深々兵衛で現場一緒だった谷さん。
…駄目だ安全にステージにあげられる自信が全くもって無い。
それは沖田さんも感じたらしく、ショッピングモールの店員さんをヘルプに呼んで女性の谷さんは外れて貰い、男総勢6人でステージに上げる。直ぐに2人の前に連れていかずに、先ずはお友達に声をかける。
「お待たせしてゴメンね、笑顔の準備出来てるかな?2人の真ん中でお母さんに1番の笑顔でニーッコリ☆出来るかな?」
「うん!」
良かった、大人6人に囲まれて怖がってたりするかなって思ったケド大丈夫みたい。満面の笑みで記念撮影をし、降りる側の階段をまた同じ6人で慎重ーに降ろす。お友達が笑顔で手を振ってくれたので振り返して撮影会に戻る。
すみませんお待たせしました!
プリティ&キュアは人気なのでまだまだ撮影会の列は途切れない、大きなお友達が暴走しない様に牽制の空気を出しつつドンドン進める。さ て と 次は…?
これまた車椅子のお友達。
はい、スタッフ集合~お願いしま
「止めて下さい、危ないから下で。」
…はい。
ステージ下にプリティ&キュアを呼んで記念撮影。あぁ、こんな事もあるんだなーってコレで終わる話だとこの時は思ってたんだ…。
そんな現場から10日程過ぎた頃、読買新聞と朝陽新聞の読者投稿欄にとある投書が掲載された。
内容は
『ショッピングモールのキャラクターショーで車椅子の娘へのスタッフの対応について。』
片方は「撮影会で健常者と同じ様に扱わなかった」
もう片方は「撮影会で健常者と同じ様に扱おうとした」
………山崎さんコレってどうすれば良かったんですか?俺が2人目の時に保護者さんにキチンと聞かなかったからですかね…。
対面の席で項垂れる俺に苦笑いしながら山崎さんが返す。
「いやー、ソレも多少あるかもだけど、尋ねたら尋ねたで「聞く事自体が不快」と感じさせてしまう可能性もあったからねぇー何とも言えない☆
まぁ、店名は伏せてあるけど読む人が読めば分かる内容なんでちょーーーっと久し振りに社長役演ってくるねぇー。」
うぁぁぁあ、ごめんなさいぃぃぃ…消えたい(泣)
机に突っ伏した俺の頭をグシャグシャにしてから「今回の起こってからの対応なんだけどさぁー、ヒロム君なりに頑張ったんで良くできました☆」と山崎さんが言葉を綴る。
「こーゆーのって僕等だけじゃ限界があるから、クライアントとか巻き込んじゃえ♪
この場合の店ルールを決めて貰っちゃうのが手っ取り早いかなー?で、責任を店に丸投げだね(笑)
まぁ保護者さんの件は大人の問題だから僕等で話し合ってくるからさ、あんまり気にしないで。
その車椅子のお友達2人は笑顔だったんでしょ?ヒロム君的にはソレでその現場は成功って事で☆」
「あんま悩むと沖田君みたいにハゲるよー☆」なんて言いながら事務所を出てく山崎さんの背に、「俺ハゲてねぇし!フッサフサだしぃぃぃい」って涙目の沖田さんの絶叫が響いたのでした。…ねぇ倉庫に居た筈だよね?沖田さん。
…なんだかしこりは残るけど今はそれで。
コレが正解ってのは無い問題だから、もうちょい人生経験積んでじっくり考えていこうと思う。
「俺よりアンタの方が歳上なんだからな!!ハゲるんならアンタの方が先だかんなぁぁぁあ!!」
…沖田さん超五月蝿い。逆に疑惑が深まるんで黙ってて下さい。折角シリアスで話が終わりそうなのにぃ。
おっ、お久しぶりです(土下座)
この話を書くか書くまいか、悩んだり相方と意見交換したり…。
内容精査してなるべく軽めの内容にしたりラジバンダーリで何時の間にかこんなに日数が…(汗)