第70話 ふたりでプリティ&キュア
最近、ハマってるアニメがあります。ふたりの女の子が時には意見の相違で喧嘩をしつつも協力しあい困難を乗り越える…。
あぁ何て素敵☆そんな友人なんざこの殺伐とした現代社会、少なくとも俺の周りにはいねぇなと断言できます阿久津ヒロムですぅー。ほんっっっと妖怪ロクデナシーとゴクツブシーとダイマオウーしか…ごふっ
「おぅおぅ、今日も言葉のナイフだけは尖ってんなーヒロム☆」
…ちぃぃ、沖田さんですか。人のモノローグに入ってくる時点で妖怪扱いなんですぅー、あと後頭部からのチョップは人体が薪割りの様にスパーンと…「無いからな」…ちっ
兎に角リハーサルなんだから来やがれと首根っこ掴まれて練習場に連れてかれてます、分かってますよぅ今回一緒なんですよねヨロシクです☆
「ところでヒロム、冒頭のハマってるアニメって?」
マジカル双子姫☆(キッパリ)
「ふたりでプリティ&キュアじゃないんかーい☆」
ケラケラ笑われながら練習場に転がされました、そう今回の現場は[ふたりでプリティ&キュアGrand Princess]
Grand Princessを目指すふたりの王女がたまたま拾った妖精にこの星を狙う異空間の王族の存在を知らされ、世界を守るプリキュアも兼任しつつプリンセス修行もしつつ…と言う「平和を取り戻せば一気にGrand Princessなんじゃね?」なんて突っ込んではいけないアニメ。そして同じ名前の船なんて無いと明後日の方向を向いて宣言しておこう。
俺は今回異空間から現れた王族の執事シャウト、己の美に絶対の自信を持つニーハイとマイクロミニショートパンツに網タイツのナルシスト…。
沖田さんっ!!キャスティングに悪意が見え隠れの隠れてないヤツを感じます!再考を!
「無理。今回のやられ怪人ヤッチマイーナは視界がほぼ零に近い、ヒロムじゃステージから落ちる。てか階段1段も上がる事すら出来ない。」
ぐぬぬ…。な、なら別の現場の班にいぃ。と、振り向けば和気藹々とリハーサルしてる別の班の皆様。何だろう「寄るんじゃねぇバーリア☆」をピシピシと感じますな。
他班の拒絶に怯んでる俺の耳元で、後ろから近寄ってきた妖怪ロクデナシーが囁きます。
「演るんなら王女の2人どっちかだぞ、ヒールのたっかいブーツとフリフリペチコートにお前が耐えられるならな。安心しろ、お前のプニっと感ならギリギリオッケーだ☆」
ちくしょう…ちっくしょうぅぅぅぅう(血涙)
なーーんて☆
リハ始まる前までグダグダしてた自分に「馬鹿野郎っ」とヤクザキックしたいっす。あらヤダ、コレ楽しい☆
シャウトの性格がハッキリクッキリしてるのと台詞が「美しくないものは滅びなさいっ」だの「美しい薔薇が咲き誇る為の土壌の養分程度には役立ててあげますよ、安心して…死ね」だのドSですかドSですねドSでいいんですね♪自分と真逆の性格は楽しい!俺…真逆だよね?モブだもんねその辺の雑草だもんね?
プリティ&キュアはジャンルはメルヘンながらも、「戦う女の子」アニメなので立ち回りも当然あるんですが…コレがまた楽しい☆
アクション物はやられ怪人か敵幹部位に辛うじて「色」があるけど大抵戦闘員に色が無くて没個性。だけどシャウトの性格を考えたら、構えだってちょっと斜に構えてちょっと女性っぽく…。旋風脚した後も髪の毛を撫で付けて無駄にポーズ決めて…、フハハハハ☆消え失せろ凡愚めが♪普段やらない事やれるって超楽しい☆
さぁやってみよう、腕を組む動作も両手で両肘を掴むような形で左肩と左足をやや前に斜に構えて…。頭も左肩側にね、顎やや上げて倒れてるプリティ&キュアを見下しつつ「『強く、優しく、美しく』…『美しく』だと?美しいのはこの私のみだ!」
そんな無双状態で高笑いの俺に沖田さんの「あんまり役にのめり込むなよー」なんてツッコミは…えぇ、聞こえてませんでした。
現 場 当 日☆
ノリに乗った本物以上と化したシャウトに会場のお子様達は怯え、お母さんにすがって泣き叫ぶ女の子が多発…。演技は過去最高でも現場としては過去最低です。ぅあああぁぁぁぁ…やっちまった
「だから言ったろ馬鹿!調子にのって倒れてる2人の腹蹴って顔踏んだりしてんじゃねぇよ、見てる子達の年齢層考えろ!絶対トラウマもんだろ!アニメでやってるのと現実はインパクトも違うんだよ!」
こん…っの馬鹿!ってもらった拳骨よりも別のとこが凄ーい痛ーい。
何よりも程度と限度間違えた自分が1番痛かったとです…。