第8話:真っ黒笑顔トリオ
…今回だけ、今回だけゴールデンウィークの3日間さえこなしちゃえば先輩への面目も義理もたつんだから試練だと思えヒロムゥゥゥ!!
と、脳内葛藤しながらジャージに着替えました阿久津ヒロムでーす。今自分がややマグロ目なのは自覚出来てまーす☆
あの後土方さんに言われたのは
・初めてだし不安でしょうから、先輩と一緒の現場に入ってもらう
・現場先は温泉県のデパート常葉で獣神者ショーのスタッフ
・温泉県は遠いから泊まり掛けですが大丈夫ですか?親の承諾得られそうです?
この3つ、初めての仕事で泊まり掛けかー。
あー、オカンが五月蝿そうですねぇバイト自体反対で不良になるーとか喚いてたなぁ…。え?土方さんが説得してくれるんすか?「私そーゆーの得意ですから」って女の子なら惚れちゃう様な爽やか笑顔っすね、背中に真っ黒な蝙蝠羽根見えそうですけどね。
で、「兎にも角にもうちの仕事の雰囲気だけでも味わってらっしゃい」と練習場に放り出されましたとさ。…まぁ想像もつかないし、先輩も参加だから何もせずに待つよりはマシかなと。
体操服に着替えて周りを見渡せば、俺と同じ位の高校生っぽい人達から仕事帰りで今から飲み屋だぜーってのが似合いそうなお兄さんはみ出した人まで千差万別多種多様。…人見知りな俺は先輩に隠れる様にしてます……アマゾンぬニンゲンコワイ、モリニカエル。
先輩は今回一緒に仕事するメンバーにそんな俺を紹介…、さっきの追いかけっこはやっぱりインパクト高かったみたいで…orz 好意的な印象になってるだけ良しとしよう…ちょっと片頬貧乏ゆすりな笑顔でご挨拶、因みに目は合わせられません☆
を、柔道着来た人が「そろそろ始めよっかー」って来た。偉い人なのかなー?なんて見てたら斎藤先輩が「シャッチョサーン、給料あげてくれパーンチ」とか言いながら飛び掛かってったのできっと社長さんに違いない。「試験に合格する以外は上げないよーん☆」なんて言いながら楽しそうに転がしてたのできっと上下関係は悪くなさそう。練習場いっぱいに円陣になってー準備体操かな?軽ーく屈伸やらで体を解して…
「三戦立ち用意!!」
へ?なにソレ?さんちんだち?ワンテンポ遅れて柔道着の人の立ち方を見よう見まねでやってみる。えっと足をハの字の内股で右足前?
「正拳突きー」 えーとえーと正面に拳を突きだすぅぅぅうぉうりゃぁぁああ☆あれぇ?なんで他の人みたくバシュッてならないの?早さ?勢いが足りないの?
「裏拳ー」 あー…っと、後ろの敵に向かって手首のスナップきかせてスパーン☆的な?コレ当たったら敵の鼻っ面パッカーンで鼻血出るんだろなー…。
「手刀っ」 えーと小指側の側面?で攻撃すんのかな?手刀ってよくオッサンが、人の前通る時にするヤツじゃないの?
「騎馬立ち用意!」 えーと、馬に乗ってる感じの立ち方かな?空気椅子馬バージョン?うををぅ太腿や膨ら脛が死ぬっ、素人には辛いですぅぅぅう
「腹殴りっ」 うえぇぇええ?今殴ったモーションの後に拳ぐりぃいって押し込んでませんかぁ!?ナニソレトドメ?
「蹴り行くよ~、構え!」 えーと右足後ろで両手は拳軽く握って上半身守る様に斜に構える…っと。
「蹴りー」 ヤクザキックだなヤクザキックてぃっ☆
「蹴上げ」 えーと膝も足先も曲げずに真っ直ぐスパーンと足の甲で蹴りあげるっっと☆
「足刀」 えー?手刀の足バージョン?で、正面じゃなくて横の敵を攻…撃っと。
「回し蹴り」
「後ろ回しー」
「二段蹴りー」
「そんでもって横蹴上げに膝蹴りにラストは距離とって~、マスクドライダー野郎キーック☆」
うわうわうわわわわ
え?ここ空手教室!?パニック状態な俺を尻目に次々に言われた項目を軽々とこなす先輩達。俺は授業以外じゃ全くもって運動なんかしないワガママボディなんだから無理無理無理無理ぃ~、ゼハゼハ言ってる俺を柔道着来た人んとこに預けて先輩はリハーサルするって離れてっちゃったぃ…。
あー はいっ… 山崎さんすか 初めまして阿久津ヒロムっす… はい ゴールデンウィークにっ 働くっす あー、全然運動とかした事無いんで… はい、土方さん に、 とりあえ ず体験してこいって…。
呼吸が整わないデェヴの話なんて、こんな感じの飛び飛びである(泣)
それでも何とか山崎さんと名乗る人にご挨拶、あぁぁキチンと挨拶しなきゃなのに呼吸整わないから応対が雑っぽいっっ。
あー、リハーサルだけじゃ上達しないから平日の月火水は基礎練習なんですか。「阿久津君も斎藤と来れば良いよー」って軽く言いますけど、俺は今回限りでしかもスタッフですから別にやらないでも……山崎社長ー?土方さんとおんなじ笑い方ですよ真っ黒ですねーあはー嫌な予感しかしませーん☆
「逃がす訳ないじゃん」
山崎社長の後ろに土方さんと先輩が笑顔で佇んでる気がしたでござる。
「今から皆リハーサルで僕暇人だからみっちり仕込むよ~、初日だし空手の型と衣装の面を破損させない受け身の取り方かな~。頑張ろうね☆」
おっ、お手柔らかにお願いしまーーすぅ。