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第62話 くりすますくるしみます

しゃんしゃんしゃーん♪しゃんしゃんしゃーん♪しゃらりらしゃんしゃんしゃーん♪皆の者ぉぉお戦じゃあ出あえい出会えぃぃ出会いてぇえ俺の運命の(ひと)ォォォォオ(泣)


時は正に世紀末なんざ通り過ぎて新世紀、クリスマス間近!町に蔓延るきゃっきゃウフフな空気を吹き飛ばせぇぇと、歯軋りしてます阿久津ヒロムでーーす☆


身も心も懐も寒いし荒んでるので、クリスマスになんか仕事おくれなさい土方さん。


なーんて、頼んでみたら


「現場が一緒の仕事が3つあるんですが、タイムスケジュール的に1人でイケるのでヒロム君にお願いしましょうか?スタッフとして私が行きます。」


ーと、あっさり仕事をくれました☆わーい


そんなこんなで、現場先の大規模小売り店舗・運河街に来ておりますが…そいえば現地集合なので何するか聞いてないや。


あ、土方さんお疲れ様です~☆えっと取り合えずショーの準備はしてきましたが、今日は何をー?


「11時[うさぎのコナインチェ]で撮影会、14時[餓狼]で試供品配り、17時[サンタクロース]で宝石配布です。」


……なんだそれ。


「さー、キリキリ行きますよ~☆」

首根っこ掴まれてズリズリ連れてかれた先は、太陽恒星技研の店舗。タイムセールのクリスマス限定セットをご購入頂いたお客30組と記念撮影。


そう言えばコナインチェって、オーラルケア商品のイメージキャラクターやってたな…。

店舗裏で衣装とご対面、土方さーん 面に耳が付いて無い。え?衣装のズタ袋に入ってる足を浚え?あーなんか靴に刺さってありまし…重っ!?

なんすかこれ耳?鋼鉄製?取れないようにしっかりネジでとめなさい?

らぢゃー…で、なんで鋼鉄製なのかは答えてくれないんですか。ちぇ☆


えーと…土方さんコイツ頭身が1.5なんですけど…、あぁ肘までが頭になんですね…動きづらそう、握手は体を目一杯反らして手を出すとやり易いと…。


軽くレクチャーされてコナインチェで撮影会、身長160以上だと幼児に怖がられるもんだけど、頭身のせいなのかみんな笑顔で抱き付いてきてちょっとホッコリした。


何事もなく撮影会は終了、次に向かうはドラッグストア。クライアントさんに挨拶後、早速着替えて仕事にかかる事に。


試供品の配布って言ってたな…餓狼で何を配るんだろう、「はい、餓狼。お願いします」と土方さんに渡された籠の中には


   お試し用女性生理用品(ナプキン)3個セット


  ぐはっっ(鼻血)


ひ ひ 土方さぁぁあん!餓狼で?餓狼で何でこれなの?何かの間違いじゃなくて?ガムとかキャンディとか口内清涼剤じゃないの普通は!?誰も受けとらんわぁぁあ!!

何故にゴリゴリアクション系を選んだクライアントゥゥ、プリティ&キュアとか魔女見習いいろはとかだろぅぅぅう!!!!


嘆こうと狼狽えようと「お客の前に出た以上、お前という個は消せ」と叩き込まれているので、表面上は何事もなく籠を受け取り「無料」に飛び付きそうなオバサ…お姉さん方に配っていく…俺は餓狼~俺は餓狼~25歳な大人の男~☆


…大人の男でも狼狽えるんじゃねぇ?と気付いたのは、主に心が満身創痍で配り終えた後でした…。


魂が抜けた俺を笑顔で抱えて連れてかれたのは、女子小学生に人気のお店「賛宝石」

サンタクロースの着ぐるみで屑宝石の小袋を配って店内へご案内…、まぁ何とか出来そうです。着ぐるみなら面があるだろうし…


なーんて店舗裏の衣装確認するまでは思ってましたともさ☆


衣装までは良かったよ、ちゃんとアンコで体がふっくらに見える様になってて衣装もペラペラのじゃない見映えのするヤツでさ…。


ーで、何故に面が被るヤツじゃなくて、半透明のドラマの犯罪者が顔隠す為に付けてるお面タイプなのさぁ(号泣)

温和な笑顔の髭爺だろソコはぁぁあ!orz


土方さんもさすがに「コレは…」と渋い顔です。


「ヒロム君お面無しで「無理ですっ!!」…ですよねぇ。じゃあ私が着ますかね。」


最後の台詞に驚いて顔をあげると同時に飛んで来た財布、…顔面で受け止めましたよチクショウ。


「ーなので、ヒロム君は玩具屋で「クリスマスっぽい・顔の隠れる着ぐるみ」を買ってきて下さい、領収書貰ってくださいね経費で落としますから。

ハイ、さっさと行く!」


拍手(かしわで)1つで走り出す体、あぁここまで仕込まれてんだなぁ俺…と感じました。

玩具屋では赤鼻のトナカイを購入、顔は出るけど付け鼻で視界不良な位に大部分隠れるから何とかセーフ☆…と言うか他のがペラペラ安っぽすぎて無理。

急いで戻ると控え室にはスタイリッシュなイケメンサンタクロース、土方さん身体太く見せる為のアンコ着てます?


「アンコはヒロム君着て下さい、なるべく可愛いフォルムにしとかないとペラペラなトナカイは貧相にしか見えませんから。今日の私にアンコは似合わないでしょう?」


…キラキラ笑顔のサンタの前ではぐぅの音も出ませんでした。


こうして金髪イケメンサンタと丸々とした非常食用トナカイとで、小袋を女子小学生に手渡しーの店内へ誘導しーの…。


あ、土方さん小袋手渡したらそのまま手ぇ握って店内へ誘ってやがる。くっそう何処のホストだ、一定年齢以上の人にはあまり触れちゃいけないんじゃなかったですかのぅううう(歯軋り)


横で繰り広げられる疑似キャッチに、「右腕左足を等価交換しちゃった人の世界の大総統に、条例違反で罵られてしまうがいい」ーとお呪いをかけつつ配ってると残りはもう1袋、さて何処かにお嬢さんは居ないか…なー…。


ちょっと離れたソファーで、ニコニコとこちらを見ている品の良さそうなおばあさんが居ました。


なんか凄い幸せな笑顔で、さっきまでのささくれてやさぐれた気持ちが段々ほっこりして…。


…うん、最後はあの人がいいな。

配り終えた土方サンタを連れておばあさんの元へ、


こんばんは、今日はクリスマスなのでこちらをあなたにプレゼントしたいのです。


「あらまぁトナカイさん、こんなおばあちゃんにあげるより、もっと若いお嬢さんに差し上げなさいな。」



やんわりと断ろうとするおばあさんに、土方サンタが笑顔で手渡そうとした小袋ごと両手を握り


「私はサンタクロースです、貴女の産まれるずっと前からサンタクロースなんですよ。

私から見れば貴女なんてまだまだ若くて笑顔の素敵なお嬢さんなんです、そんな貴女に私のトナカイが渡したいとー。受け取ってあげてくださいませんか?」


その言葉に一瞬キョトンとしたけど満面の笑みで受け取ってくれたおばあさん、花が咲いたようなーって表現はこんな笑顔に言うんだろうな。




そんなクリスマスにホワホワな気持ちで帰社したら、事務所で何やら沖田さんは不貞腐れ、山崎さんは項垂れてます。


どーしちゃったんですか山崎さん?


「…デパート小丸で沖田がナマハゲやって、控え室に帰る途中に通りすがりのお爺さんが驚いて転倒→救護室行き。

此方側には全く非は無いけども、暫く小丸で我が社は営業自粛…。」


「俺悪くないしぃぃぃ!!!!おのれぇぇぇあの嫌みなクライアント様めぇぇぇええ!!

今日の衣装で夜道に立ってやろうかぁぁああ☆あのクライアントのババ…」


  げすっ☆


半眼微笑の土方さんが、叫ぶ沖田さんに踵を落とすのを俺が止めなかったのも無理無いと思いません?

ついでに俺も踏んでても何ら問題無いですよね☆











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