第49話 走れねず太郎
とっととー走れよねず太郎♪隅っこー通れよねず太郎♪だーいすきなのはー♪
「暗くてジメジメして暖かい所じゃけんのぅうー」(台詞)
主題歌「走れねず太郎」より抜粋でございます、阿久津ヒロムでーす。今週の現場は走れねず太郎で、只今リハーサル中でござる。
ねず太郎:テレビ大都会にて放送中。主人公が逃がしてしまったハツカネズミのねず太郎一家が、家ネズミとして駆除しようとする人間との駆け引きを描くドタバタブラックコメディ色の強い作品。
しかし見た目の可愛らしさから別方面で人気が出て来た為、毒も灰汁も抜けまくったキッズ版が放送中。
…ノーマル版のショーだったら面白いのに。
なんて考えてたら「集中っ」と頭叩かれました…
集中してないの先輩達の方じゃないですかぁ…。
ブーたれて返事する俺。
だってさ、なんか先輩達演技しないで立ち位置確認ばっかり。リハーサルって言うよりは現場でやる場当たりじゃんか…。ダンスだって簡単すぎるし、フォーメーションも面白み無いし…。
なーんてブツブツ言ってたらシッカリ聞こえてたらしく満面の笑みで髪の毛掴まれました。わーい…激烈嫌な予感センサーがビンビンです父さーん妖怪の気配ですよー出てきてぇ俺の友達ぃいー。
「なんか混ざっとるのじゃー」なんて甲高い父さんの声が脳内に木霊してますが後のフェスティバルでごぜぇますよ。
あれよあれよと両手を掴まれみんなで輪になって…?
「はーーーい、それでは走れねず太郎リハーサル恒例!パラレルスクワットはーじめーるよー☆Are you ready guys!?Do the goes on!」
パラレルスクワット…確か膝を90度、太股が床と並行になる位曲げるスクワットの事だよね?え?何故に?
頭は疑問符だらけでも身体は言われた事に即座に反応、…これが躾られたって事なんだろうか。あ、なんか鼻の奥がツンと…(泣)
そんな事考えてる間にもいけいけドンドンで続くスクワット…、手ぇ掴まれてるから速さと回数はほぼ強制です、遅れると両隣から野次が飛んできます。ぅぅあ かっ下半身がっっ、体が悲鳴をぅぅぅ。先輩ぃぃ、コレをリハでやる意義がわかりませぇえええん。
「現場行ったら分かる、因みに明日のリハは最初と最後に通しでやる位であとは全部スクワットだからな。付け焼き刃だけどギリギリまで下半身鍛えるぞー。」
いやぁぁぁぁぁぁぁぁあ何故にぃぃぃぃぃぃ!!!!あぁぁぁももが太股がぁぁあ何か大腿動脈的な物に危険信号がぁぁぁぁぁぁ
暗 転 ☆
現場当日、下半身強化の理由がわかりました。
ねず太郎の衣装って…うーん、キャスター付きの椅子…ヤンキー座りレベルの椅子と全身ハリボテにモコモコ怪獣スリッパ…全長1メートル以下のぬいぐるみの出ー来上ーがりぃー☆
しかも重心がやや後ろぎみなので、尻餅つきかけのヤンキー…。
リハが立ち位置確認なのもダンスがショボいのもスクワットも納得ですぅー、とにかく必死に足を動かす。
ツルツルのステージならまだしも今日の現場は駐車場、キャスターがガリガリガリってうごっ、動きづらいっっ!脛が痛いっ!ふんだらばぁぁぁあ!!!!俺は負けぬ!俺はここで伝説を残すぅぅぅう☆燃え上がれ俺の中の何かぁぁぁあああ!
その日子供達は見た、ダンスで1回転ジャンプをかますネズミの姿をー
のちに衣装のキャスターが壊れ魔王土方が降臨するまで、我等も伝説を継げと飛び上がるアクターが後を絶たなかったとかなんとか…☆どっとはらい