第48話 仕事に打ち込む男は格好いいーとは限らない。
「ヒーロームー、コレどっちも「マスクドライダー野郎魂魄」の台本。
読め、そして演ってみたい話はどっちか聞かせろ。」
…?只今毎日通ってはいるけど何だか久々wな我が高校1年の教室、3時間目が終わって小休止な20分休み中、何やら台本2冊渡されて困惑中な阿久津ヒロムです~。
先輩イキナリ1年生の階まで来てどうしたんです?しかも台本ってーどうせ今日練習日なんですから態々来なくても…。
「え?人目があるところでこういった仕事の話をして、興味持ったヤツが話しかけてこないか仕掛けてる☆」
…先輩ソレやり過ぎて1年の中で悪い意味で有名になってるんですよ…、これから先も遠巻きには見られるでしょうけど絶対に声は掛けられません断言してあげます。
前に剣道部と空手部にまで行って「試合には出ないし部員登録もしない、端で型の基本だけ教えてほしい。あと自由に帰宅希望」って言って顧問の先生から断られてたのも話はまわってきてます。
しかもスーツアクターの仕事の為だって宣言したそうで…この騒動でついたアダ名が「ワーカホリック斎藤」
何とかしてくれって苦情と御叱りがコッチに来てるんですよ…中庭の一件以来コンビ扱いされてるんでー、自重して頂けます?
土方さん仕込みの絶対零度の微笑みで苦情を言っても「ワーカホリック斎藤…リングネームみてぇ格好いい☆」なんて聞いちゃいないのでアイアンクローで沈めて台本を手にする、えーと何々ー?
登場キャラクター:
マスクドライダー野郎魂魄
マスクドライダー野郎幻影
怪人
小道具:剣
A:
108集めると願いが叶うという『AugeSeele』がとある剣に宿っているとの情報を頼りに魂魄が探していると、同じ目的で剣を探す幻影と鉢合わせ
→バトル(一旦幻影が退く)
→魂魄が剣を見つけて手に取る瞬間に幻影からの奇襲で奪われる
→しかし情報は誤り、剣の呪いで幻影バーサーカー化。魂魄をボッコボコに☆
→お客に剣を向けようとするトコロを捕まえて「幻影の正気を取り戻すにはみんなの応援が必要なんだ!力をかしてくれ!」
→応援で正気に
→誤情報を流したヤツが「チッ、失敗か」と出てくる
→2人でフルボッコ☆END
B
:何処ぞの占い師(本当は怪人)が『AugeSeele』の宿る剣だと2人を騙し、「より強い者がこの剣には相応しい」とけしかける
→魂魄と幻影のバトル
→バトル
→さーらーにバトル
→2人ボロボロになったトコロで占い師正体を現す
→「AugeSeeleの宿る剣なんてそうそうある訳ないだろう?コレは裏山の洞窟奥の湖から拾ってきたんだよウヒャヒャヒャ」
→「…聞いた事がある、この地を平和に導く為に清らかな水に捧げられたと言う伝説の剣」
→「俺も聞いたぜ、その剣の力の源は」
→『純真な子供の心ー』
→会場のみんな!力をかしてくれ!
→みんなの応援で2人復活、怪人フルボッコ☆END
要約するとこんな感じ。あ、ちゃんと台本はト書きだの台詞だのちゃんと書いてあるからね。
読み終わったので…
どっちもどっちです、Bなんてひたすら立ち回りとか…殺す気ですか殺す気ですよね?土方さんとか沖田さんレベルの人でしか出来ない話じゃないですか。
と、正直な感想を眉間にチョップ入れつつ言い放つ。沖田さんから教わったぞ、「脚本書く時は新人さんでも出来る様な内容にするもんだ、慣れてる人達は色んな引き出し持ってるからナンボでもそこから面白く出来るから大丈夫。そこはホレ、腕ですがなうーでっ☆」って。
「今度オートレース場の現場があってさ、コレはレースとレースの間の10分位のショー用台本。」
なんて、先に言うべき情報を後だしジャンケンする先輩に更に目潰し。
とにかく…再考の余地ありまくりです、子供の力を借りるってのは俺的に好きですけどね。
Bの話は見る側だって言うなら好きですよー、なんて答えてやると「この話が余裕で出来る位のレベルにはなりたいもんだよなぁー」なんて返事が返ってきた。
うん、この話でお客さんに楽しんで貰える程の技術力、体力、演技力…俺等にはまだまだ足りないモノばっかりだ。
「ま、お互いに切磋琢磨でいつかどんな話が来ても対応出来る男になりましょうかねー。」
んじゃ事務所でなー、なんて手ェひらひらさせて先輩は教室から出ていった。
…うん、格好いいと思う 思うんだけど 思うんだーけーどー。
足刀の練習で足の裏の外側の部分…所謂「足刀部」だけで歩いてなけりゃなー。
ローファー痛んでも気にしないのは流石「ワーカホリック斎藤」だよなぁ。
おおぅ、すれ違った女子が凄い顔して2度見してらっしゃる☆その後怪訝そうな顔してコッチ見ないで下され(泣)