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脱出

 その後は異世界の常識についてあれこれ質問して、ある程度は聞き出すことに成功した。

 一日は25時間。今は15時頃。太陽は東から昇って西に沈む。今の季節は春。ひと月は30日で12か月で1年。その他魔物についてなど色々。


 従者修行は明日からだというので、とりあえず俺は着替えたいと言って異世界の服を貰うことにした。

 そして俺は、今日は疲れたから早く寝たいと言って一人にしてもらった。


「さて、寝るか」


 とにかく疲れていたし眠かったので、まずはぐっすり寝て英気を養うべきだと思った。そして明日、ここを出て行こう。






 翌朝。俺は無事に神殿ぽい所から脱出して山の中を歩いていた。

 今向かっているのは、昨日マップで示された“強くて信頼できる仲間”のいる場所だ。


 街から出る時は門番らしき人を見て緊張したが、声をかけられることもなく外に出られてホッとした。あとは“魔物に出会わず安全に”ナビに従って行くだけだ。

 矢印の通りに歩くだけだから簡単だが、何も食べずに出てきたから腹が減ってきた。時々木の実は見かけるのだが、食べても大丈夫かどうか分からない。

 とにかく強い仲間に会うまでの我慢だ。仲間ができれば、安全な食べ物を探しに行く時に周囲の警戒をしてくれるかもしれないし、もしかしたら持っている食べ物を分けてくれるかもしれない。

 俺はまだ見ぬ仲間の姿を想像することで空腹を紛らわせることにした。


 どんな人かなあ……可愛い女の子だったらいいんだけどなぁ……でもそんなわけないよなあ……。

 やっぱり筋肉ムキムキのアニキって感じの人かなあ。それとも壮年のおっさん戦士かもしれないなぁ。

 冒険者だったらいいなぁ。パーティー組んで、獲物の場所は俺が案内すれば確実だし、お宝とかも探しに行くことだってできるし。

 あー、ティアさんに冒険者について訊いておけばよかったなぁ……でも逃げようとしてるのがバレるかもしれないと思ったし、しょうがないか。


 色々と夢想しながら歩いていたが、疲れたので休憩することにした。

 すぐそばに黄色いグレープフルーツみたいな実がなる木があったので、ナビを“安全に食べられる物”に切り替えてみた。

 すると矢印が木の実を指した。


「やったっ!」


 俺は喜び勇んで実を一つ採った。皮は堅くてかじれそうになかったので、近くの石にぶつけてみたら簡単に割れた。中には赤い果肉の粒が詰まっていた。

 俺は一粒口に入れてみた。噛むとラズベリーに似た味がする。


「美味いな、これ」


 俺は夢中で頬張った。果実一つ分を食べ終わると二つ目の果実に手を伸ばしたが、あんまり食べると動けなくなると思って、もいでバッグに入れることにした。

 バッグには五個しか入らなかった。たくさんの木の実がなっているのに残念だと思いながら、俺は諦めて移動することにした。


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