俺の能力
ノックの音で目が覚めた。いつの間にか寝ていたようだ。
「失礼いたします」
知らない少女が部屋に入ってきた。まさかハニートラップかと俺が身構えると、少女はお辞儀をして「食事の用意ができましたので、こちらへどうぞ」と扉を示す。
ああ、なんだ。メイドさんみたいな人か。
俺は勘違いに恥ずかしくなった。そんな俺を不思議そうに見ている少女の視線に気づいて、慌ててベッドから降りた。
メイドさん(仮)に案内されて、俺は食堂のような所に辿り着いた。
そこに二人の中学生の姿はなかった。
「あの二人は?」
そう訊くと、メイドさん(仮)は「勇者様方のことですか?」と言うので頷くと、「お二人はお部屋でお食事されているはずですが……」と答えた。
何で俺だけ食堂なんだと思ったのが顔に出たのか、「申し訳ありません。従者の方はこちらで食べていただくことになっているので……」と、ちっとも申し訳なく思ってなさそうな顔でメイドが言った。
「俺は従者じゃない」
そう言ったけど、メイドは「ティア様からは従者の方だと伺っております」と答えるだけだった。
もう何を言っても無駄だと思って、俺は大人しく席に着いた。
心の中では、こんな所さっさと出て行ってやると決意していた。
食事は素朴な感じで思ったよりも美味かった。
腹いっぱいになって、さて部屋に戻ろうかと思ったけど、さっきのメイドがいない。ほかの人も忙しそうだし、一人で帰ろうと思ってさてどっちだったかなと思った時、不意に脳裏にマップのようなものが浮かんだ。そしてナビのように矢印まで浮かんでいる。
これってもしかして、『道案内』の能力!?
俺が初めて自分の力を知った瞬間だった。




