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俺の見た目とガーゴの値段

 ディーに会った後は、雑貨屋に行ってマジックバッグを買った。

 その店には大中小の三種類があったけど、予算の都合で小のポーチ型を二人分購入した。金が貯まったら大のバッグも購入したいと思う。


「とりあえず、今日は宿を取って明日出発しようか」


 俺が提案すると、キースは少し逡巡する様子をみせたが結局は頷いた。

 本当は今すぐ探しに行きたいのだろう。

 けれど俺達は帰ってきたばかりで疲れていたし、宿に泊まれる時はできるだけ泊まりたい。

 俺はキースを促して宿へと向かった。




◇◇◇




 翌日の早朝、俺達は街を出た。

 ユンカの実があるのは西の方角なので街道を少し戻ることになる。だから今日は一つ手前の町まで行って一泊し、明日は街道を逸れて森の中に入る予定だ。

 街道にはほとんど魔物は出ないから、今日は気負わずただ歩くだけだ。


「兄ちゃん達はどこまで行くんだ?」


 近くにいた冒険者風の中年男が話しかけてきた。


「リグリスの先の森です」


 本当はもっと先まで行くのだが、地名が分からないのでとりあえずそう答えておいた。


「そんな所まで何しに行くんだ?」

「探し物がありまして……」

「いくらフィロ鳥を従魔にしてたって、子供二人じゃ危ないぞ」


 中年男は心配そうな顔で忠告してくれる。

 ……けど、キースはともかく俺は子供じゃないんだけどなあ……。


「俺はもう十八ですよ」


 俺がそう言うと、「え! 十二くらいじゃないのか!?」って驚いた顔をされた。

 十二って……キースよりも年下に見えるのかよ……。いくら日本人が若く見えるからって、それはないだろ。

 けれどおっさんは信じられないようで、「本当に十八なのか? 年誤魔化してないか?」って訊いてくる。


「本当に十八だよ。嘘ついてもしょうがないでしょ?」

「……まあ、そうかもしれないが」


 それでも納得いかない顔をしているので、俺はキースは幾つに見えるか訊いてみた。すると「十三くらいか?」と、ピッタリ年を言い当てた。

 ……なるほど。キースは年相応の見た目なのか。

 てことは、俺達は十二と十三のガキが二人で旅してるように見えるのか。どおりで旅の途中に知り合ったおばちゃん達が親切にしてくれるわけだ。


 その後はキースも加わって、おっさんとたわいない話をして過ごしていた。

 そんな時、ピーコがふと飛び立って、しばらくすると一メートルほどのワニのようなモノを捕まえて戻ってきた。そして俺の前まで来ると獲物を落としてまた飛んで行った。


「こりゃガーゴじゃないか!!」


 おっさんが叫んだので、歩いていた人達が振り向いてこっちを見た。そしておっさんの視線の先のワニもどきを見て、「ガーゴだ!」と驚きの声を上げる。

 ……これはそんなに珍しいモノなのだろうか?

 それにしても、ピーコはよくこんなでかいのを持ち上げられるよな。たしかに足は鷲のようにがっしりしてるけど、つぶらな瞳が可愛らしいインコのような外見なのでいつ見ても違和感がある。


「フィロ鳥が強いのは知ってるが、ガーゴを倒せるほどだとは驚いたぜ!」


 おっさんが興奮したように言うと、周りの人達も頷いて「凄いな」とか「フィロ鳥が捕ったのか!」とか騒がしくなった。

 そうしてる間に、ピーコがまたガーゴを掴んで戻ってきた。

 すると「おお!」と感嘆の声がいくつも上がった。

 そして商人風の男が近づいて来て、俺達に声をかけてきた。


「このガーゴ、わたしに売ってもらえませんかね?」


 その男は笑顔で話しかけてきているが、眼力が半端ない。何がなんでも買い取るというような圧力のようなものを感じる。


「いくらで買い取るつもりだ?」


 そばに居たおっさんが訊くと、商人の男は俺をまっすぐ見ながら「三万でどうですかね?」と言ってきた。


「二匹で三万か? 子供だと思って舐めてるだろ?」


 おっさんが言うと、男はやっぱり俺を見ながら「では四万ではどうですかね?」と言い、またおっさんが「五万は出せるだろ」と言って、男は「……では五万で」と言って話の決着がついたようだった。……どうでもいいけど、俺を見ながら話すのやめてくれないかなあ!


「五万なら妥当なとこだと思うぜ」


 おっさんが俺に返事を求めるように言った。キースを見ると頷いたので、俺はガーゴをその値段で売ることにした。


「ガーゴは珍味だけど加工が面倒だから、売れて良かったね」


 キースがそう言って笑う。

 なんでもいいが、あの商人の眼力はマジ怖かった!


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