勇者召喚 2
「ようこそ、勇者様方」
お姫様のような綺麗な女の人が俺たちに話しかけてきた。聞いたことのない言葉だったのに、不思議と意味が解った。
とりあえず、言葉が理解できてホッとした。
「勇者? これってもしかして、勇者召喚!?」
中学生が興奮したように叫んだ。なんかうるさいやつだなあ。もう一人は「異世界来た――!!」って呟いてるし。
まあ俺も思ってることは大差ないけど。
けどネット小説のテンプレ展開なら、この後俺たちに魔王を倒してくれって言うんだよな。
「勇者様、まずはお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
お姫様(仮)がそう言うと、中学生二人は何のためらいもなく名乗り始めた。
「桜井克己」
「岩井柊」
「サクライ・カツキ様とイワイ・シュウ様ですね」
そしてお姫様(仮)の視線が俺に向けられた。
俺は一拍おいて「鈴木尊」と友人の名前を名乗った。
「スズキ・タケル様ですね」
にこやかに言うお姫様(仮)に俺は頷き返しながら、内心では嘘がバレないかとヒヤヒヤしていた。
しかし俺の心中には気づかなかったようで、彼女は今度は自分の名前を教えてくれた。
「わたくしはティアと申します。わたくしたちはガーディアナ王国の最高神官です」
……お姫様じゃなくて、神官だった。
「勇者様、まずはこの珠に触れてくださいませ」
ティアさんがどこからか水晶玉のような物を取り出した。
「これは特別な能力を調べるためのものです」
まずい、と俺は思った。もしかしたら偽名がバレてしまうかもしれない。けれど断る理由も思いつかなかった。
こんなことならちゃんと正直に名乗ったほうが良かったかもと思ったけど、いいややっぱり本名は隠すべきだと思い直す。
ネット小説の中には名前を名乗って隷属させられるというものがあった。だから安易に名乗らないほうがいい。




