ユンカの実
翌日の昼頃、俺たちはチヌスの街に到着した。そして真っ直ぐに薬屋に向かい二ーティア草を換金した。
「うん。今度は萎れてないね」
そう言って薬師は奥の部屋へと入って行った。そして戻って来ると硬貨の入った袋を差し出した。
「今日の買い取り分、35万ガルだよ」
思ったよりも全然少なかった。
「……ディーの借金は」
「500万ガルだね」
「……全然足りない」
俺たちが愕然としていると、薬師が詳しく説明してくれた。
彼が言うには二ーティア草自体はそんなに高くなくて、神の雫を作れる薬師が少ないから高いのだそうだ。
昨日ディーに渡した物も彼が作ったのではなく、彼の師匠が作った物を譲ってもらったのだという。
材料が高いと思い込んでいた俺が馬鹿だったのだ。
「例えばユンカの実なら、一つで500万ガル払えるんだけどね……」
「ユンカの実!?」
薬師が呟いた言葉に俺は食いついた。
「それ採って来たら500万ガル貰えるんですか!?」
「え……ああ、そうなんだけど……」
俺の食いつきに驚きながら、「でもなかなか手に入らないんだよ」と彼は言った。
俺はナビさんにユンカの実がなっている所を頼んだ。するとそれほど遠くない場所にあった。
「次はユンカの実を採って来ます!」
そう言って、俺は薬師から金を受け取って薬屋から出ようとしたところで訊くべきことを思い出した。
「ユンカの実を採る時に気を付けることはありますか? それと、マジックバッグって、買うといくらするんでしょうか?」
俺の勢いに薬師はまたびっくりしていたけど、質問にはちゃんと答えてくれた。
ユンカの実は傷をつけずに、採ってすぐマジックバッグに入れれば大丈夫とのこと。
マジックバッグは今借りてるのなら7万ガルほどで買えるそうだ。
それなら買ったほうがいいだろうとキースと話し、借りているバッグは返すことにした。
すると3万ガルが返金された。レンタル料とは保証金のようなものだったらしい。
薬屋を出た後はディーの家に行って事情を説明した。そしてとりあえず今日の稼ぎの半分を渡そうとしたけど断られてしまった。
「よく考えたらこれは私のうちの問題で、あなたたちに頼るべきじゃなかったんですよね」
そう言ってディーは力なく笑った。
「絶対、ユンカの実を採って来るから」
彼女に拒絶されても、キースはきっぱりと言った。
そんな二人を見ながら、キースはディーのことが好きなのかな、と俺はなんとなく思っていた。