薬師の提案
俺たちは薬師に事情を説明した。
すると彼は腕を組んで、考えるように目を閉じた。そして目を開くと俺たちに言った。
「こういうのはどうだろう。僕が神の雫を用意して、明日、ディーに渡す。代金は彼女の借金になるけど、君たちが代金分の二ーティア草を採って来てくれれば精算できるよ」
……ディーの借金になるというのが気になるけど、俺たちがちゃんと薬草を採って来ればいいんだし、マジックバッグを借りられたし大丈夫だろう。それに、この薬屋はディーの紹介だし信用できるだろう。
俺とキースは顔を見合わせて頷き合い、薬師に向かって「お願いします」と言った。
「じゃあ、今日の二ーティア草の買い取りはバッグのレンタル料を引いて2万8千ガルね」
……レンタル料取るんかよっ!
翌朝。
宿を訪ねて来たディーに俺たちは事情を説明し、三人で昨日の薬屋に行った。
「はい、これが神の雫」
ディーは借金と引き換えに薬師から薬を渡された。
「必ず借金分の薬草を採ってくるから、待っててね!」
キースがディーを元気づけるように言ったけど、彼女は「大丈夫です。私、頑張って稼ぎますから」と俺たちを信じてないようなことを言う。やっぱり約束を守れなかったから信用されてない。これから挽回するしかないな。
ディーを家まで送ってから、俺たちはまた二ーティア草を採りに行った。近場は昨日採り尽くしてしまったので今日中に帰れないかもしれない。野営することも考えて宿は予約しないで来た。
昨日と同じように採取した物を今日はマジックバッグにしまっていく。量はそんなに入らないらしいけど、見た目よりはたくさん入るしポーチ型なので邪魔にならない。俺も一つ欲しいけど高いのかな。
「なぁ、マジックバッグっていくらくらいするんだろ?」
俺は薬草を採取しながらキースに訊いてみた。
「さあ……わかんないけど、高いと思うよ」
「そっかあ。でもあると便利だよな」
「そうだね。……返す時に値段を訊いてみようか」
「そうだな」
それからも何度も場所を変えながら採取を続けて、陽の傾く頃にはたくさんの二ーティア草を集めることができた。
「結構遠くまで来たなぁ」
体を伸ばしながら俺が言うと、キースが「今日は野宿だね」と言って枯れ枝を拾い始めた。俺もそれを手伝いながら、ナビさんの示す野営に適した場所へと二人で向かった。