失敗と救いの声
翌日。俺とキースは材料の薬草を求めて森の中を歩いていた。もちろん、最大戦力のピーコも一緒なので安心安全な道中だ。
しかし、何事も慎重なのが一番。ナビさんには危険な魔物は避けた道順を示してもらっている。ちょっと遠回りになるけど狩りが目的ではないのだし、せっかく狩っても解体している暇も重い荷物を持ち運ぶ余裕も無い。
こんな時、アイテムボックスがあれば便利なのにと思うのだが、無いものねだりをしても仕方が無い。俺の能力でも充分役に立っている。
「あった!」
目的の薬草が見つかった。
俺はナビさんの示す薬草を根ごと採取して大切に袋に入れた。そしてほかにも探すためナビさんに頼んだ。
「次はもっと森の奥だなあ……」
「遠いの?」
俺の呟きにキースが訊いてくる。
「割と遠いな」
「じゃあ、ここで昼飯食べて行こうよ」
「そうだな」
近くに危険な魔物もいないし(ナビさんに確認済み)、俺たちは急いで昼食を摂ることにした。
◇◇◇
「萎れてるね」
街に戻って、ディーに聞いていた信用できる薬師に薬草を見せたとたん、そう言われた。
「でも上級ポーションの材料にはなるから買い取るよ」
「神の雫の材料には……」
「摘みたてじゃないと」
そんなことを言われても。薬師持参で行けってか。
ああ本当にアイテムボックスが欲しい。
「マジックバッグがないとダメか……」
キースが呟くと、薬師が「ちょっと待ってて」と言って奥の部屋に入って行った。
そして戻って来たと思ったら、彼はキースにバッグを差し出した。
「これ貸してあげるから、また二ーティア草を採ってきてくれない?」
「もしかしてマジックバッグ?」
「そう。だから萎れないように採って来てね」
「わかった! 今度こそ神の雫の材料になるように採って来るから!」
キースがバッグを持って喜んでいるが、俺はこんなことなら採取する前にここに来て詳しく聞けば良かったと落ち込んでいた。
「ヤマト、元気出せよ」
「そう言っても……ディーに何て言うんだよ」
「あ……」
ディーは俺たちの泊まっている宿屋に明日の朝来ることになっている。
俺が落ち込んでいるのは、今日一日が無駄になったことだけじゃなくて、期待しているだろうディーになんて言おうかと考えると気が重くなるからだ。
そんな俺に救いの声がかけられた。
「なんか事情があるみたいだね。良かったら聞くよ?」