狩り
家に戻るとさっそくピーコが出迎えてくれた。
「フィロロロ」
「ピーコごめんな。いい子にしてたか?」
ピーコは俺の肩に乗って頭を擦りつけてくる。
留守番しているように言い聞かせて出掛けたのだが、ちゃんと大人しく待っていたようだ。
「寂しかったか?」
俺はピーコを撫でながら訊いた。するとピーコは突然飛び立って、扉周辺を飛び回った。
「外に出たいのか?」
「腹が減ったんじゃないか?」
キースに言われて、そういえば朝、フンガの肉をやったきりだなと思い出した。
俺は扉を開けて、ピーコを外に出してやった。
ピーコはすぐに獲物を咥えて戻って来た。いつものトカゲもどきだ。
そしていつも通り、俺に見せた後で丸呑みする。
満足そうなピーコを撫でていると、キースから声がかかった。
「昼飯食おうよ!」
「ああ」
俺は外で食べるはずだったサンドイッチを取り出し、席に着いた。
ピーコは俺の肩の上で大人しくしている。
「とりあえずキュイでも狩って、解体の仕方教えるから」
「わかった」
解体なんてやりたくないが、キースにばかり頼るわけにはいかない。しっかり覚えないと。
ただ、キュイというのが何なのか分からず不安だけれど……。
キュイはウサギによく似た魔物だった。ただしウサギのような愛らしさはなく、凶悪な顔をしていたが。
そいつが俺に向かって飛びかかって来た。
「うわっ」
硬直する俺の目の前で、キュイが突然、ぼとりと落ちた。見ると首筋に切られたような傷があって、そこから血が流れ出していた。
キースが何かしたのかと視線を向けると、彼も驚いたような顔をしていた。
「さすがフィロ鳥」
そう言われて初めて、これがピーコの仕業だと気がついた。
「ピーコがやったのか?」
ピーコを見ると、なんとなく得意顔をしているような気がした。
「すごいな、ピーコ」
俺はピーコを褒めながら撫でた。ピーコは嬉しそうに頭を擦りつけてくる。
「解体するから見ててよ」
キースの言葉に、俺は慌てて視線を向けた。
ちゃんと見て覚えないとな。
キュイの解体はグロかったが、思ったより忌避感はなかった。
これならなんとか俺にもできそうだ。
その後もキュイを見つけるたびにピーコが倒してしまって、キースは自分の活躍を見せられないことを嘆いていたが、俺は楽でいいんじゃないかと思った。
ただ、解体はやってみると思ったよりも大変だった。けど、数をこなしているうちに慣れてきて、三匹目はきれいに解体することができた。
「今日はこのくらいにしよう」
キースがそう言ったので、俺たちは家に帰ることにした。
たくさん働いた満足感に知らず笑みが浮かんでいた。