強い仲間 2
「ここだ……」
目的地は小さなボロ小屋だった。山の中に一軒だけだし、猟師小屋だと思う。
この中に強くて信頼できる人がいるのだろう。
さて、何て言って仲間になってもらえばいいのだろうか。
事情を素直に話したほうがいいのだろうか。
でも、異世界から来たと言って信じてくれるかなあ……。
やっぱり最初は旅人のふりして、泊めて下さいって言うのがいいかな。
そうこう悩んでいると、小屋の中から食欲をそそるいい匂いがしてきた。
すると俺の腹がぐう~と音をたてた。
とりあえず、どんな人か見てからだな。
俺は意を決して扉に近づいた。
そしてノックしようとしたところで、突然、扉が開いた。
ゴンッ!
突然の衝撃に、俺は頭を抱えてうずくまった。
「なんだ。坊主、俺に何か用か」
涙目で見上げると、ガタイのいいおっさんが俺を呆れたように見ていた。
俺は扉に打ち付けた頭をさすりながら立ち上がった。
「あの~……一晩泊めてもらえないでしょうか」
「なんだ坊主、迷子になったのか?」
「迷子じゃないんですけど。……旅をしていて」
「旅? その格好で?」
おっさんは胡乱げに俺の全身を眺めた。
やっぱこの軽装で旅人は無理があったか。
「……出発したばっかりなんで」
「……ふうん。まぁいい、入れ」
そう言って、おっさんは顎で家の中を示した。
「……お邪魔します」
俺が家の中に入ると、おっさんは扉を閉めようとして、「お?」と声を上げた。
何かと思って振り向こうとした俺の肩に、ピーコが飛んで来て止まった。
「フィロ鳥じゃねえか」
おっさんが感心したような声で言った。
ピーコはフィロ鳥というらしい。
……きっと鳴き声から付けられたんだろうな。
「そいつ、お前の従魔か?」
「え? ……従魔?」
従魔ってことは、ピーコは魔物なのか?
「なんだ? フィロ鳥のこと何も知らないで従魔にしてんのか?」
「……ええ……まあ」
俺は曖昧に頷いた。
「おまえ、あれか。卵拾って従魔にしたクチだろ」
「そうです」
「で、フィロ鳥のことは何も知らないんだな?」
「はい」
おっさんは呆れたように俺を見ているが、ピーコについて教えてくれるなら教えてもらおう。
と、そこで俺の腹がぐう~と鳴った。
「なんだ、腹減ってるのか?」
「……ハイ……」
部屋の奥からいい匂いがしてくるから、さっきから気になって仕方なかったんだ。
「話は食べてからだな」
そう言って、おっさんは部屋の奥に向かって「キース! 飯はまだか」と声をかけた。
そこで俺は初めて、ほかにも人が居るのだと知ったのだった。