ピーコ
俺はとりあえず服を着て、この小鳥をどうしようかと考えた。
「まずは……名前だよな」
黄色い小鳥がつぶらな瞳で俺を見ている。昔飼っていたセキセイインコを思い出した。
同じ名前でいいか。
「ピーコ。おまえの名前はピーコだ」
俺は小鳥に言い聞かせるように、何度もピーコと呼びかけた。
すると、小鳥が応えるように一声鳴いた。
「フィロロロ」
おもちゃの笛のような鳴き声だった。
俺はピーコを肩に乗せて山道を下っていた。
もちろん、次の仲間を見つけるためにナビに従って歩いているのだ。
今度は“信頼できる強い人間の仲間”に条件を変更した。ピーコは大人しくて可愛いが、強いのかはまだわからない。意思の疎通ができないので確認のしようがない。
それに生まれたばかりだから俺が守ってやらなきゃ駄目だろう。
だから次こそは、頼れる仲間が欲しいのだ。
「フィロロロ~」
ピーコが一声鳴いて飛んで行った。そしてすぐに戻って来た。
口にトカゲのような生き物を咥えている。
「それ、食うのか……?」
訊いてみたが返事はなく、首を傾げている。そしてピーコはトカゲもどきを丸呑みしてしまった。
「やっぱ、食うのか……」
ピーコは肉食の鳥のようだ。まあ自分で捕れるなら手間がかからなくていいが。
それからもピーコは時々トカゲもどきを捕まえて来ては、俺に見せてから丸呑みしていた。
しかし小さな体でよく食べる。ずいぶんと燃費が悪いようだ。
俺は休憩のたびにバッグの中の黄色い実を出して食べていた。美味いが、こればかりでは物足りない。
「肉食いてぇ……」
しかし俺にはサバイバル技術はない。ネット小説では、異世界ではこういう時にウサギを狩って食べているが、俺にはウサギすら捕まえられるとは思えない。
仮に捕まえられたとしても、解体なんてできないし。
とにかく、仲間が見つかるまでの辛抱だ。
俺はひたすら山道を歩き続けるのだった。