勇者召喚
リハビリ作品です。
俺は今、見知らぬ場所で見知らぬ外国人に囲まれている。
どうしてこうなったのかわけが分からないが、幸いなことに同じ状況に陥っているのは俺だけじゃないようだ。すぐそばに近所の中学の制服を着た男子が二人パニクって「なんだよ、あんたたち! どっから来たんだよ!」って叫んでる。
すぐそばにパニクってる人がいるおかげか、俺は落ち着いて周囲を観察していた。
そしてすぐに、来たのは彼らではなく俺たちのほうじゃないかと思いたった。
それにこの状況、まるでネット小説の勇者召喚――
「ようこそお越しくださいました、勇者様方」
お姫様のような女の人がそう言って近付いてきた。もしかして、がやっぱりに変わった瞬間だった。
◇◇◇
俺には同じ高校の同学年に出来のいい従兄弟がいる。家も近所で、小さい頃から何かと比べられて育った。
小学生の頃から同じ私立に入れられた俺は『ダメなほうの柏木』と呼ばれるようになった。
成績は平均くらいなのだが、従兄弟の光一と比べると月とスッポンだ。努力なんて、とうの昔に諦めた。どうせ頑張ったって光一には勝てやしない。
そんな俺は光一と違う大学に行ければどこでもいいと思っていたのだが、親はできるだけレベルの高い所に行かせたいらしい。そこじゃないと金を出さないというので渋々受けた私立には落ちてしまった。あとはもう、光一と同じ附属大学に行くしかない。
また光一と比較されて色々言われると憂鬱な気分で家に向かっていると、前を歩いていた中学生が「うおっ!」と奇妙な声を上げた。それにつられて目を向けた瞬間、急に視界が切り替わった。
そして気がつくと外国人の集団に囲まれていたのである……。