序章2.出会い~科学者と魔法士~
2.出会い~科学者と魔法士~
横になってから数十分った頃、
私の方に人間が向かって来るのがわかった。
なぜ、人間と断定できたか。
それは簡単だ。音だ。
風に乗り、鉄のガシャガシャと言う音、
それに、複数人の話し声も聞こえたからだ。
まぁ、ここが異世界と仮定した場合は、
人間とは限らないがな。
あまり認めたくない話しだが、
ファンタジー世界には、亜人や
精霊と言う存在がいる。
前者は人類に似て非なるもの達のことで、
デミ・ヒューマンや異人と呼ばれる
種族逹だ。
代表的な種族を上げるなら人魚が
これにあたるはずだ。
後者は伝説の中に存在する種族である。
地域によって妖精や死霊等もこれに含まれる
はずだ。
有名な所では、四精霊が有名だ。
どちらにも、人語を話す個体がいるのだが、
鉄の音から察するに、鎧兜等の防具ということが、
推測でき、限りなく前者の可能性が高いと言える。
まぁ、私では人間以外を相手にすることは、
できないだろうな。
起き上がり、音のする方を向けば、
鎧兜を着た人間、数名とローブのような物を
着た人間が2名が、こちらに向かって来ていた。
どうやら、今回は人間にあたったようだ。
しかし、危害を加えられるかも知れない。
取り敢えず、持ち物を確認してみよう。
学生鞄からは持ち歩いている簡易工具、
筆記具、教科書ぐらいしか出てこない。
武器になりそうなのは、電工ナイフぐらいかしら。
電工ナイフとは、簡単に言うと、電気配線から
銅線をむき出す時に使うナイフのこと。
一応、ナイフなので人に向けてはいけません。
ダメね、ナイフは最終手段にしましょう。
電工ナイフを鞄にしまい、結果として、
話しかけられたら、色々と聞いて
見るということに決めた。
子供の頃から、他人とのコミュニケーションを
取って来なかった、私にとって、知らない人間に
自分から話しかけるなど無理な話しなのだ。
と言うことで、私は再び草原に横になって
いることにした。
***
時は少し前に戻る。
とある一団は草原に、やって来ていた。
「リア、本当にこんな所に落ちてきたのか。」
「うん、間違いないはず、反応はこの
クイント平原で消えたから。」
リアとは僕のことだ。
あ、僕って言ってるけど僕は女の子だから。
ついでに一緒にいるのは愚兄のミデア。
そもそも、僕がこんな所に来ているのは全て
この愚兄のせいなのだ。
「しかし、あれで何で召喚が起きるんだ」
「当たり前だと思うけどね。あれだけ
大掛かりの魔法を適当に発動させたんだから。」
むしろ、強制召喚だけですんでよかった
レベルだ。国先導で開発中のゲートとゲートを
つなぐ魔法だったのだが、この愚兄が勝手に
馬鹿みたいな魔力をつぎ込み発動させたのだ。
本来なら、王都の半分はふっ飛んでいても
おかしくなかった。
まぁ、召喚された側からはたまった物では
ないだろうけど。
それで、その強制召喚された人がこの
クイント平原に落ちた反応があったから、
責任を取らせる形でこの愚兄が迎えに
行くことになり、保護者兼見張りとして
僕が同伴することになった。
あと、騎士の人達数名が護衛として
ついて来ている。
取り敢えず、召喚者を探して、
事情を説明しなくちゃ。
いきなりのことであわててるだろうしね。
そんな、僕の思いとは裏腹に、
クイント平原は静かに時を刻んでいた。
自分たち以外に人の声は聞こえず、
ただただ、草々が風に揺れる音が聞こえるだけだ。
おかしい。
いくらなんでも、静かすぎる。
僕の頭に最悪の可能性が飛来する。
それは、召喚者が死亡していると言うことだ。
正規手順の召喚なら、そのようなこと
起こりえないが、今回は、魔法暴走による
強制召喚だ。
過去に強制召喚が起きた際、数件だが、
召喚物の欠損、破壊が確認されている。
それがもし、人の身に起きたなら召喚者が
無事であるはずがない。
僕は、辺りをくまなく探すよう、
騎士達と愚兄に指示を出し、僕自身も捜索を
開始する。
いくら兄を愚兄と嫌っても、身内が人殺しの
汚名を受けるのは勘弁してほしいしね。
そして、僕は見つけた。
草原に眠るように横たわる女の子の姿を。
とにかく、生死の確認をしなくてはと
駆け寄り声をかける。
「あの、大丈夫ですか。」
そんなことしか言えない僕に予想外の
言葉がかえってきた。
「ふむ、ようやく話しかけてきたか。
まぁ、いい。
話しかけられるまで待ったのはこちらだしね。」
彼女は起き上がりながら、言葉を紡いで行く。
「さて、さっそく本題に入ろうか。
私の身に何が起きたのか、科学的に説明を
してもらおうか。」
彼女はそう言い、静かに笑みを浮かべた。
これが僕、魔法士 ネムリア=フォーレストと
科学者 御神楽 二冬の出会いだった。
この出会いが、今後の僕の運命を変える物と
なった。