昔話
今日は学校帰りに綾のところに行く日である。
白神も連れて行くため俺は今、白神を待っているところである。
「おーい、才覚くーん。」
学校一の美少女白神が俺の名前を呼び、俺のところに走ってきている。
普通の男子なら喜ぶであろうシチュエーションだが、俺は全く嬉しくない!
確かに白神は可愛いと思うが、うっとうしすぎる。
何かと質問してくるし、仲間外れにするとすぐ怒るし…etc。
「才覚君? 何考えてんの? 志帆ちゃんが待ってんだから早く行くよ!」
そういえば小学校にいる志帆を迎えに行くんだった。
俺と白神はすぐ近くにある小学校へと向かった。
途中白神が質問してきた。
「この前わけあって志帆ちゃんを預かってるって言ってたけど、そのわけって何なの?」
そういえばそんな話もしたな。
「そうだな、白神は一応助手だからちゃんと話とかなきゃな。志帆と一緒にいる理由とあの男と何があったかを。」
白神は黙って頷いた。
「まぁ記憶を消されてるわけだからほとんどあの男と出会ってからの事しかわからねぇけどな。」
また白神は黙って頷いた。
「俺は最初眠らされていた。研究室みたいなところでな。そこに志帆と綾も一緒にいた。もちろんあの男もな。そこであの男に記憶を奪った代わりに能力を与えたと説明を受けた。話が終わるとあの男はどこかへ消えてしまった。志帆はその時まだ9歳だったから俺か綾が預かるしかなかった。一度綾に預かってもらったんだか話した通り引きこもりになってしまったから俺が引き取った。これで一通りは終わりかな。」
話終わると小学校についていた。
俺は蝶々の記憶を見ている志帆を見つけると、そちらへ向かった。
「ホント志帆は小学生のくせにすごいやつだよ。」
志帆の頭を撫でながら言った。
すると小さな声で白神が言った。
「才覚君も十分すごいよ。」
白神の瞳は夕日に照らされてか少し輝いていた。
「どうだかな? それより早く綾のところに行こうぜ、日が暮れちまう。」
「うん! 記憶戻るといいね。」
「そうだな…。でも記憶が戻ったらお前らのこと忘れるかもな。」
「もしそうなったら私の拳で思い出させてあげる。」
実際のところ記憶が戻ったら今の記憶はどうなるかはわからない。
だから思い出を作らないほうがいいのかもしれない。
でも白神と一緒にいるのも悪くないと思った。
「これからも助手としてよろしく頼むな」
きっと俺の頬は真っ赤になっているだろう。
「才覚さん、わかりました!!」
白神は笑顔で敬礼をした。
横で志帆も「したっ」と一緒に敬礼をしていた。