黒幕
事件に向かう途中、依頼人から事件に関して詳しく聞いた。
まず殺されたのは依頼人である加藤達也さんの弟、加藤文也さん。
兄である達也さんが文也さんを訪ねたところ
死体を発見。
午前8時頃だったらしい。
現場に到着すると警察がすでに来ていた。
俺は構わず入ろうとすると白神に止められた。
「勝手に入って大丈夫なの?」
また余計な心配を。
「大丈夫だよ。警察には貸しがあるからな」
「貸しってなに?」
「前にも記憶殺しの依頼よりこういった事件の依頼のが多いって言ったよな? 昔結構な事件を解決してやったもんだから警察は俺に頭が上がらないんだよ」
「ふーん。才覚君ってけっこうすごいんだ」
「まあ警察は俺の事を歓迎してないがな」
すると後ろから声がした。
「これは、これは、才覚さんではありませんか。今回の事件もあなたがいればすぐ解決ですね」
めんどくさいやつが来た。
白神だけでもやっかいなのに。
「ご期待に答えれるように頑張りますよ。それでは」
俺はすぐ逃げた。
「今の誰?」
やっとめんどくさいやつが1人終わったと思ったらもう1人がすぐやってきた。
「今のは池端学、警察の人だよ。前にあいつの手柄をとってからいつもあんな感じなんだよ」
「嫌な人ね」
(お前もあんなんだよ)
「どうしたの?」
「なんもねぇよ。早く行くぞ! って志帆はどこいった?」
「志帆ちゃんならあそこでちょうちょと遊んでるわよ」
見ると志帆は座り込みちょうちょをじっと見ていた。
あれは遊んでるんじゃなくて記憶を見てるだけだな。
志帆はなぜか知らないけど動物の記憶を見るのが好きらしい。
「志帆! 行くぞ!」
志帆は後ろをトコトコついてきた。
事件現場である文也さんの家の中に入るとリビングでうつ伏せになっている文也さんの死体があった。
見たところ後ろから刺され死んだようだ。
「死体なんて初めて見たけど、じっくり見るもんじゃないわね。気持ち悪くなってきた」
白神のことだから死体ぐらい平気だと思ったがダメなんだな。
「これくらい慣れてもらわなきゃ俺の助手としてやっていけないぞ」
ちょっといじめてやった。
「わかってるわよ!」
怒られてしまった。
「冗談はさておき本題に入ろう。志帆、頼んだぞ!」
志帆は頷き死体のそばに行った。
1〜2分くらいで戻ってきた。
「どうだわかったか?」
志帆はまた頷いた。
「誰が犯人だ?」
「犯人は…文也さんが働いている研究所の人。なにかのデータを取り合って殺されたみたい」
(なにかのデータ?)
怪しい感じになってきたな。
「達也さん。文也さんが働いている研究所はなんの研究をしているのですか?」
「脳に関わる研究をしている。被害者のことは事前にもっと調べておくべきではないかな?」
達也さんが答える前に池端が答えた。
「そうですね。アドバイスありがとうございます」
「いえいえ、これくらい当然な事なので。それでは」
池端が去って行く時、俺の後ろで白神と志帆が池端に威嚇していた。
(お前ら仲良いな。それにしても脳に関する研究か。少し気になるな。研究所に行ってみるか)
「おい! お前ら行くぞ!」
研究所に行く前に池端をからかっておくか。
池端に話しかけるより先に話しかけられた。
「どうしたんだい? またアドバイスが欲しくなったのかい?」
やっぱり嫌なやつだ。
「いえ、俺らは犯人がわかったんで先に失礼します。それでは」
あえて池端の顔は見なかったが悔しそうにしている顔が頭に浮かんだ。
文也さんの家から研究所には30分くらいでついた。
中に入ると白衣を着た女性に話しかけられた。
「なにかようですか?」
「人を探している。ちょっと失礼するよ」
俺は構わず中へと入って行った。
「志帆!どいつだ?」
すると志帆は奥の方にいた男性を指差した。
「あの人」
「あいつか!」
俺は男性の近くに行き胸ぐらを掴んだ。
「お前が文也さんを殺った犯人か。人殺しなんてかっこ悪いことしてんじゃねぇよ」
男性は明らかに動揺していた。
「は? な、なんの話だよ? 人殺し? てか君たちなんだい? ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」
「しらばっくれるのもいい加減にしろよ! 文也さんとデータの取り合いになってお前が殺したんだろ! そのデータどこにある?」
「デ、データ? なんのことかさっぱりわからんな」
「チッ、まあいい。志帆。こいつの記憶を見てデータの隠し場所を、探してくれ」
「うん」
1分後
「才覚! わかったよ! 引き出しの中! 引き出しのパスワードは3365!」
「よし! でかしたぞ志帆! 後でアメちゃんをあげよう」
「ホント!? やったー」
男性はびびりながら話しかけてきた。
「なんなんだよお前ら。データなんてお前らには関係ないだろ! なんで俺のとこに来たんだよ!?」
俺は引き出しを開けデータが入っているであろうUSBを取り出した。
「勝手にとってもいいの?」
誰かと思えば白神だった。
「大丈夫だよ。あとでこのデータに関する記憶をこいつから消せばな」
外からパトカーの音が聞こえてきた。
「おっと警察のおでましだ。今回は早かったな。そういえば質問の答えがまだだったな。なんでお前を狙うかって?」
俺は男の頭に手を当て答えた。
「俺が記憶の殺し屋でお前がターゲットだからだよ」
決めゼリフを残して記憶を消した。
急に周りが騒がしくなった。
何かと思えば警察が入ってきた。
1番に入って来たのは池端だった。
「ここからは頼みますよ、池端さん」
池端は舌打ちをし犯人のもとへ行った。
「お前ら帰るぞ! って志帆は?」
また志帆がいなくなった。
「志帆ちゃんならまだ犯人の記憶を見てるわよ」
動物だったら人間でもいいのかよ。
「おい! 志帆! そいつの記憶はもういいんだよ! 帰るぞ!」
志帆は振り向きこっちに向かって来たかと思いきや急に立ち止まり動かなくなった。
「どうした?」
俺は志帆の近くに行った。
茜は俺の裾を引っ張りながら言った。
「この人あの男に会ってる!」
あの男とは俺たちの記憶を消したやつのことである。
「なんだと!?」