質問
白神が助手を始めて1日目。
運よく今日は土曜日だ。
学校がないので昨日みたいなことにはならないはず。
昨日みたいなこととは、俺の平穏な高校生活を壊されることである。
「才覚くん!」
白神の呼ぶ声がした。
「なんか用か?」
「うん! 私、才覚くんの助手をやるから才覚くんのこと教えてほしいなと思って」
「教えることなんかなんもねぇよ」
「あるよ。その能力のこと! なんでそんな能力持ってるの?」
いきなりすごいとこ聞いてきたな。
まあ一番気になるところか。
「この能力は2年ほど前にある男から無理やり持たされた。俺の記憶と引き換えにな。だから俺には昔の記憶がない」
白神は少し静かになった。
(白神が静かになるなんて珍しいな)
「どうしたんだ? お前が黙るなんて」
白神は申し訳なさそうな顔になった。
「聞いちゃいけないことだったかなと思って」
「お前は俺の助手になるんだろ? だったら聞いて当たり前だ」
そう言うと白神は元気になった。
「じゃあもっと聞いてもいい?」
いつもの図々しい白神だ。
「ああ、いいぞ」
俺は仕方なく了承した。
「その才覚くんの記憶を奪った男は誰なの? なんで記憶の殺し屋なんてしてるの? 他に同じような能力を持った人はいるの?」
質問だらけだな。
しょうがない答えるか。
「記憶を奪った男のことはなにも知らない。殺し屋をやってる理由はその男に会えるかもしれないと思ったからだ。俺の他に能力者はいる。何人いるかは知らないが知り合いに数人いる。」
もう質問されないように詳しく答えてやった。
「じゃあ私もその男を探すの手伝うよ」
なにを言い出すのかと思ったら手伝うだと!?
さすがにそれは危険だ。
止めなくては。
「男を探す手伝いはしなくていい。お前は依頼の手伝いをしてくれればいいから」
「私は才覚くんの助手だよ? 何をするのも一緒にしなきゃ。だから手伝う」
やばい、これは助手になると言い出した時と一緒だ。
こうなると白神は引かない。
とりあえずここは従っといて、隠れて探すか。
「わかった。じゃあ手伝ってもらおう」
「任せなさい」
白神は自信満々であった。
(その自信はどこからくる? つくづくわからんやつだ)
なんて思っていたら
ガチャ
ドアが開く音が聞こえた。
「才覚、おはよ。」
入ってきたのはさっき話してた知り合いの能力者であった。
「誰この可愛い女の子は?」
白神はまた質問してきた。
「そいつは志帆。俺と同じ能力者だ。わけあって預かっている」
「それじゃあさっき話してた知り合いの能力者って?」
「こいつのことだ」
白神は興味津々になったようで、
また質問だらけになった。
「この子すごい小さいけどいくつなの? どんな能力持ってるの?」
よくもまあ飽きずに聞いてくるな。
「確か10歳だったかな」
「11歳だよ」
志帆が俺の裾を引っ張りながら答えた。
「そうなんだ! 11歳なんだ〜。でどんな能力なの?」
俺には聞かず志帆に直接聞いた。
志帆は恥ずかしいのか俺の後ろに隠れた。
「あんまいじめんなよ。俺の大事な相棒なんだから」
あまりに怯えていたのでかばってやった。
「相棒? あの他の人と接触するのを嫌がる才覚くんの?」
なんだその嫌な言い方は?
「同じ能力者なんだから一緒にいた方が何かと便利だろ?」
「確かにそうだね。で何の能力?」
どんだけ能力が知りたいんだよ。
「こいつの能力は人の記憶を見れる能力だよ。俺と同じであの男からもらい同時に記憶を奪われてる」
「大変なんだね〜」
白神は半分泣きながら志帆の頭を撫でた。
志帆は顔を真っ赤にしながら聞いてきた。
「この人だれ?」
「こいつは白神茜。無理やり俺の助手になったやつだ。めんどくさいやつだが仲良くしてやってくれ」
志帆は一瞬嫌そうな顔をし
「わかった」と返事をした。
するとまたドアをノックする音が聞こえた。
(依頼人か?)
「どうぞ」
入ってきたのは30代くらいの男性だった。
「すいません。助けてほしいんです」
とりあえず男性をソファに座らせた。
「何があったんです?」
「昨日弟の家に行ったら弟が何者かに殺されたんです」
(殺人か。けっこうな依頼だな)
「その犯人を見つけてほしいと?」
「…はい」
「わかりました。とりあえず現場に向かいましょう。詳しい話は途中で聞きます」
立ち上がり上着を羽織ろうとしたら白神が話しかけてきた。
「ちょっと待ってよ。ここって記憶の殺し屋なんじゃないの? こんな探偵みたいなことやって大丈夫なの?」
俺は白神の質問攻撃にうんざりしため息をついた。
「確かに基本ここは記憶の殺し屋だが、こういった依頼のが多いんだよ。だから殺し屋というより探偵事務所だと思っていたほうがいい」
白神は嫌がる志帆を膝に乗せた。
「そうなんだ。じゃあ私と志帆ちゃんはここで待ってようね」
志帆は白神から逃げ俺の方に来た。
「志帆も連れて行くんだよ。今回の依頼は俺の能力より志帆の能力のが使えるからな。お留守番はお前だけだ」
そう言うと白神は立ち上がった。
「志帆ちゃんが行くなら私も行く!」
白神を止めるのはめんどくさいので連れて行くことに。
(志帆がいることだしこんな事件すぐ終わるだろ)
このときはまだこの事件にあの男が関わっていることは知らなかった。