食事
「ご飯できたわよー」
白神の声が家中に響いた。
記憶をなくしているにもかかわらず白神はご飯を作ってくれた。
「悪いな、こんな時に作らせて」
「いいわよ、別に。タダで住ませてくれてるんだからこれくらいしないとね」
「タダではないんだけどな」
白神に聞こえるか聞こえないかの音量で言った。
「え? なんか言った?」
聞こえてないみたいだ。
「何も言ってないよ。てか志帆と綾はどこいったんだ?」
飯だといつもすぐ来るのに今日はまだ来ていない。
「あの二人なら私の部屋にいるわよ」
俺は立ち上がり二人の様子を見に行くことにした。
「ちょっと才覚君。どこ行くつもり?」
立ち上がった瞬間白神に呼び止められた。
「どこってお前の部屋に二人を呼びに行こうと思ってな」
「勝手に乙女の部屋に入るつもり?絶対ダメだからね!」
別に見られて困るようなものなんかねぇだろうがと思ったがこれを言うと怒らしてしまうのでやめておいた。
「わかったよ。部屋には入らねぇよ。ドア越しに呼んでくる」
「それならいいけど…。絶対に部屋には入らないでよ!」
へいへいと返事をし白神の部屋に向かった。
白神の部屋の前で止まりノックをしようとしたら声が聞こえてきた。
「どうしたら記憶思い出すのかなぁ~。志帆ちゃんなんかわかる?」
「わかんないよ。さっき記憶見たけど本当に消えてたし」
「志帆ちゃんが見てないんだったら、私の能力使っても意味ないよね」
「何かきっと方法があるはずだから。諦めず頑張る」
「うん! 絶対記憶戻してあげようね。志帆ちゃん」
俺はノックをしようとした手を一度止めた。
「もっと落ち込んでるかと思ったが心配なさそうだな。俺ももっと頑張んなきゃいけないな」
ボソッとそう言い、一度止めた手を再び動かしノックをした。
「お前らご飯だぞ〜。早く来ないと白神がブチ切れるぞ〜」
俺を頼ってくれない寂しさから少し意地悪してやった。
「やばいよ志帆ちゃん! 茜ちゃん怒ったら絶対恐いやつだよ!」
「大丈夫。茜怒ってないから」
志帆が俺の後ろにいて俺の記憶を見ていた。
「おまっ、いつのまに!?」
「私に嘘は通用しないよ。あと心配しなくても才覚を頼るつもりだったから安心して」
そう言うと志帆は白神のもとへ向かった。
「あっ、待ってよ志帆ちゃん!」
志帆を追って綾も白神のもとへ。
「志帆のやつ…実は俺より年上なんじゃ…」
なんてバカなことを考えてると白神の声が聞こえた。
「才覚君! なんで呼びに行った人が遅いのよ! 早く来て!」
「やば。マジでブチ切れたじゃん」
冗談が本当になってしまったようだ。
俺は急いで向かった。




