依頼
俺の名前は才覚勇記。
都立正京高校に通う高校二年生。
趣味は人殺し。
そう俺は殺し屋である。
殺し屋といっても本当に人を殺すわけではない。
思い出を殺す。すなわち記憶を消すということだ。
全部消すのではなく依頼主の情報だけを消すのである。
ところで今俺の目の前にいるこの女性、この人が今日の依頼主である。
「記憶を消してほしい人がいるんです!」
女性はソファに座るなり怒鳴るように言ってきた。
俺はとりあえず女性を落ち着かせるためコーヒーをだした。
「では、まずあなたの名前と年齢を教えてください」
女性は少し落ち着いた顔になりしゃべりだした。
「白神茜、十七歳です」
まさかの同い年だった。こんな若い女性からの依頼は初めてだ。
しかもよく見るとどこかで見たことがある制服を着ているし顔も見たことがある。
俺はもしかしてと思い、聞いてみた。
「十七歳ってことは高校生ですよね? どこの高校に通ってるんですか?」
「都立正京高校ですが。」
悪い予感は的中した。こいつ俺と同じ高校だ。
だか問題ない俺は学校では静かに暮らしている。
俺のことを知ってるやつなんているわけない。
いや一人だけいる。
まあそいつの話はおいておこう。
そんなことを考えていると白神が話しかけてきた。
「あれ?もしかして才覚君?」
俺はドキッとしたこいつなぜ俺のことを知っている?
「私だよ! 私! 同じクラスで学級委員の白神!」
そうか! どうりで俺のことがわかるわけだ
同じクラスでしかも学級委員なら普通クラスのやつ全員覚えているからな。
本当なら今すぐ帰ってもらいたいが大事な依頼主だ。しょうがない。
「それで学級委員の白神さんが何のようですか?」
すると白神は呆れた顔になり言ってきた。
「だから、記憶を消してほしい人がいるんだって!」
知り合いとわかるとさっきまでとは違い馴れ馴れしく言ってきた。
そのことにちょっとイラっとしたことは秘密だ。
「詳しく教えてくれ。なんで記憶を消してほしい?」
そっちがその気ならと俺も馴れ馴れしく言ってやった。
「最近変な男につきまとわれてて警察に通報するのも嫌だったから相談しに来たの」
なるほどストーカーってことか。
白神ほどの美少女ならストーカーされて当たり前か。
確か学校一の美少女とか言われてるんじゃなかったか?
俺には関係ないけどな。
「ってことはそのストーカーさんの白神にまつわる記憶を消せばいいんだな」
「うん…それでストーカーはいなくなるよね?」
心配そうにして言ってきた。
意外に心配性なんだなと思い。
「白神についての記憶を消すわけだからな」
そう言うと白神は安心したのかコーヒーを一口飲んだ。
「明日だ! 明日記憶を消去しに行く」
白神は慌ててコーヒーを置いた。
「わかったわ。私は何をすればいいのかしら?」
「何もしなくていい。ただいつも通り下校してくれればな」
そう言うと白神はコクリと頷き帰って行った。