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◇
「あ~……疲れた……」
泊り込み一週間に及ぶ遺跡の調査。
薄汚いコイン一枚の発見。
剪定蟹の大群からの逃走。
落下した川での寒中水泳。
そして、今さっきまでの猫耳娘とのやり取り。
……流石に疲れた。
今日は肉体的にも精神的にも、ここ最近で最も辛い一日だった……そう言えば、まだ昼飯も取っていない事実を思い出す。
グゥ~~……
(くそう、思い出したら腹減ってきた……)
空腹に唸る腹を手で押さえつつ、俺は今出てきた建物を振り返る。
木造で新しく、大きく立派な佇まいと、それに見合った巨大で重厚な両開きの扉。
その扉は頻繁に開閉を繰り返し、現在進行形で多くの人々を飲み込んでは吐き出すを繰り返している。
扉の上部には高く掲げられた左腕と、その左手が握る獣の眼球が画かれた看板が、自己主張激しくデカデカと鎮座していた。
〈黄金の瞳〉――其れが、この組織の名称だ。
(相変わらず此処は盛況だな)
略して“金目”とも呼ばれるこの組織は、大陸六ヶ国が協力して創り上げた連合組織――通称〈遺跡発掘世界機構〉の下部組織であり、その活動内容は遺跡の発掘と調査、管理と監視が主だ。
他には、俺達のような“下請け”発掘者からの発掘物の買い取り――つまり俺達にとって、此処はいわゆる一つの“お得意様”という訳だ。
〈黄金の瞳〉の創設理念は、遺跡で発見された発掘物の“平和利用”。
その為、発掘物の密売や悪用を防止する為の処置として、俺たち発掘者は皆ココに登録しなければ、遺跡での発掘作業が許可されない。
……あくまで“基本的”には、だが。
(しっかし、昔と比べて“宝探し”も随分と堅苦しく成ったよなぁ)
〈黄金の瞳〉は設立からまだ四年程しか経っていない若い組織だ。この町にこうして支部が建てられたのも、まだほんの二年前でしかない。
それまでは気ままに盗掘――もとい、発掘作業に従事していられたのだが、“決まり”が出来たお陰で“制約”という縛りも受ける事に成った。
多少窮屈に感じる時も在るが、逆にこれ迄になかった“支援”と言うモノも受けられる様に成ったので、それはそれで在り難く活用させてもらってる。
(ま、痛し痒しってトコか)
「さて、帰るか」
「レイド~」
「お?」
思考に一旦の区切りをつけ、看板に向けていた視線を外して帰ろうとすると、背後から聞き慣れた呼び声が近づいて来た。
振り向くと、其処には予想通り俺の小さな相方の姿が有った。
「終わった~?」
「おう。何だ、まだ帰ってなかったのか。先に戻ってろって言ったろ」
「ん~、何となく待ってた」
「何となくって、あれだけずぶ濡れに成ったんだ、早く着替えないと風邪引くぞ」
「大丈夫だよ~。今日天気いいから服乾いたし」
「ああ、最近暖っけーからな。日に当たってりゃ乾くか」
河の水はまだ冷たかったが、気温自体は割りと高い。だが、先程まで屋内に居た俺は未だずぶ濡れのままだ……早く着替えたい。
「取り合えず帰ろうぜ。いい加減今日はもう疲れたわ」
「う~い」
そうして、俺達二人は並んで帰路へと付いた。大勢の人が行き交う町の中央通を、共に慣れた足取りで進んで行く。
「シュルちゃん居た~?」
「そりゃ居るだろ、仕事なんだから」
「じゃあ幾らだった? あの薄汚いコイン」
「薄汚いとか言うな!……二束三文だとよ」
「ありゃ~」
「だもんで今回は見送りだ。どっか良い売り先見つけねーと」
「見つかると良いねぇ~」
「見つけるんだよ……つか他人事じゃないからね、このままだとお前も水と塩だけの生活だからね」
一緒に暮らしている以上、俺の生活苦はこいつの生活苦でもある。そう悠長にされても困るのだが……。
「……ねぇレイド」
「何だ?」
「それなら~、いっそ塩水にしたほうが早いんじゃないかな~?」
「そう言う問題じゃないからね!」
この、何処か抜けていて緊張感の感じられないお子様が、俺の発掘仲間であり大抵の行動を共にしている相方――名前は〈フール・フレイ〉
コイツと出合ったのは今から三年ほど前、路地裏の瓦礫の隅でボロボロに成っていたコイツを、偶然通りがかった俺が見つけたのが切っ掛けだ。
その時は別に犬猫のように拾って飼うつもりなどなかったのだが、以来懐かれて一緒に暮らすように成った。
意外なことに年齢は十五。俺と同じ“常人”だが、その見た目は同年代の奴等と比べ明らかに小柄だ。
俺が担ごうと思えば楽に担げる体重しかなく、身長も頭が俺の胸元に届くかどうかの高さしかない。
しかも病的という程ではないが、色白な肌に華奢な体躯。透けるような水色のショートヘアに整った顔立ち、大きくて澄んだ紫眼も相まって、その風貌は何とも可愛らしいお嬢さん。
馬子にも衣装で着飾れば、何処かの貴族のご令嬢と言っても遜色なかろうといった具合だ。
そう言って容姿について評価してやれば、当の本人も満更ではないらしく素直に喜ぶのだが……正直、それはどうなんだ?
いや、別にコイツの容姿を否定するつもりはない。俺はコイツの相方だが、贔屓目なしでもその容姿は一般レベル以上に可愛いと思う。
だが、毎度初見の相手から“美少女”と呼ばれて喜ぶのは、本当にどうかと思うのだ……。
ドンッ
「わうッ」
「危ね!」
フールと並んで歩いると、不意に前から歩いてきた大柄の男とフールの奴がぶつかった。
男の方は小石でも蹴り飛ばした程度の感覚だろうが、フールからしたら牛の突進でも受けた位の衝撃だったろう。
男からの衝撃を右肩に受け、その場でクルリと一回転して倒れそうに成る相方を咄嗟に支える――が、拍子にフールの帽子が地面に落ちてしまった。
「オイ! 気を付けろよ!」
「ん? おお、ぶつかっちまったか。大丈夫か嬢ちゃん?」
「ういぃ~、ダイジョウブ~……」
「そうか? 悪かったな。嬢ちゃんも気を付けろよ」
そう言って、大柄な男は直ぐに人混みの中へと紛れてしまった。
人にぶつかっておいて随分とアッサリ居なくなったモノだが、この辺りには所謂“荒くれ”が多い。
謝りもせず無言で立ち去る処か、逆に悪態を吐いたり言い掛かりをつけてくる輩も少なくないので、今の奴はまだマシな方だ。
「ったく。ほれ、しっかりしろ」
「ういうい。平気~」
「ほれ、帽子も」
「ありがと~」
フールがちゃんと立てた事を確認し、足下に落ちた帽子を拾ってやる。
渡された帽子を受け取ると、フールは表面に付いた埃を軽く払い、再びそれを被り直した。
「よし」
「あと手ぇ出せ」
「うい」
「逸れると見付けるの面倒臭ぇからな」
「そうだね~。えへへ~」
「……何で嬉しそうなんだお前は?」
そういうと俺たちは互いに手を繋ぎ、今度は俺が先導する形で大通りを進み始めた。
しかし、本当にこの辺りは活気で満ちている。フールのような小柄な奴が一人で来る様な場所じゃない。
比喩などではなく、下手をすれば本当に周りの連中に踏み潰されてしまうほど、ここは大勢の人間でごった返している。
「この町も賑やかになったね~」
「そうだな。賑やか過ぎるくらいだ」
「あ、見て見てレイド。ほら」
「ん? ああ、“自走輪”か、最近じゃ大して珍しくも……ゲ」
フールの指差す方を見てみると、今居る通りの中央を一台の“自走輪”――“牽獣を使わずに動く車”が、徐行しながら進んでいるのが見えた。
少し前では滅多にお目に掛かれない代物だったが、ここ数年で随分と数が増え、最近じゃあ頻繁に見かけるように成った。
そしてその荷台には、大きな檻の中にギュウギュウに詰め込まれた、大量の剪定蟹の姿が見える。
自慢の鋏が使えないようロープでグルグル巻きにされ、檻の中で窮屈そうにしている姿は多少哀れではあるが、先刻の遺跡での件も在り、正直今は余りお目に掛かりたくはなかった。
やがて剪定蟹を乗せたその自走輪は、そのまま〈黄金の瞳〉の裏の敷地へと入って行く。
恐らく、何処かの“怪物狩り”グループの獲物だろう。〈黄金の瞳〉では遺跡内での取得物全般、“遺跡怪物”ですらその取引の対象となる。
多分アレだけで今回の俺達の稼ぎの百倍、いや千倍、いや万倍はするだろう……くそぅ。
「チッ……ほら、もう行くぞ」
「う~い」
大陸西側の辺境に位置するこの町〈メルトス〉は、種族人種も様々、体系体格も様々、老若男女もお構いなしに全世界から多くの人間を受け入れ、近年稀に見る急速な発展の真っ最中だ。
この町に来る人間の殆どは、町の近くに在る遺跡目当てでやって来る。
ひと昔前までは遺跡なんて見向きもされなかった――と言うより、皆遺跡という物を危険視、もしくは神聖視する傾向が強く、自分からすき好んで近付こうとする奴は、ほんの一握りに限られていた。
……俺や、俺の親父とかな。
ところが今から六年前。ある出来事が切っ掛けで遺跡その物の“価値”と言うモノが、世間一般に広く知れ渡ってしまった。
その結果、それまでは多くなかった“発掘者”“盗掘者”“怪物狩り”の数が急激に増加。世界中にある遺跡が、そいつ等の手によってこぞって掘り返される様に成った。
俺を含め、以前から発掘を生業にしていた連中からしたら、それは商売敵の激増に他ならない。まったくもって迷惑な話である。
しかも、普段は何処に在るとも知れない大型の遺跡が、この町の周りだけでなんと三つも存在している。
今の処そんな町は、世界中の何処を探してもこの町以外には在り得ない。
生活環境の整備された宿泊施設が在り、その近くに豊かで絶好の稼ぎ場が存在し、尚且つ物品の需要と供給が管理されているとなれば、もう其処に人の集まらない道理はない。
多くの人間が集まれば資金の流れは活性化し、その場所は経済的に豊かに成る。そして豊かに成った場所には、その恩恵を受けようとまた多くの人々が押し寄せるように成る。
このメルトスの町は今まさに、“遺跡発掘”と言う名の“黄金時代”を迎えている訳だ。
◇
トントントン、カンカンカン
「しっかし、どーすっかなー」
〈黄金の瞳〉のある町の中心部から離れ、先程まで居た中央通りから二~三本通りを外れるだけで、人の姿は随分とまばらに成る。
トントントン、カンカンカン
と言っても、活気が完全に無くなる訳じゃない。さっきから聞こえるこの音は、そこら中の建物の間を行き交う鳶職の鳴らす工具の音だ。
ここ数年で町の人口が一気に増加した為、それを受け入れる為に町の規模も徐々に拡大し続けている。
新しい建物の建造や元から在った建物の増築と改築が、常日頃から町の至る所で盛んに行なわれているのだ。
今ではもう、この木槌を打ち鳴らす音が日常化してしまっているので、たまの祝日や休日などで大工達が休んだりすると、その静けさに逆に居心地が悪くなったりする。
「ん? 今日の晩ごはん?」
「違うよ! いやまぁ、それも考えないといかんとは思うが、俺が悩んでるのは今後の方針だ。今後の方針」
「発掘の?」
「ああ」
(本当に、どうしたモンかねぇ……)
何度も言うが、今回の一件はかなりの痛手だ。
遺跡内への通行料に発掘に必要な品の調達資金。燃料や食料など消耗品の買出しに、果ては今住んでいる場所の家賃等々。ここ一週間分の必要経費の出費は、決して軽いモノではない。
中でも一番痛いのは、あの蟹どもから逃げる際に発掘に使い回せる備品。テントやリュック、調理器具などの装備一式を全部遺跡内に置いてきてしまった事だ。
置いておいた処で腐る様な代物ではないのだが、あれだけの数の剪定蟹が通った後だ、今頃は恐らく全て奴等の“腹の中”だろう。回収は諦めた方が良い。
(ま~たイチから装備を整えないといけねぇのか……)
「ハァ……頭痛ぇ」
〈黄金の瞳〉での買取価格が安かった為、あの場ではシュルシャにコインの卸しを渋りはしたが、仮に〈黄金の瞳〉以外の買い取り先を見つけられたとしても、そうそう良い値は付かないだろう。
今回の赤字分をあのコインで帳消しにする事は、どうやった処で出来そうにない。
そもそもの話し、〈黄金の瞳〉以外であのコインが売れるとも限らない訳だが……。
「お金もうないの? すっからかん?」
「いや、まだ有るっちゃ有るんだが……」
そう、今回の発掘は赤字だったが、それを差し引いてもまだ貯蓄分の資金が幾らか残っている。
(問題はその残りの金をどう使うか、なんだよなぁ……)
もしまた装備一式を揃えて発掘に出向くとしたら、恐らくその時点で確実に残りの資金は底を突く。
なので、その状態でまた赤字なんぞ叩き出そうものなら、水と塩だけの生活処か、下手をすれば今住んでいる場所からも追い出されかねない。
だがその反面、もしお宝の一つでも発見できれば、今回の赤字は愚か今後一~二ヶ月は余裕の有る生活だって送れる可能性が在る。
賭けの要素が大きくハイリスクではあるが、同時にハイリターンな選択だ。
「う~ん、じゃあまた“マスター”の所でバイトでもする?」
「それでも良いんだけどなぁ、あそこはあそこで人使いが荒ぇし」
“マスター”とは、俺達の知り合いが経営してる酒場の“主人”の事だ。
俺の親父とも古くからの付き合いで、何かにつけて色々と融通を利かせてもらっている。
金の無心をした処で決して首を縦には振らないが、食事代をツケにしてくれたり、余りに金に困った時は自分の店でバイトとして働かせてくれたりもする。
……ただし、人使いは滅茶苦茶荒い!!
一度店の制服に腕を通そうものなら、使える物は死んだ親でも使うのではないかという程に徹底的に使役される……主に俺が。
なので、何故かいつも俺だけが、一緒に働いているフールや他の従業員とは明らかに待遇が違うと言う理不尽を味わう羽目に成る。
まぁ金払いが良いので文句は言わないのだが、もしコレでバイト代が安かった場合、仮に相手があのマスターだとしても俺はストライキを起こすだろう。
……多分。
流石に遺跡でお宝を見つけるより儲けは少ないが、俺達がこの町で確実に資金を稼ぐには、あそこが一番最適な場所なのは間違いない。
「どーすっかなー」
「かな~」
そうしてグルグルと思考を廻らすのだが、結局最後には最初の台詞を繰り返してしまう。
手段は限られているのだが、どうにも決め手に欠けるのだ。
(……お、そうだ)
とは言へ、このまま延々と悩んでいても埒が明かない。
「コイツで決めてみるか」
俺はズボンのポケットから例のコインを取り出すと、それを右手の親指で空に向かって弾き上げた。
キーーン
独特の高い音を鳴らして打ち上がった銅製のコインが、その身に日の光を鈍く反射させながらクルクル回って俺の手へと戻って来る。
「なに決めるの?」
「いやな、金のない俺達が選べる選択肢っつったらもう二つしかねぇだろ? 遺跡発掘で“一攫千金”を狙うか、それともマスターの酒場で“コツコツ稼ぐ”か」
「それとも~……“夜逃げ”するとか?」
「まさかの三つ目!? つか、その段階だともう選べる余地が無ぇだろッ! まだそこまで行ってねぇよッ!!」
「“まだ”なの?」
「……」
何故にコイツは、何時も俺が考えない様にしている事実を坦々と突きつけてくるのだろうか……。
「……よし、この掠れた絵の面が“表”、文字っぽいのが描かれてる面が“裏”だ。表なら“遺跡発掘”、裏なら“酒場でバイト”な」
「あ、ごまかした」
「ハッハッハ。ヌァンノコトカナァ? 行くぞ! 運命のコイントス!!」
ッキーーーーーン
先程よりも強く高く澄んだ音を鳴らしながら、晴れた大空に向けコインが打ち上がり、その軌跡を追って俺とフールの首が反り返る。
目では捉え切れない高速で回転するコインは、その残像によってもう光の透ける球体にしか見えない。
やがて、一番上まで到達した球体が失速し、空で輝くもう一つの球体と重なった。
瞬間、強烈な光にコインを見失なってしまうのだが、どうせ後は真下に居る俺の下へと戻って来るだけ。何の問題もない。
……と、思っていたのだが――
バサバサァ
「クワァーー」
パク
「「へ?」」
ゴクリ
「クワァーー」
バサバサァ
「「……」」
…………えーと、今、起こった事を、簡単に説明すると、だ。
一、コインを打ち上げた。
二、デカイ鳥が現れた。
三、鳥が空中でコインを飲み込んだ。
四、そのまま飛び去った。
五、俺達唖然。
「…………食べられちゃったね」
「ノオオオオオオオオ!!!」
(なんてこったーーーー!!!)
何だ!? この運命の悪戯がこじれて大事故に繋がった様な有様は!? 幾ら何でも在り得ないだろ!!
「お、おれたちの、い、いっしゅうかんぶんの、かせぎがぁ~……」
「レイド、レイド~、台詞がひらがなに成ってるよ~」
いや、台詞が平仮名に変わる程度なら寧ろマシな方だ。
今の俺なら、あまりのショックに自分の黒髪が白髪に成ってると言われても驚かない。と言うか、驚く気力すら湧かない。
「ああ……」
飛び去る鳥の後ろ姿に手を伸ばすも、無論その腕が相手に届くことはない。
俺達の一週間分の苦労をたったの一飲みで自分の胃袋に納めたその鳥は、何処までも続く青空の中で羽ばたきながら、町の上空を悠々と飛行して行く。
体から力が抜け、後悔ばかりが先に立つ。
どうして俺は、これから先の方針を、あんなコイントスなんぞで決めようと思ってしまったのだろうか。
しかも、何で選りにも選って、あのコインを使おうと思ってしまったのだろうか。その結果、コインは見事鳥の餌……。
(神さま、俺、何か悪い事したんでしょうか……?)
しかし、幾ら嘆き悔やもうとも、コインと鳥は既に手の届かない遥か上空。
鳥と同じ羽も無く、二本の腕と二本の足しか持たない只の常人である俺には、あの鳥に追いつきコインを取り戻す事など夢のまた夢。
今の俺に出来る事と言えば、このまま諦めて家に帰り、これから毎晩寝床の枕を悔し涙で濡らすこと位しか――
「な・ん・て、諦め切れるかーーーーー!!!」
次の瞬間、俺は脱力しきった身体の筋肉を一気に凝縮。前のめりに倒れかけていた姿勢をそのままに、反射的に生み出された力の全てで地面を思いきり蹴りつけた。
「むぁたんかいソコの鳥イィーーーー!!」
「レイド~」
「お前は先帰ってろーー!!」
「うい~、気を付けてね~」
自分でも驚く強力なスタートダッシュによって、俺の身体は一気に加速。
腕と足とを全力で動かし、俺達の稼ぎを奪ったあの憎き輩をとっ捕まえる為、俺は猛然と泥棒鳥の追跡を開始した。
「ヌゥゥンオオオオオオオオオ!!」