楽園の戦場、黒白の狭間
「南島」「青々とした葉の向こうに見える眩しい砂浜」が印象的だったんです。
鋭く伸びた枝葉を掻き分けて、必死に走ってたどり着いた場所。
暗い木々の間から漏れる数多の光の先を、僕はただ見つめていた。
青々とした葉に跳ね返る陽光。砂浜に寄せては返す波。
ここ南島の海は目に眩しく輝き、その青もまた、強烈に僕の心を揺さ振った。
物理的に、胸を突き刺してくれればよかったのに。そしたらきっと、その痛みで僕は死ねただろう。
しかし視界に映る色はすべて、僕をやさしく包み込もうとした。それがひどく衝撃的で、涙なしにはもう、僕は立っていられなかった。
島の端の海辺は生きる色で満ちていた。何もかもがエネルギーでいっぱいだった。
なんて対照的なのだろう。島のもう一方は何も誰も生きてやいない。
僕の服はもうボロボロだ。黒く変色して、ああ、手もこんなに汚れている。
傷痕が痛む。よく生きている、そう思う。戦場では国のために死ぬことが美なのだ。戦友よりも死に後れるのは恥。だから、生き残るなんてアリエナイ。……なのに、僕はここにいる。気が付いたら戦場から抜け出していた。怖くて怖くて仕方なかった。死と隣り合わせなのが、死ねと言われることが恐ろしかった。
国許から遠く離れた地までやってきて、何のために僕たちは戦っていたのだろう?
負け戦なのは、最初からもう目に見えていた。国のため? 皆のため? 答えるのは意外と容易い。誰もがそう、信じ込んでいるのだから。
でも、この景色を見てしまったら。
なんて僕たちは愚かなんだろうと思わずにはいられなくて……。
国を捨てる?
そうじゃない。
皆を捨てるのか?
違う。
己の命大事さに――違う!
国を疑うのか?
それは罪だ。
涙が、止まらない。
僕は後ろを、暗く戦場へと続く道を振り向けない。
前を、海辺を向いて目を開けることもできない。
どちらか一方の景色をまたもう一度目に入れてしまったら、僕はきっとその光景から逃げ出せなくなるだろう。
生か死か。
僕は今、その境界の上に立っている。
この話はあくまでフィクションです。
しかし、この話の舞台はフィリピンとかそこらへん(曖昧)ですが、
実際戦争は行われたんですよね。
こういうタイプのものを書くとき、本当の戦争経験者は何を思うのか気になります……。




