1/3
無色痕
北の、陽の当たらない島。年中灰色の雲が立ちこめている。起伏の多い地形には雨水が溜まり、土は湿り、わずかに青い芝生が生えるのみ。水は暗く濁り、飛ぶ鳥の声はどこか悲しく聞こえ、重く薄暗い景色は永遠に晴れることはない。
かつて、ここは戦地だった。
多くの人間が命を落とした。彼らは未だこの地で眠り続けている。故郷にも帰れずに。
小高い丘の上にそれはあった。
たった一ヶ所。小さな石が積み上げられていた。
墓標。
二千人もの魂を弔うには、あまりに小さい……。
傍に花が咲いていた。実に小さな黄色い花だった。
暖色。なんて似つかわしくない色だろう。
暗い景色の中で輝くには寂しすぎ、その光はやさしすぎる。
邦人のいない島。
その手向け花は誰の手によるものだろう。
「北方にある灰色の島」をイメージして書きました。
実在する島です。(確か…)
多くの方が戦地に赴いてそのまま故郷に帰れず、小さな石で積み上げられた墓標(の代わり)があり、小さな花が咲いていた――というのは事実です。




