魔女だと言われ婚約破棄されましたが……もう何も気にせず、自分にしかできないことをやりながら生きていきます!
「お前のような魔女、俺は愛さない! よって、婚約は破棄とする!」
婚約者である彼アンダットはこの国の第一王子。
だが自己中心的な性格だ。
そのため、一度思うと別の視点を持ってみようと考えることは一切なく、自分の考えがすべてと考えて激しく主張してくるのだ。
「リーベリア、お前、魔女なのだろう?」
「どういうことですか……」
「とぼけるな!! 聞いたぞ、治癒魔法を使える女だと」
そんな彼は今、私が魔法を使えるという事実に敵意を向けている。
とはいえこれは隠してきた話ではない。
そういった事情を含めて王子の妻となることが決まったのだ。
ただ、それでも、彼はどうしても納得できないようだった。
「そのような怪しい術を使う女と結婚するなど絶対に嫌だ!」
「あの……ですが、その件は、婚約する際にお伝えしていましたよね?」
「ああ、一応聞いた。だが冗談だと思っていた。そんなことあるわけがないと思っていたからな」
「知っていて婚約したのですから、それを理由に婚約破棄だなんて今さら過ぎて不自然なお話です」
事情を聞いて婚約したのだから今さらそれを理由として関係を終わらせることなんてできないはず。にもかかわらず、彼は平気でそういうことをしようとする。あまりにも子どもじみた行動だ。自分のわがままを私の責任だと言っているようなものではないか。
「ですので、私に非があるとしての婚約破棄はできません」
「ぐっ……」
「もちろん、アンダット様がどうしてもと仰るなら、そちらの都合での婚約破棄として話を進めていただくことは可能です」
すると彼は苦いものを口にしたかのような顔をして。
「な、なら! それでもいい! 好きにすればいい! なんにせよ、俺は絶対に……何があっても、絶対、お前との婚約を破棄する!」
こうして私たちの婚約は破棄となった。
……彼側の都合で。
幸い、彼の両親からは謝罪があり償いのお金も払ってもらえたので、それ以上は求めないことにした。
王子の婚約者から普通の女へ。そう聞けば不幸なようだけれど。でも自分としては意外とそんな思いはなかった。もちろん、関係が終わってしまったことは残念ではある。が、だからといって戻りたいと涙するようなことはなかった。
終わってしまったものは仕方がない。
ならば私が今すべきことは新しい道を求め歩むことだろう。
希望を信じよう。
闇には溺れない。
光ある未来を想いながら歩んでゆきたい。
◆
あの身勝手な婚約破棄から一年半、アンダットは命を落とした。
私を切り捨てた後、アンダットは二年前くらいに知り合った女性マリエラと婚約したそうだが、それからというもの彼の周りで何やら不自然な出来事が起こるようになっていったそうで。やがて、アンダットの妹である王女が事故で命を落とし、親戚の人が急死するといった謎の事件も発生したそうだ。
で、ある時ついに、アンダットにまで不幸が降り注ぐ。
ある日の朝食時、フォークを使って食べようとして、うっかり口に刺してしまい負傷。それによって落ち込み、自室にこもっていたところ、天井の一部が急に剥がれて落ちてきて。多数の破片が身体にぶつかり、病院へ送られることとなってしまった。しかし不幸はそれでは終わらず。入院先の病院に不審者が入り込む事件が起こり、しかもその犯人に襲われてしまって、それによって彼は落命することとなってしまった。
彼の最期は、王子らしくない、実に呆気ないものであったようだ。
その後マリエラは『死の魔女』と呼ばれ、国王夫妻の命令によって拘束され、処刑されてしまった。
◆
「これは、擦り傷ですね」
「うん……痛いよ」
「では治しますから、じっとしていてくださいね」
「リーベリアさん……その、これって、本当に……いつか、治る?」
「大丈夫、安心してくださいね」
「……分かった、じっとするね、治るといいなぁ」
突然の婚約破棄から数年、私は得意の治癒魔法を使って仕事をしている。
「わ! 治った!」
「もう大丈夫ですよ」
「わーっ、すごい! リーベリアさん、ありがとう!」
「無理しないでくださいね」
「うん! 気をつける! もう走らないっ」
治癒魔法を使えば傷ついた人たちを癒せる。
だから私はこれからもそうやって働いていくつもりだ。
困っている人を救う力、として使うなら、誰も魔法を使うことを悪だとは言わないだろう。
「次の方、どうぞ」
「はい」
「どういったお怪我ですか?」
「膝です」
「では少し見せてくださいね」
「お願いします」
神様にはなれなくてもいい。ただ何もしない私ではいたくない。日々、少しずつでも、意味のあることをして生きていきたい。そしてそれが誰かのためになるのなら、それは最も理想的な形だと思う。誰かのために力を使える、誰かを支えるために動ける、そういう人でありたいのだ。
◆終わり◆




