「禁書の王」
ロストライブラリの奥で。
巨大な“何か”が、
目を開いた。
ゴォォォ……
空気が震える。
無限に続く本棚が、
軋み始める。
ページが勝手にめくれ、
大量の文字が宙へ舞い上がった。
鍵守セラ
の表情が変わる。
「……まさか」
彼女が初めて、
明確な恐怖を見せた。
クロウが眉をひそめる。
クロウ
「なんだ?」
セラは、
奥の闇を見つめたまま呟く。
「最深部封印区画……」
その瞬間。
巨大な本棚が、
内側から砕けた。
轟音。
紙吹雪。
崩れる文字列。
そして。
闇の中から、
巨大な影が現れる。
王冠。
黒いローブ。
全身を覆う、
破れたページ。
その身体は、
無数の物語の残骸で出来ていた。
そして。
胸元には、
巨大なタイトル文字。
【THE END KING】
ユイが息を呑む。
白銀ユイ
「……なに、
あれ」
セラが震える声で答える。
「禁書の王」
静寂。
ロストライブラリ全体が、
その存在を恐れていた。
アキの笑みが消える。
白紙アキ
「……最悪だ」
レンが見る。
アキは低く言った。
「“終わり”に飲まれた物語たちの集合体」
禁書の王が、
ゆっくり顔を上げる。
そこには。
顔がなかった。
代わりに。
巨大な黒いページが、
裂けるように開いている。
そこから、
無数の声が漏れていた。
『終われ』
『意味はない』
『誰も読まない』
『全部無駄だった』
ロストストーリーたちの、
絶望。
打ち切り。
忘却。
諦め。
それら全てが、
王を形作っている。
ノアが震える。
ノア
「……あれ、
私たちの」
セラが頷く。
「負の残滓です」
「希望を失い、
完全に“終わり”を受け入れた物語たち」
その時。
禁書の王が、
レンを見た。
沈黙。
そして。
世界全体へ、
低い声が響く。
『なぜ抗う』
本棚が震える。
大量の本が、
灰になり始める。
『忘れられた時点で、
終わっていた』
レンは、
白いペンを握る。
王の言葉は、
重かった。
確かに。
全部を救えるわけじゃない。
終わる物語もある。
誰にも届かないまま、
消える世界もある。
でも。
レンは、
ゆっくり前へ出た。
「それでも」
白いログが、
周囲へ広がる。
「終わりたくないって思ったなら、
まだ終わってない」
禁書の王が、
静かに黒い腕を上げる。
その瞬間。
ロストライブラリ全体へ、
終焉のノイズが走った。
【END侵食開始】
本たちが、
一斉に黒く染まる。
子供たちが悲鳴を上げる。
セラが叫ぶ。
「まずい!」
禁書の王は、
低く呟いた。
『ならば証明しろ』
黒いページが、
レンへ向けられる。
『“続きを望む意思”が、
本当に終わりを超えられると』




