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ふたりといた場所

作者: saku
掲載日:2026/04/28

私が好きになったのは、親友のことが好きな女の子だった。


親友は彼女に興味がない。むしろ、彼女の「少し好き」という気持ちが伝わりすぎて、どうしたらいいのか分からないと、私に相談してくるくらいだった。


そんな彼女と、そんな親友と、私は毎日のように話していた。


楽しいはずの時間の中で、私はずっと迷っていた。

自分がどうしたいのか、どうすればいいのか、分からなかった。


親友も、私にとってはかけがえのない存在だった。

けれど彼は、私が彼女のことを好きだとは知らない。


だから平気で、彼女の嫌なところを口にする。


その何気ない言葉が、胸に刺さる。

それでも同時に、どうしようもなく羨ましかった。


好きな人のことを、そんなふうに話せる距離にいることが。


彼女からも、親友のことをいろいろと聞かれた。

私は、少しだけ言葉を濁しながら答える。


親友が嫌がるだろうと思いながらも、

彼女と話せる時間を、手放したくなかった。


二人とも大切だった。


だからこそ、どちらにも踏み出せなかった。


少しずつ、少しずつ、

自分が分からなくなっていった。


ある日、ふとした瞬間に、言ってしまった。


「好きだ」と。


言葉にした瞬間、何かが崩れる音がした気がした。


それまで当たり前だったものが、少しずつ形を失っていく。


親友との会話はどこかぎこちなくなり、

彼女は私と話さなくなった。


当然だと思った。

彼女が私に相談してくれていたのは、信頼していたからなのだから。


しばらくして、二人は付き合ったと人づてに聞いた。


もしかしたら、私がいたから、踏み出せなかったのかもしれない。

そんな考えが、頭から離れなかった。


気づけば、私は一人になっていた。


当たり前のようにそばにいた人は、

ほんの少しのきっかけで、いなくなってしまうのだと知った。


それから、どれくらい時間が経ったのか。


ふいに、懐かしい声に呼ばれた気がした。


振り向くと、そこに二人がいた。


あの頃と変わらない距離で、並んで立っていた。


「ごめん」


親友が、少しだけ目を逸らしながら言った。


彼女も、小さくうなずく。


「……なんで、今なんだよ」


言葉にした瞬間、胸の奥に押し込めていたものが溢れた。


どうして責められるのだろう。

どうして責めていいのだろう。


私にとっては、二人とも大切で――

そしてもう、同じ場所にはいない人たちなのに。


涙で前が見えなかった。


二人は、困ったように顔を見合わせて、

それから、少しだけ笑った。


まるで、何かを送り出すように。


その仕草が、どうしようもなく優しくて、

どうしようもなく遠かった。


手を伸ばした気がした。

けれど、触れられたのかどうかは分からない。


ただ、二人はゆっくりと後ろへ下がっていく。


最後に、小さく手を振った。


そのまま、見えなくなった。


目を開けると、白い天井があった。


どこかで、規則正しい音が鳴っている。


体は重く、思うように動かない。


けれど、さっきまでの光景だけが、やけに鮮明に残っていた。


呼びかける声も、

困ったような笑い方も、

最後に振られた手も。


喉の奥が詰まる。


声にならないまま、息だけが震えた。


気づけば、頬が濡れていた。

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