表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見殺しにされた私が助けるわけがないでしょう?  作者: 青空一夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

9

 私たちは今、王妃様のサロンに集められていた。私と王太子様、それから王妃様はソファーに腰を下ろし、目の前のテーブルには菓子と香り高い紅茶が整然と並べられている。その一方で、リリアーナとルシアン様は、王妃様の正面に立たされていた。


 その光景だけで、立場の差は一目瞭然だった。


「ルシアン! お前は王太子付きの近衛騎士でしょう? 王太子をお守りするのが務めのはずです。それを、あのような臭い匂いをまき散らして歩く危険人物を、なぜ排除しなかったのです? 執務室に入れるなどおかしいではありませんか?」


 王妃様の鋭い声が、サロンに響く。


「ですが……リリアーナは婚約者の妹ですので、あまりに酷い扱いはできないと思いまして……」


 歯切れの悪い言い訳に、王妃様は一瞬、目を細めた。王太子様は呆れたようにルシアン様を見つめていた。


「……つまり、お前は王太子よりもリリアーナを優先したということですね? アレクシスの安全を第一に考えるべき立場でありながら?」


 その言葉が落ちた瞬間、空気が一段重くなる。

 王妃様の放つ圧は凄まじく、ルシアン様は蛇に睨まれたカエルのように身を縮め、額からだらだらと冷や汗を流していた。


 けれど、リリアーナは違った。

 その場の空気など意にも介さず、いつもと変わらない様子で口を開く。


「私は悪くありませんわ。だって、この香水はルシアン様からいただいたものですもの。これをつけて王太子様にお会いすれば、きっと私を好きになってくださると、そう教えてくださいましたのよ。私、王太子様をお慕いしているんです。身分だって公爵令嬢ですし、王太子妃になっても、おかしくありませんよね?」

 天使のような微笑みはここでは通用しない。


 すぐに絶対零度の王太子様の返事が続いた。

「身分だけはな。しかし私はリリアーナを妃に迎えるつもりはないよ」


「そうね、釣り合っているのは身分だけですわね。あなたのような常識のない令嬢が、王太子妃になれるわけがないではありませんか!」

 王妃様にまでそう断言され、リリアーナはさすがに言葉を失ったようだった。目にうっすらと涙を浮かべたかと思うと、謝罪の一言もないまま、くるりと背を向ける。そしてそのまま、パタパタと音を立てるような足取りで、サロンを飛び出していった。どうやら、そのまま屋敷へ帰ってしまったらしい。


(……まるで子供ね。王妃様も王太子様もいらっしゃる場で、きちんとしたご挨拶もせずに帰るなんて、普通は考えられないわ)


 王妃様は眉根を寄せながら、呟いた。

「ヴァレンティア公爵家へ、正式に抗議文を送りますわ。今回の件は見過ごせません。厳しくその責任を問い、リリアーナにはしばらく謹慎させるよう言い渡しましょう」

(さすがに今回は、お父様も庇いきれないでしょうね)


 結果として、その場に残されたのは、ルシアン様ただ一人だった。そして当然のように、王妃様からの集中攻撃を一身に受ける羽目になった。


(ルシアン様って、いつもこういう役回りよね。リリアーナにいいように利用されて、ひどい目に遭わされて……それでも懲りずに、また利用される。学習能力というものがないのかしら)


 私がそんなことを考えていると、王妃様の鋭い声が飛んだ。

「……だいたい、ルシアンは、なぜリリアーナに香水など送ったのですか! 贈り物をする相手を間違えているでしょう? 普通なら、婚約者であるセシリアに贈るべきではありませんか?」


 その言葉に、私は静かに息を吸い、はっきりと口を開いた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ