表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見殺しにされた私が助けるわけがないでしょう?  作者: 青空一夏
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/40

1 リリアーナ

 リリアーナ視点


「あぁ、もぉー、何とかしてよ、この鏡! 自分の顔を見るのは、もううんざりよ! あんなに可愛かったのに……今ではこんな姿で……忘れたいのに部屋中、鏡張りにされて、どこに視線を向けても自分の顔が映るじゃない」


(こんなに醜くなって……気が狂いそう……)


 ここに幽閉される前は、半年ほど地下牢にいた。そこには鏡もなく、外を見ることすらできなかった。その間にお姉様は結婚し、王太子妃になったとルシアン様から聞いたけれど、どうでもいい。

 塔が完成し、私はこの部屋へ移された。それからまだ三日しか経っていないのに、もう精神的には限界だった。この塔から外へ出ることはできない。大きな窓から見えるのは王宮の中庭と、そこに隣接するお姉様の薬草園。見たくもないのに、毎日王太子様とお姉様の仲睦まじい姿が目に入る。

 私に侍女はいない。代わりにルシアン様が世話をする。以前とはまるで違う態度の彼は不器用で、私の変わり果てた姿を心底恐れている。こうなる前は、あんなに優しくしてくれたのに。



 それからしばらくして、お姉様の様子がおかしいことに気づいた。ふらついている時もあったし、中庭に出ない日もある。薬草園にも何日も姿を見せず、もしかしたら病気になったのかもしれない、と思っていた。


(お姉さまにも治せない病にでもかかったのなら、ざまぁみろだわ!)


 ――そう思った数日後だった。

 王太子様に気遣われながら中庭に現れ、二人で散歩している姿が目に入った。じっと見ていると、やがて王太子様がお姫様抱っこをして、お姉様を城の中へ連れて行く。


(何なのよ! 忌々しい!)


 その後、ほどなくして。

「お茶を持ってきたよ。お菓子もね。ここに置いておくけどいいかな? 私は用事があるから失礼するよ」

 ルシアン様がお茶とお菓子を運んできた。彼は世話をしてくれるけれど、用事が済めばすぐ部屋を出て行ってしまう。私と一緒にいたくないのが見え見えよ。


「ねぇ、お姉様が体調を崩しているみたいだけど、何か知っている? あんなに甘やかされて……見ているだけで腹が立つわ!」

 私はルシアン様に怒りをぶつけた。他に話す相手などいないのだ。


 初めは口をつぐんでいたルシアン様も、私がしつこく問い詰めると、やがて渋々と小さな声で答えた。

「……あぁ、セシリアは妊娠したんだよ」


 一瞬、頭の中が真っ白になった。体が震え、胸の奥がざわつく。

「……妊娠? 嘘でしょ?」


 ルシアン様は首を横に振り、容赦なく言葉を続けた。

「王太子様は大喜びで、皆から祝福されている」


「うるさい! うるさい、うるさい、うるさい! そんな話は、聞きたくないわよ! お姉様に子供ができて皆から大事にされる話なんか……ヘドが出そうよ!」

(子供を産めば王太子妃としての地位は揺るがない。この国は性別に関係なく王位を継げるのだから)


 イライラしながら部屋の中をうろうろと歩き回り、手当たり次第に物を投げつけた。あの忌々しい鏡にも硬い物をぶつけるが、ひびすら入らない。どうやら特別な細工が施されているらしい。

 見たくないのに、怒り狂った自分の顔が鏡に映る。その醜悪さに思わず目を背けた。


(お姉様ばかりがすべてを手に入れるなんて許せない……お姉様と同じものを持てば、私だって――)


 不意にルシアン様に聞いてみたくなった。

「ねえ、私も子供が欲しいわ。私たちは夫婦なんだし、とても可愛い子を産んであげるから一緒に育てましょうよ」

 甘える口調で、にっこりと笑いかけた。


 ところが、ルシアン様はみるみる顔を青ざめさせ、後ずさりながら戸口へ向かい、何も言わずに部屋を出て行った。気がつけば、私は絶叫に近い笑い声を上げていた。


(分かっている。罪人である私が、子供を産めるはずがないことも。そしてルシアン様が決して私を抱こうとしないことも)


 ふと鏡を見ると、髪を振り乱し顔の崩れた女が無様に涙を流していた。惨めで滑稽な姿。それが今の私……。


(この顔になった瞬間、私の人生は終わったのね……もう、二度と戻れない……)


 泣きたいはずなのに、なぜか笑いが止まらない。どこを見ても自分がいる。何人もの自分に囲まれているような感覚。そのすべてが微妙に違う表情で、私を嘲るように笑っていた。


「笑うな! 鏡のくせに!」

 そばにあった花瓶を、思いっきり鏡に投げつけた。花瓶は粉々に砕け散ったけれど、鏡はびくともしない。


(あぁ……この地獄は……いったい、いつ終わるの? 綺麗だった頃に戻りたい……。お姉様より大事にされていた頃に……)


 



❀┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❀


※次回はルシアンです。彼の本音が明かされます! 更新時間は決まってないですが、明日も更新予定です!

よろしくお願いします。

❀┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❀


※次回はルシアンです。彼の本音が明かされます!更新時間は決まってないですが、明日も更新予定です!

楽しんでいただけると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ