36 エピローグ
「その子の顔、私なら治せるわよー。ほら、私は肌を再生させる働きがあるからぁー」
先日仕入れたばかりの薬草の声だった。リリアーナのようになった肌でさえ、時間をかければ綺麗にできるという。まさに魔法のような薬草。
(……でも、リリアーナを治す気はないのよ)
前世で無実の罪を着せられ、処刑された私。毒が身体を巡る苦痛。爪の間に食い込んだ土の感覚……まだ私は鮮明に覚えている。
けれどこの先は、もうあの日は思い出すことはやめよう。すべての原因となった者たちは、それぞれの報いを受ける。もちろん、私が自ら手を下したわけではない――あの人たちの自業自得……それでも、ようやく納得のいく結末を迎えられたと思う。
許しを請うリリアーナの声。
嘆く両親の声。
そしてルシアン様の縋るような眼差し。
それらを背に、私は二度と振り返らなかった。
王太子様の差し出した手を取り、その場を後にする。
中庭へと足を運ぶと、陽光を浴びて咲き誇る薔薇が風に揺れていた。
甘やかな香りに包まれながら歩く静かな時間が、これまでのすべてを遠い過去へと押し流していく。
「結婚式が楽しみだ。誰よりも幸せにするからね」
王太子様の優しい声に、私は小さく頷いた。
私たちは手を取り合う。
じっと見つめ合い、互いの距離がゆっくりと近づいていく――その瞬間。
薬草園からは、風に乗っていつもの声が届いた。
「うふふ。ラブラブねっ!」
「お似合いの二人だなぁー」
「ひゃっほーい! 雪鈴さまのウェディングドレス姿が楽しみだぞー」
薬草たちの賑やかな声に包まれながら、私は新しい未来へと歩き出す!
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彼らのその後は、番外編で書きます!




