30 名案/リリアーナ視点
リリアーナ視点
「なぜ、私がルシアン様と結婚しなければいけないの? 王命だから逆らえないなんて……こんな理不尽なことがあっていいの? おかしいじゃない!」
何度も両親に文句を言ったけれど、「誰も王命には逆らえない」の一点張りだった。
結局、私は結婚するしかなかった。
盛大な式もない。来てくれる友人もいない。
本来なら称賛と祝福に包まれるはずの私が、こんなみじめな形で結婚することになるなんて。
(ルシアン様なんて嫌よ。全然、格好良くないし、王立騎士団員でもなくなった。こんな相手に縛られるなんて、屈辱でしかない)
さらに腹が立つことは、お姉様がヴァレンティア公爵家を継ぐはずだったのに、今は私が継ぐことになったこと。当主として覚えなければならないことが多すぎる。面倒な仕事ばかり。
幼い頃から、お姉様が当主教育で、遊べないところを見てきた。だから絶対なりたくなかったのに…… 私はただ、多くの人に傅かれ、守られ、何不自由なく生きていたかっただけなのよ。
努力も責任も背負うつもりなんて最初からないわ。
(何のために可愛く生まれたと思ってるの? 男性に守られて贅沢して、楽をするための美貌でしょう? それ以外に考えられないじゃない!)
だから、ルシアン様なんて愛せない。だって、彼は私の欲しいものを、なにひとつ持っていないから。それに……簡単に手に入る男性なんて、つまらないのよねぇ……。 私は、とても不満に思いながら暮らしていた。
◆◇
ルシアン様と結婚してしばらく経った頃。
お姉様が王太子様の婚約者になったと、噂に聞いた。
(えぇーー!! なんで? なぜ、お姉様だけが幸せになるの? そこは本来、私の居場所になるはずだったのよ……)
……冗談じゃないわ。
私よりも、お姉様の方が幸せになるなんて!
そんなこと、あっていいはずがない。
お姉様は私より不幸でなければいけないわよ。
私は誰よりも愛され、誰よりも満たされなくてはならないのだから。
日に日に妬みは膨れ上がり、胸の奥で黒く澱んでいく。
お姉様さえいなければ、私は王太子妃になれたはず――これは確信になった。
私が手に入れるはずだった地位も、栄光も、全部お姉様が奪った――これが真実になった。
そして、何をしても消えない恨みに発展し、考えれば考えるほど、お姉様の不幸を願うようになった。
「そうだわ!……いいことを思いついた。王太子様との婚約祝いを持って行きましょう。妹が姉を祝うのは当然だもの」
私はすぐにお姉様へ訪問伺いの手紙を送り、その足で闇市へ向かった。
(お姉様、覚悟なさい! 必ず、不幸のどん底へ突き落としてあげるわ!)




