表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見殺しにされた私が助けるわけがないでしょう?  作者: 青空一夏
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/40

22 リリアーナ視点

リリアーナ視点



 今までのお姉様は、私が何をしても黙って微笑んでいるような人だった。それなのに最近は、王太子様や王妃様に気に入られて、まるで自分が特別みたいな顔をしている。


 だから、ほんの少し意地悪をしたくなった。たくさんの貴族たちが居並ぶ場で、魔女の疑いをかけてあげたのよ。すると宮廷医長が強く賛同した。なんと、お姉様は、あっさり研究塔へ押し込められたわ。


(このまま、出てこなければいいのよ。お姉様がいる限り、私は王太子様に近づけないもの)



 ある日のこと。

 お姉様が落ち込む姿を見たくなって、ルシアン様を誘った。彼は近衛騎士団を外され、今は第四騎士団の雑務をしている。それでも私の言うことは何でも聞くし、お姉様より私を優先してくれるところが可愛い。


「苺を摘んで、お姉様に届けてあげようと思うの。喜んでくれるかしら?」


「それはいいね。やはりリリアーナは優しい」


 苺農家で、生食用とジャム用を摘む。

 大きく熟れた甘い苺。小さく細長くて、ただ酸っぱいだけのジャム用苺。


 私は酸っぱい苺を籠に入れ、その上に甘い苺をそっと重ねた。ルシアン様は気づかない。





 そして私たちは、宮廷医の研究塔へ向かった。元気そうなお姉様の様子にがっかりした。苺の籠を手渡すと、早速、お姉様は大きな苺を口に運び、ゆっくりと噛んだ。


(うわっ、いきなり食べたわ! そうよ、大きいのは甘いの。問題は次……)


 お姉様は、迷いなく小さな苺もつまんだ。


(あ、小さいのも……うふふっ。すっぱいでしょう?)


 私は反応を待つ。顔をしかめるはず。もしかしたら、下品に吐き出すかもしれない。

 ところが、お姉様は、にっこり微笑んだ。


「本当に、リリアーナの摘んでくれた苺は甘いわ。特に、この小さな苺が」

 そう言いながらも、私に食べるように勧めてきた。

「ほら。リリアーナも食べてみて。せっかくですもの」


「いらないわ! それはお姉様のために摘んだものですから」

 拒んでも、横からルシアン様まで勧めてくる。


 逃げ道がない。

 断れない。


 仕方なく口に入れた瞬間――


(うぇっ……すっっぱ……)


 唇がすぼまる。その直後、ぴり、とした違和感が走った。

 唇がむずむずする。喉の奥が、ひりついた。


「お、美味しいですわ……とても、甘いです」

 苦しくて涙が滲んできた。それなのに、次々と勧めてくるルシアン様。

 一口ごとに口が痒くなっていく。


(どうして? ただの苺なのに)




 屋敷に戻ると、お母様にかかりつけの医者を呼んでもらった。


「体質に合わぬ食べ物に当たったのでしょう。慣れぬものを口にすれば、口や喉が荒れ、痒みを生じることもあります。……心当たりは?」

 医者が首を傾げながら、私に尋ねた。 


「ジャム用苺……いつもは、そんなの食べないのだけれど……」


 医者は小さくうなずいた。


「それでしょうな。一度こうして身体が拒めば、また同じ反応が出やすくなります。今後は苺を控えられた方がよろしい」


(控える? 私は苺が大好きなのに……)


「つまり……もう、ずっと苺は食べられないの?」


「残念ながら、その可能性が高いかと。苺に限らず、赤い果実を食べてはいけません」


 お母様は私を心配して横にいてくれた。私を気の毒そうに見ている。

「だったら、サクランボも林檎もだめだわね。リリアーナ、可哀想に……」


(酷いわ……。お姉様を困らせたかっただけなのに。どうして私が、こんな目に遭うのよ! こんなの、納得できないわ……!! あっ、お姉様は癪に障るけれど、薬師としては医者よりすごい結果を出していた。そうよ、お姉様なら、こんなの治せるはずだわ)




 私は翌日、ひとりでお姉様のもとへ行った。

「お姉様、私のために薬を作ってください! 先日の苺が原因です。顔にぶつぶつが出て、唇も腫れて……」


 お姉様は私を見て、にっこりと微笑んだ。

「まぁ、それはお気の毒ですわね。でも私、作りませんわよ。魔女の作った薬など、怖いでしょう?」

 どんなにお願いしても、お姉様は首を横に振るばかり。


 それ以来、私は赤い果実は一切口にできなくなった。お茶会で並ぶ甘い苺も、林檎のタルトも、私はただ見ているしかないのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ