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ストルゲー・フォレスト殺人事件  作者: 北村 清


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6/23

推理(1)

夕食が終わり、私達が談話室に移動したのはだいたい八時二十分から八時半の間くらいだった。


それから少しして、ハウエルの女友達四人とアーチーボルトが談話室を出て行った。

アーチーボルトとエディスは、最初から渡り廊下に行くつもりだったらしい。

ずっと団体行動をしていたので、二人っきりの甘い時間が過ごしたかったってわけだ。


だが、キャロルがエディスに頭が痛いと訴えた。キャロルの額に触ってみると熱があるようだった。エディスはキャロルに薬を飲んで寝るよう言った。キャロルは薬を持って来ていなかったので、エディスは自分の部屋に薬を取りに行きキャロルの部屋に届けた。

それからアーチーボルトとエディスの二人は渡り廊下へ行った。渡り廊下についたのが何時か、二人には正確な時間はわからないらしい。


そしてスーリン夫人は談話室を八時五十五分に出て行った。毎日夜九時にデライラ夫人の部屋にハーブティーを届けに行く事がスーリン夫人の日課だったそうだ。

スーリン夫人は、トレイに茶器を載せ九時に渡り廊下を通った。

その時は夫人とアーチーボルトとエディスは、お互い会釈をしただけで話はしなかったらしい。


数分後、スーリン夫人が手ぶらで戻って来た。

その時は

「綺麗な百合ですね。」

とか

「月が真ん丸ですね。」

とか、そういうどうという事のない話を三人はしたそうだ。


それからしばらくして、今度はメイド達が渡り廊下を通った。デライラ夫人は九時半に毎日就寝するらしい。寝巻きに着替えるのを手伝う為メイド達はデライラ夫人の部屋に向かったのだ。

そして、渡り廊下を通って一分も経たないうちに、そのうちの一人がすごい悲鳴をあげながら戻って来た。


デライラ夫人が血まみれで倒れていると聞いて、アーチーボルトとエディスはデライラ夫人の部屋に走った。その時アーチーボルトだけが部屋の中を覗き、エディスには見させなかったそうだ。デライラ夫人はもう事切れている、と思ったアーチーボルトは中に入って止血などの延命処置をしたりなどせず、バーナード医師の部屋に走った。エディスはキャロルの部屋に行った。キャロルは眠っていたが、エディスはキャロルを揺り起こした。その後、エディスとキャロルは談話室へ向かった。


アーチーボルトはバーナード医師と共にデライラ夫人の部屋に行った。そしてその後、デライラ夫人の部屋の前に集まっていた人々と一緒に談話室に戻った。


やって来た警察は、西館と西館の周囲を調べた。西館の全ての部屋の窓と一階のドアには内側から鍵がかかっていたそうだ。そして、西館の周囲に不審な足跡はなかった。午後に通り雨があったので、周囲の土は湿っていた。誰かが通れば必ず足跡がつくはずだが、足跡の類いは周囲の土の上に一切無かったらしい。


つまり。


殺人犯は渡り廊下を通る以外にデライラ夫人の部屋に行く手段は無かったのだ。


そしてアーチーボルトとエディスが渡り廊下に二人でいた後、渡り廊下を通った人間は三人だけ。


スーリン夫人とメイド二人だけなのである。


しかし、メイドの一人は渡り廊下を通って一分経たずに戻って来た。銃で撃ち殺した後、右手を切断している間はない。更に、駆けつけて来たバーナード医師が死後二十分から三十分は経っていると証言している。警察の捜査官達も検死をしたらしいが、やはりデライラ夫人が死亡したのは夜の九時頃だろうという結果だったそうだ。なのでメイド達は犯人ではない。


というわけで、警察の捜査官達はスーリン夫人を犯人と断定したのである。


「だったら、スーリン夫人が犯人だろ。他に考えられない。僕が捜査官でも、スーリン夫人を逮捕する。」

「アーチーボルト氏とエディス嬢が嘘をついていなければ確かにそうですね。」

そう言うと、むむっ!とハウエルは不機嫌になった。


「二人が何の為に嘘をついているんだよ。」

「真犯人をかばう為、あるいは二人が犯人だからです。」

「二人が殺人なんか犯すわけがない!」

と、ハウエルは怒った。


「だいたい二人はデライラ夫人と初対面だ。ハワード家の人達に会った事があるのは僕だけで、アーチーもエディスもキャロルもマデリーンもサイキもジェラルドもデライラ夫人には会った事もないんだ。なのに何でデライラ夫人を殺すんだ?動機は何だ?」

「お友達六人がデライラ夫人と初対面だって、何でわかるんですか?」

「六人がそう言ったからだ。」

ハウエルは堂々と言い放った。

私は頭を抱えた。


「貴方、ものすごくおめでたい思考回路をしているんですね。」

「貴様は、そんなにも僕の友人達が嘘をついていると言いたいのか⁉︎」

「エルフォード卿。人間の口は物を食べる為についていますが、殺人者の口は嘘をつく為についているんですよ。」

と私は言ってやった。


「貴方自身が先刻言ったよう、殺人犯は我が国の法ではだいたいにおいて死刑にされるのです。罪の罰を逃れる為だったら殺人者はどんな嘘でもつくはずです。」

「貴様!」


ハウエルは激オコだった。


後もう少し怒らせたら、無事婚約破棄できるかもしれない。


「だいたい二人は、銃声を聞いていないそうです。デライラ夫人の断末魔もです。おかしいと思いませんか?」


実を言うと、これはさほどおかしな事ではない。デライラ夫人の部屋のドアはものすごく厚く重厚にできているのだ。

アーチーボルトとエディスがしーんと黙りこくり、耳を澄ませていたら銃声が聞こえたかもしれないが、キャッキャウフフとおしゃべりに夢中になっていたら聞こえなかった事だろう。

ハウエルを怒らせる為に言ってみただけである。


だが、次に言った事は本当だった。


「そもそもスーリン夫人にはデライラ夫人を殺す動機がありません。」


「はんっ!」

とハウエルは鼻で笑った。


「君は知らないようだが、デライラ夫人とスーリン夫人は仲が悪かったんだぜ。原因はデライラ夫人の嫁いびりだ。スーリン夫人はデライラ夫人を相当恨んでいたはずだ。」

「知ってますよ。ハワード家の人達との付き合いはそれなりに長いんですから。スーリン夫人は姑の仕打ちに耐えかねて、離婚を決意していたそうです。」

「だったら、動機はあるじゃないか。」

「だから動機がないんじゃないですか。離婚して家を出て行ったら、もう顔を合わさなくても済むんですよ。どうして殺す必要があるんですか?」

「スーリン夫人が離婚をするつもりだったからというだけで、夫人が犯人じゃないと言っているのか⁉︎」

「それだけじゃありません。アーチーボルト氏は、デライラ夫人の『部屋から戻って来た』スーリン夫人と言葉を交わした、と言っています。だから私は、スーリン夫人が犯人ではないと言っているのです。」

続きを期待して頂けましたら、是非是非評価やリアクションを押して作者を後押ししてくださると嬉しいです

(^∇^)


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