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ストルゲー・フォレスト殺人事件  作者: 北村 清


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裁判(ハウエル視点)

《ハウエル視点》


裁判は、社会の注目を集めた。


被害者が新聞社の社長の母親だったので、ライバルである他の新聞社があらゆる記事を書き立てたのだ。


傍聴を希望する人達で裁判所の入り口はあふれ返り、観覧できるのはくじ引きで当たった人だけになったのだが、外れて怒った人間が暴れて怪我人を出し、逮捕されるみたいな別な事件まで起こっていた。


ちなみに僕は傍聴できた。

僕は遠縁とはいえ被害者の親族だからだ。アーチーは貴族である僕の従僕兼護衛、という事で中に入れたが、エディスとキャロルは入れなくて悔しがっていた。

ジェラルドも中に入れた。ジェラルドは加害者の親族枠だ。サイキの義理の両親と一緒に、ジェラルドは裁判所の中に入って行った。


僕は久しぶりに、オペラ歌手のミス・ロビンに裁判所の側で会った。ミス・ロビンはくじに当たったらしい。強運な人だ。

裁判所の中では、法医学者のバーナード医師に会った.彼は証言者枠だ。


裁判所の外では、自称支援者達がプラカードを持って大騒ぎをしたりして、騒然と始まった裁判はあっさりと終わった。


僕は他の裁判を傍聴した事がないし、大衆演劇で演じられる裁判は激しい討論が行われてめちゃくちゃ長いのだが、それに比べるとほんと実にあっさりとした裁判だった。


エメラインの論理をそのまま盗用したクレイン卿の話に終始、陪審員はうなずいていた。それに加えて次々と被害者のオソロしい性格を証言する証言者が現れた。何より信憑性のある証言をしたのは、今回の事件で被害者の次にひどい目に遭ったスーリン・ハワード夫人だった。


彼女は自分の苦しかった毎日をセツセツと訴え、サイキを信じてあげて欲しい。サイキに同情してあげて欲しいと訴えた。


スーリン夫人のセリフがあまりにも優しかったので、急に良心に目覚めたサイキが

「実は・・・・。」

と本当の事を言い出したらどうしよう。と僕は聞いていてハラハラした。そんな事になったらエメラインはどうなるのか!


だが、サイキは目に涙を浮かべ、ただがたがた震えているだけだった。検事の質問もクレイン弁護士が全て答えている。蒼い顔をしてうつむいたサイキは何も話さなかった。どのように犯行を行ったのかとか、加害者に対する恨みなど何一つだ。


友達だからわかるが、サイキのアレは死刑に怯えているだけだ。だが、陪審員や裁判官の目には、たおやかで非力な少女が恐ろしい事件に巻き込まれて震えている。というふうにうつったようだ。美少女は得である。


どうやってクレイン弁護士が見つけて来たのか知らないが、デライラ夫人からの被害を訴える証言者の中には、ハワード氏の二番目の奥さんがいた。更に最初の奥さんの従兄弟という人も出て来た。一番最初の奥さんは貴族だったようだ。しかし、全証言者の中でこの人が一番口汚かった。最初の奥さんは自死してしまっているので当然と言えば当然かもしれないが。


その反面、デライラ夫人を擁護する証言者はいなかった。ミス・アンブローシア以外にもたくさんのデライラ夫人の親戚が傍聴していたのだが、貝のように沈黙していた。だからまあ、裁判があっという間に終わってしまったのである。


そして評決の時となった。


十三人の陪審員達が席を立ち、別室へ移動する。大衆演劇だと、ここからが長いんだよな。今のうちにトイレに行っとくか。

と思って僕は立ち上がった。

だがそれと同時に、別室のドアが開いて陪審員達が戻って来た。


早ぁっ!


陪審員が裁判官に紙を提出した。陪審員が議論していた間、座っていたサイキに立つよう裁判官が言う。


陪審員が出した評決は『正当防衛であったゆえに無罪』とのものだった。

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