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登場人物紹介

殺人事件が起きたのはその日の夜だった。


なので、ミステリーの様式美としてここいらで別荘内にいる人間達の人物紹介をしようと思う。


① 屋敷の主人である、ガイ・ハワード氏


② ハワード氏の奥様、スーリン・ハワード夫人


③ ガイ氏とスーリン夫人の息子、ナサニエル君


④ ガイ氏の母親、デライラ・ハワード夫人


⑤ ガイ氏の従姉、ミス・アンブローシア


⑥ 法医学者、バーナード氏


⑦ オペラ歌手、ミス・ロビン


⑧ 新聞社社員、ミス・トーラー


そしてハウエル・エルフォードと六人の愉快な仲間共。私とお父様。


中年の執事に若いメイドが二人、女性の料理人。


以上21人が屋敷の中にいた人達だ。


多いですか?多いよね⁉︎


ミステリーならさ!犯人と被害者と探偵と、後、賑やかしが3人もいたら充分だよね!


でも、現実には殺人事件と直接の関係がない有象無象がいっぱいいる。それが嘘の無い『現実世界』におけるリアルってものなのだ。


だけど私は言いたい。どうして、私とハウエル・エルフォードの顔合わせの場に無関係な客がこんなにいるんだよ!


夕食は夜の7時半から始まった。

夕食は美味しかった。私の向かいの席がハウエルのボケでなかったらもっと美味しかった事だろう。


あの男、夕食の前、グレーのシンプルなドレスを着ている私に面と向かって言ったのだ。


「地味な服だなあ。顔が地味なんだから、服くらいもっと派手な服を着ろよ。それに、まさかすっぴんなのか?公式の場では化粧くらいするのが礼儀だぜ。」


平手打ちを喰らわしてやろうかと思ったが奇跡的に耐えた。人目があったので。


だが、確かにこいつの女友達は皆派手なドレスを着ていた。


エディス・オーウェルとその妹のキャロルは豪華なレースをふんだんに使ったチェックのドレスで、エディスが緑、キャロルが赤でデザインがお揃いだった。

仲の良い姉妹なのか、胸につけている真珠のブローチまでお揃いだった。


マデリーン・ドノバンはラベンダー色のドレスだが、びっくりするくらいデコルテが開いたドレスだった。全速力で走ったら、ポロリといきそうなデザインだ。しかし、こういう布の面積が少ない服の方が何故かそうでないドレスより高価だったりする世の矛盾がある。


対照的に、サイキ・リノーファーの服は布面積が多く露出が少ない。しかし、上半身の布が肌に直接貼り付いているのかというくらい、肌に密着していて、形の良い胸と折れそうなくらい細い腰が強調されていた。ドレスの色はトキ色で、裾には紅色の刺繍糸でアネモネの花が刺繍されている。


ええ、ええ、こいつらのドレスに比べたら私の服なんてまるで修道女ですよね!

でも、本音を言えば、おまえなんかと結婚するより山奥の修道院に入った方が何百倍もマシな気分なんだよ!


だけど食堂に行ったら、普段地味な服を着ている事が多いスーリン夫人でさえ真珠色の上品なドレスを着ていて「婚約者との顔合わせの席で、さすがに地味過ぎたか」とちょっと反省した。

ハウエル・エルフォードを喜ばす義理は無いが、ハワード家の方々の顔は潰さない程度にはおしゃれをするべきだったかもしれない。



食堂にはデライラ夫人と、五歳のナサニエル君以外全員揃っていた。

ナサニエル君は、熱があって部屋で休んでいるらしい。デライラ夫人は夕食をたくさん食べると胸焼けがするので、夕食はいつも自室で野菜スープだけを食べるのだそうだ。


夕食の後は談話室に移動した。


しかし、法医学者のバーナード氏は書かなければならない手紙があるからと、自分の部屋に戻った。


そして、ハウエル・エルフォードはオペラ歌手のミス・ロビンにべったりと張りついて楽しそうにおしゃべりをしていて、私は別に気にならなかったが、ハウエルの女友達四人は不機嫌になってしまい、四人共早々に談話室を出て行ってしまった。

そしてハウエルの男友達の一人、アーチーボルト・クレインが四人を心配して追いかけて言った。


父は、ハワード氏とスーリン夫人と話をしている。


別なソファーでは、ミス・トーラーとジェラルド・フォーセットを相手にミス・アンブローシアが面白くもない自慢話を披露していた。

ミス・トーラーは明らかにげんなりしている。


そして私は読書をしていた。

ハウエルに

「あ、僕もその本の作者好きなんだ。」

とか、間違っても言われないように、選んだ本のチョイスは『放射性元素の放射性崩壊と電離及び励起についての考察と研究』というものだった。


ふと、人の気配を感じ、顔を上げるといつのまにかジェラルド・フォーセットが私の側に寄って来ていた。

ミス・アンブローシアとミス・トーラーはいつのまにかいなくなっていた。


「お願いします。どうか、ハウルとの結婚を断ってください。」

いきなりジェラルドに頭を下げられ、そう言われた。


「ハウルの方から断る事はできないのです。」


私だって、できねえんだよ!

と叫びたかった。

もしできるのなら、秒でしているわ!そして、こんな胸の悪くなるような屋敷を飛び出して、家に帰っているわ!


「サイキは、ハウルの事を本当に愛しているんです。」

「へー、そうですか。」

私は棒読みで答えた。

「他の三人の愛情は偽物なんですか?」

私は本から目を離さないでジェラルドに質問した。


ジェラルドは黙り込んだ。


「ジェラルドさんは、サイキさんの事が好きなんですか?」

と私は逆に質問した。

「そんなんじゃありません!」

ジェラルドは耳まで真っ赤になって叫んだ。わかりやすい男だ。


サイキ・リノーファーとジェラルド・フォーセットは従兄弟同士だそうだ。ただし、血の繋がりは無い。サイキ・リノーファーは、養女だからだ。両親を亡くした後、父親の友人のリノーファー男爵の養女になったと噂で聞いている。彼女の実の両親の悲劇は、社交界の噂に疎い私でさえ聞いた事があった。

そしてジェラルドはリノーファー男爵の妹の子供である。


「僕が言いたいのは!」


「エメル?」

お父様が私の名を呼んだ。

私がジェラルドに怒鳴られているのが聞こえて心配してくれたのだろう。

ハワード氏も心配そうにこちらを見ていた。


あれ?


スーリン夫人がいつのまにかいなくなっている。なんとなく私は、柱時計を見た。時刻は九時ちょうどだった。


ジェラルドが、気まずそうな表情で私から離れて行った。

その全てをハウエルは全無視していた。


私は再び読書を再開した。


しばらくして、マデリーンが談話室に戻って来た。酔ってでもいるのか、やたら甲高い声で喋っている。うるさい。


部屋に戻ろうかな。と思って私はまた柱時計を見た。

時刻は九時二十分だった。


本を閉じて立ち上がった時。


わけのわからない叫び声をあげながらメイドの一人が、談話室に飛び込んで来た。


「奥様がっ!」


がたがたと震えながらメイドは叫んだ。


「奥様がお亡くなりになっておられます!」

登場人物が多くてすみません


そんな作品でも、面白そう、応援してやるよ!と思って頂けましたらリアクションや☆☆☆☆☆をポチポチっと押して作者の背中を押してください

よろしくお願いします

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