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ストルゲー・フォレスト殺人事件  作者: 北村 清


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真相(2)(ハウエル視点)

《ハウエル視点》


通り雨があった後の空気は美しく澄み渡っている。

しかし僕の心の中はどんよりと曇っていた。

僕の名前は、ハウエル・エルフォードという。プランタジネット朝にまで歴史を遡れる名門伯爵家の次男坊だ。


僕は今日、婚約者となる女性と顔合わせをしたのだ。



しかし、僕に結婚するつもりはない。


別に僕は独身主義者というわけではないし、いつかは結婚して可愛い子供達に囲まれて、楽しく暮らしたいな、という未来を夢見ている。


だけど今は、そして彼女は駄目なのだ。


僕の婚約者となった女性は、エメライン・ハーグリーヴスという。

伯爵家の一人娘で、父親は国を代表するような高名な考古学者だ。彼女自身も才女として名高く、妻とするには理想的な女性だろう。

だから駄目なのだ。


彼女と結婚したら僕がエルフォード伯爵家の後継者になってしまう。

だけどエルフォード伯爵家は兄が継ぐべきなのだ。


兄は賢くてとても優しい人だ。傲慢な父と浪費家の継母のせいですっかり没落してしまった伯爵家が、何とか今現在まで持ちこたえていたのは兄がいたからだ。

なのにその兄を、父と継母は平民の女性と結婚してしまったからという理由で追い出してしまった。

そして、今まで存在を無視していた僕に跡取りになれと言っているのだ。


今まで伯爵家を守る為、力を尽くしていた兄に対してあんまりな仕打ちだし、僕に兄の代わりなんてとても務まらない。

だから僕は、『国内一の才女』と呼ばれる伯爵令嬢と結婚をするわけにはいかないのだ。


しかし彼女との結婚は、我が家にたくさんのお金を貸してくれている継母の親戚からの命令なので、僕の方からは断れない。


なので、向こうから断ってもらえるよう僕は策を考えた。

と言っても、僕の代わりに考えてくれたのは乳兄弟のアーチーボルトとその婚約者のエディスだ。エディスと妹のキャロルが僕の恋人だという事にして、エメライン嬢の前でわざとベタベタするという計画だ。実の姉妹を相手に二股かけている男というのは世界最悪なクズだから、どんな女でも秒で婚約を断って来るはずだ。とキャロルは力強く言った。

ちなみにエディスはアーチーの婚約者だし、キャロルは家業であるホテル業を継ぐ気満々の、女実業家を目指す独身主義者だ。

なので僕に対して恋愛感情は持っていないし、僕も彼女達の事は友達としか思っていない。


エディスとベタベタするのはアーチーに申し訳ない気がしたが、三人共すっかりやる気に満ちあふれていたので、結局その線でイタい男を演じる事になった。

そしたらその話を聞きつけたエディスの友人のマデリーン・ドノバン令嬢とサイキ・リノーファー令嬢まで僕の恋人役をすると言って来た。


正直言って気が進まなかった。マデリーン・ドノバンは顔の良い男には誰にでも言い寄って来る女で、僕にもだが僕の兄にも今まで散々言い寄って来た女なのだ。僕は正直言って彼女が苦手だった。サイキ・リノーファーは僕の昔からの友人のジェラルドがとても大事にしている女の子なので、ジェラルドに申し訳ないと思った。なのに普段から厚かましいマデリーンはともかく、おとなしいサイキまで何故かものすごく押せ押せで、結局僕の恋人はエディスとキャロルとマデリーンとサイキの四人という事になった。


婚約者とその親と初めて会う場に恋人を四人も連れて行く男なんて、自分でも最悪な男だと思う。

だけど、兄上を我が家に呼び戻す為だ。僕は兄の為に喜んで最悪な男になろうではないか!


でも万が一にも、こんな話が兄の耳に入ったらヤバいな。とも思い、さすがに四人は多かったかと、ストルゲー・フォレストに行くギリギリまで悩んだ。


ジェラルドには、そんな僕のブラコンぶりを知られただけで大概の女性は引くのでは?と言われたが、それは聞かなかった事にする。


そうして初めて会った婚約者エメライン・ハーグリーヴスが僕を見る目は、正にゴミを見る目だった。



エメライン・ハーグリーヴス伯爵令嬢は、おそらく摂取した栄養の全てが脳に行ったのだろうという身長と胸囲の人だった。


十八歳という年齢よりも幼く見えるし、大きなメガネをかけていて、一部の人達からは熱狂的に好まれそうなタイプの女の子だった。


少し話をしただけでものすごく賢い人なんだろうなという事がよくわかった。なのにそれを鼻にかけた態度を決して取らない。

溢れ出る知性と教養を、他人を傷つける為ではなく他人を築き上げる為に使うタイプだ。そしてこういうタイプの人は、人を手のひらで転がしたり人を誘導したりするのも上手い。ある意味、兄とよく似たタイプだ。そう思うと、ちょっと彼女の事を好ましいと思った。


だけど、僕はそれでもまだ彼女の頭の良さを過小評価していた。彼女は本当に頭の良い人だった。


彼女と初めて会った日、継母の親戚のハワード家の奥様が何者かに殺されるという恐ろしい事件が起きた。

そして翌日、ハワード家の若奥様が殺人犯として逮捕された。アーチーとエディスの証言を聞いて、それは間違いなく若奥様が犯人だなと思った。他の人が犯人の可能性は無い。

ヨメとシュートメの関係だ。不仲だと噂に聞いていたし、きっといろいろと他人にはわからないドロドロがあってブチ切れてしまったのだろう。僕も兄の妻にしばしば殺意を覚えるので正直気持ちはよくわかる。


なのに、エメライン嬢はスーリン・ハワード夫人は犯人ではない。犯人は他にいる。と言ったのだ。


最初は、何言ってんだこの子は。と思った。だけど彼女の説明を聞いていると、確かにその通りだと納得してしまったのだ。

ようするに彼女は、プロの捜査官より賢い人なのだ。


昨日会って少し話しただけでも『能ある鷹は爪を隠す』系の人だなと思ったが、その爪が半端なく鋭い人だったらしい。爪も無ければ能も無い僕には少し羨ましくなる人だ。


そして、今僕達、屋敷内の全滞在客は死んだデライラ夫人の部屋にいる。つまり犯行現場にだ。


捜査官がエメライン嬢の指示で、滞在客達の靴を調べ、血塗れの靴を発見した。発見されたのはサイキの靴だった。

エメライン嬢から懇切丁寧説明を受けた僕には、その血塗れの靴が何を意味しているかわかるが、他の滞在客達にはわからない。

それを説明すると言って、エメライン嬢が屋敷にいる人間全員を死んだデライラ夫人の部屋に連れて行ったのだ。


正直僕は行きたくなかった。デライラ夫人の部屋はまだ掃除されておらず血塗れだし、何より【自主規制】とか【自主規制】とか【自主規制】などの不気味な拷問道具が部屋のあちこちに飾られているのだ。壁にはデライラ夫人の右腕を切断したという斧も二つ、Xの形で壁に飾られていたらしい。実際に使用された方の斧は捜査員が今はどこかに持ってしまっていて、今残っているのは一本だけだけど。


かつてとある国で実際の処刑に使用された斧だという話だけど、何がびっくりって、今でも現役で使えていたというのがびっくりだ!何かマメに手入れをしていたのだろうか?

我が家にも、十字軍の時代にかの獅子心王クールドリオンリチャード1世に付き従い、功を立てた先祖が実際に使っていたという家宝の剣があるが、その後誰も触りもしていないので、たぶんもうネギを切る事さえできないだろう。


そしてそのものすごく血生臭い部屋で、僕の婚約者殿は探偵小説の探偵のように、推理を披露し始めた。


しばらくハウエル視点の話になります


応援してやるよ、更新頑張れよ!と思って頂けましたら、是非リアクションや評価のお星様を押して作者の背中を押してやってください

よろしくお願いします(^∇^)

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