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ヒロインの姉ですが……

作者: こうじ

 私、エミリア・カルフォンは男爵家の長女として生まれた。


 両親とも仲良く過ごしていたのは妹のレミアが生まれるまでだった。


 レミアが生まれてからは両親の愛はレミアの方に向き私は放置されていた。


 私の相手をしてくれたのは私付きのメイドのみ、他の使用人やメイド達は私を無視していた。


 私にとって実家は地獄のような所だった。


 そんな日々がこれからも続くのか、と憂鬱になっていた10歳の時、転機が訪れた。


 私はお父さんの弟であるエレンジ・カルフォン叔父様に養子として引き取られる事になった。


 ある日、叔父様が訪ねてきて両親と話し合いをしてその日に私は実家から離れ叔父様の家に行く事になった。


 叔父様の家は我が家よりも広かった。


「叔父様も貴族なのですか?」


「いや、僕は貴族ではないよ、まぁ貴族と同等の扱いを受けているけど」


 私にとって叔父様は捕らえどころの無い方で何をしているのかが全くわからない方だった。


 でも、あの家で過ごすよりも叔父様といた方が良い、と本能的に理解していた。


 叔父様と暮らし始めてすぐに叔父様の正体がわかった。


 叔父様は宮廷魔道士で魔法や魔術のスペシャリストだったのだ。


 叔父様は国王様からの命を受けて国内の魔法に関するトラブルを調査、解決してきたのだ。


 そして、叔父様が私を引き取った理由は私にも魔力があるからだ。


 我が家は元々は優秀な魔道士を輩出してきた名家で魔道士界隈では有名で叔父様がその血を受け継いでいる、という。


「あれ? ではお父様にも魔力があるのでは?」


「いや、兄貴には残念ながら魔力が無くてね、でも長男だから家を継いだんだよ。 本人はそれがコンプレックスで魔法を嫌っているんだ」


 もしかしてそれが理由で私は無視されていたのかしら?


「それも一因かもしれないけど大きな原因は他にあるよ」


 叔父様は何か知ってるみたいだけどまだ私には教えてくれなかった。


 そして、時が経って私は18歳になった。


 この間、私は実家とは距離を置いている。


 レミアとも1度も会っていない。


 なんせ私は貴族学院に通っていなくてその代わり魔術学院に通っていた。


 魔術学院は身分関係なく魔力を持つ者が通える学院で私は優秀な成績で卒業する事が出来た。


 将来的には叔父様と同じ宮廷魔道士になろう、と思っているのだけど叔父様からは止められている。


「宮廷魔道士て響きは良いけど実際は国王から厄介事を押し付けられてるだけだからね、エミリアだったら別に国に仕えなくても実力で暮らしていけるよ」


 そんな変なお墨付きを与えられている。


 さて、魔術学院も卒業して1魔道士としてどう暮らしていくか考えていた時に今まで連絡を取っていなかったレミアから手紙が届いた。


『お姉ちゃん、助けて。 このままだと不敬罪で処刑されちゃう!!』


 不敬罪? 処刑?


 ただでさえ久しぶりの連絡に何事かと思っていたら只事ではない文面。


 私は久しぶりにレミアに会う事にした。


 レミアは現在15歳、貴族学院に通っている。


「レミア、久しぶりね」


 叔父様の家にやって来たレミアは幼い頃よりも可愛さが更にアップしていたが顔色は悪かった。


「お姉ちゃん、会いたかったよぉ……」


 レミアは私の顔を見て泣きじゃくっていた。


「どうしたの? 何があったの?」


「私ぃ、そんなつもりは無かったのよぉ……」


 泣きながらレミアが話した事によると。


 私が引き取られた後、レミアは社交界デビューしたのだが、異様に令息人気があり集まってくるらしい。


 最初は『私が可愛いからね♪』と自惚れていたが貴族学院に入った事から様子がおかしくなった。


 理由はわからないけど王太子様やそのお付きであるご子息達に囲まれる日々を過ごす事になったのだ、レミアの意志とは関係なく。


 レミアは流石に立場がわかっていて距離をとろうとしていたけど、何故か向こうがグイグイ来るようになっていた。


 両親に相談したけど『王家と近くなる事は良い事だ』『貴女が魅力的だからよ』と関係を近くしろ、と言ってくる始末。


 当然だけど王太子様達には婚約者がいて彼女達からは目の敵にされて居た堪れない、という。


 うん、とりあえず良識は持っているみたいでちょっとだけ安心した。


 今のところは直接的に嫌がらせとかはされてないけど時間の問題らしい。


「公爵令嬢様から注意を受けるんだけど王太子様はそれをイジメと認識してるみたいで……、このままだと2人が私のせいで婚約破棄しちゃうんじゃないか、て……。私、そんなつもりないのに……」


「それで漸く可笑しい事に気がついて私に連絡してくれたの?」


「うん……、私のせいでお姉ちゃんは出て行っちゃったんでしょ? だから連絡とるのを遠慮してたの……」


「別にレミアが気にする事じゃないし貴女のせいじゃないから」


 どうやら私が出て行った事を気にしていたみたいだ。


 私が魔道士になった事はメイド達が噂しているのを聞いたらしい。


「とりあえず事情はわかったわ。 そして理由もなんとなくだけどわかった」


「えっ!? 本当なのっ!?」


「うん、レミアは『魅了持ち』ね」


「み、魅了?」


「そう、本人は意識してないけど相手が勝手に好きになる、ていう厄介な魔法よ、下手したら国を乗っ取る事が出来るぐらい危険な物よ」


 他国では魅了持ちの令嬢を王妃として迎えた結果、王家は言いなり状態になり滅んでしまった、という。


「じゃ、じゃあ今まで男性達が私に優しくしてくれたりしたのって……」


「全部魅了のせいね」


 そう断言するとレミアはガックリと項垂れてしまった。


 そりゃそうだろうなぁ、今まで自分の魅力があるから、と思っていたのにそれが実は魔法のせいでした、になってるんだから。


「え、でもお姉ちゃんは効かないよね?」


「私は耐性があるみたい、それに同性には妬みや嫉妬されるらしいのよ」


「え、私同性の友達出来ないのっ!? お茶会とか参加して交流するのが夢だったのにぃっ!?」


 そう言って絶望的な表情になるレミア、ていうか何とも平凡的な夢を持ってるね、そういう所好感持てるよ。


「対策する方法はある事はあるけど、まずレミアが魅了持ちかどうかを検査しないと」


 私はレミアを連れて魔術協会に向かった。


 結果、やはりレミアは魅了持ちだった。


 レミアは魔術協会預かりとなり保護される事になった。


 これからレミアは魅了をコントロールする訓練を受ける事になる。


 さて、そうなると問題がある、我が両親だ。


 基本、魅了持ちである事がわかった、もしくは疑惑がある場合国に申告しなければならない。


 なんせ下手したら国を傾けるかもしれない危険な魔法なので国によっては処分対象になる事もある。


 我が国はそこまで厳しくはないけど報告義務はある、両親は報告していたのか。


 魔術協会が両親に事情聴取をした結果、報告はしていなかった。


 じゃあレミアが魅了持ちと認識していたか、と言うと最初は知らなかった、と言っていたが私が出て行った後にどうやら察したみたい。


 じゃあなんで報告しなかったのか、と言うとどうやら裏があるみたい。


「本家である公爵家が王太子を誘惑する様に兄貴達に指示していたみたいだよ、報告しなかったのも公爵家の指示らしい」


 調査をした叔父様から報告を受けていた。


「もしかして権力争いですか」


「その通り、王太子様の婚約者であるご令嬢とは敵対している公爵家が企んでいたみたい。でも明るみになったから反逆罪で捕縛されて近々処刑されるみたいだよ」


「両親はどうなるんですか?」


「連座で処刑、おかげで男爵家を継ぐ事になっちゃったし良い迷惑だよ」


 こっちは堅苦しい貴族生活が嫌だから独立したのにさ、とため息を吐きながら愚痴っていた。


「それでエミリアも男爵令嬢に戻る事になるんだけどどうする?」


「今更戻ってもねぇ……」


 だよね、と叔父様が言った。


 それにレミアが魅了をコントロールする事が出来たら私は身元保証人として引き取る予定だ。


 長い間、離れていたので姉妹の絆を繋ぎ直す。  

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