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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第三巻
83/94

第80章 これはただのマッサージだ

「ふん、認めたくないだけだろ」


「もういい、その話はやめよう。ハジメ、あの子たちについてどう思う?」

 リネアが突然真剣な口調で聞いてきた。


「お前ほど可愛くないよ、どうした?」


「バカ~!」

 リネアが俺の頭を叩いた。


 [ふん、確かにそうだけど聞いてるのはそこじゃないわ!彼女たちの正体についての意見よ!]

 [あのアンドロイド娘の態度はおそらく『アルタール』のアンドロイドに関係がある。護衛風少女の話し方は叔父の部下に似ている。忍者娘の装束は『真理教』宗派に類似し、『ラストディフェンスライン』の娘も...]


 リネアに指摘され、俺は重大なことに気づいた。


 [なるほど…弟は重大事件に関わっているんだ。そうでなければ、これほど多くの美少女に追われるわけがない]

 [じゃあ、弟は危険じゃないのか?そんな連中に囲まれて]


 [心配する必要はなさそうね。本当に害を与えるつもりなら、とっくに実行してるはず]

 [おそらく監視か、何らかの情報を探るための保護目的かもしれない]


 殺し屋の直感を持つリネアは、明が事件の重要人物であり、全ての勢力が彼の生存を必要としていると結論づけた。


「⋯」


 家に着くと、家族とリネアで深夜の軽食を囲み、俺の帰還を祝った。その間ずっと、弟はリネアに繰り返し謝罪し、香菜をかなりイライラさせていた。


 夕食後、おふくろは俺を屋根裏部屋に移動させ、リネアは俺の部屋を使っていつ。


 真夜中、リネアが屋根裏部屋にこっそり入り、明かりを消した。

【準備はできた?】俺は顔を赤らめて尋ねた。

【ええ】 リネアも頬を朱に染めてうなずく。

【じゃあ、始めるぞ】


 リネアは服を一部脱ぎ、バスタオルで大事な部分を覆い、枕を用意して俺が準備したマットに横になった。蒸し暑さで俺はボクサーパンツだけ残して上着を脱いだ。マッサージオイルのボトルを手に取り、掌に塗り広げると、リネアの横にひざまずいた。


「いくぞ」俺の手がリネアの肩に触れた。

「んっ…」リネアは枕で顔を覆った。


 かすれた吐息と身体の弾む音が部屋に響く――誤解を招きやすい音だった。


 何度か体位を変えるうちに、リネアと俺の顔は共に赤く火照った。床は汗で濡れ、リネアの肌はベタつくマッサージオイルで艶めいていた。

【終わった…交代だ】疲れきって俺は床に寝転がり、ボクサーパンツを脱いで手袋をはめ、リネアが始めるのを待った。


【危ない!誰か来た!】足音を聞くと同時に、リネアは慌てて布団に潜り込んだ。服も隠す。俺も仰向けに寝たふりをした。


【母さんだ】特徴的な足音で気づき、少し安心。母はいつも俺たちが寝た後に布団を確認する癖があった。十日以上家を空けてて、この習慣を忘れるところだった。


 だが今回は違う。母は屋根裏部屋の明かりをつけ、優しく俺の肩を揺すった。

「どうしたんだ、母さん?」俺は眠そうなふりをした。実際には来意は予想できた――弟の出生についてに決まっている。でなければ、なぜ俺が十数日もチベット高原に行かされたんだ?


「明はもう寝たわ。聞きたいことが…あそこで何か手がかりはつかめた?」


 エレシュの話から推測するに、弟はとっくに自分の出生を知っているはずだ。気づいていないのは両親と家族だけなのだ。


 もちろん、弟の真の正体を母に話すわけにはいかない。帰る前から言い訳は準備してあった。


「母さん、明の出生についてだけど…」悲劇的な印象を強めるため、無理やり涙を数滴浮かべた。

「現地の牧畜民を訪ねた時、叔父さんと俺で明の実の親の墓石を見つけたんだ…」


「あの時、彼らの実の両親はアイド高原の高級技師だった。明の実母は多分、難産(なんざん)だった」

(難産:分娩障害)


「彼らは山道を一晩かけて病院へ向かっていた。途中で明の実母が産気づき…弟が生まれた直後に大量出血…伯母さんは亡くなった」


「その直後、山津波が発生。叔父さんは濁流に飲まれ、弟は木の枝に引っかかって助かった。遺体は…まだ見つかっていない」


 話しながら、自作の芝居に没入した――母を抱きしめ、涙ながらに嗚咽した。


 偶然にも、これはエレシュと明の真実の物語と符合していた――実の両親は次元間ポータルの乱流で死亡し、二人の子供だけがこの世界に取り残されたのだ。


 かつて高原で任務に就いていた地質調査チームの一員だった両親は、殉職した同僚たちの話を聞くたび深く悲しんでいた。


 実を言うと、俺の作り話は完全な嘘ではない。牧畜民のキャンプに滞在した時、多くの探検隊の犠牲話を耳にした。あの山々には若い地質学者たちが数多く眠っている。俺がでっち上げた出生の話も、高原で実際にあった若いカップルの実話を下敷きにしている。


 祖国のために命を捧げた人々は、永遠に記憶されるに値する。


「じゃあ…明の実の親が働いていた機関は?ご家族はまだ存命なの?」母は涙を拭い、さらに尋ねた。

「分かっているのは所属部隊名だけだよ。XX局傘下のXX探検チーム。その後は…痕跡もなく、家族の消息も不明だ」


 その部隊名を聞くと、母は深く息を吸った――そのチームは洪水が探検中の洞窟を襲った際、全滅していたのだ。


「ハジメ…このことは弟には話さないで。心の奥底にしまっておいて」


 もともと両親は弟に実の親と会わせるつもりだった。だがこの話を聞いた今、苦い真実を知らせれば負担になるだけだ。


「もちろん話さないよ」


「ハジメ、一旦下りるね。ゆっくり休みなさい、考えすぎないで」話し終えると、母は立ち去ろうとした。


「これは何?」突然、母が布団の隙間から覗いた下着の端を見つけた。


「それは…」明らかに女性用だ。俺のものだとは言えない。


 反応する間もなく、母は布団をめくってリネアの寝間着を発見した。布の下の膨らみを見て、リネアが潜んでいることにすぐ気づいた。


「ハジメ、お前ももう大人だ。特定のことをするのは止めないが、責任を持て。ふざけた真似はするな」

 母は真剣な眼差しで俺を見た。


「おばさん、誤解です!考えているようなことじゃ…!」

 バレたと悟ったリネアが布団を剥ぎ、恥ずかしそうに叫んだ。


 だが説明は無駄だった。


 二人が半裸で一枚の布団に「もぐりこんでいる」状況で、母が信じるわけがない。


「母さん、ただのマッサージだと。信じるか?」


 母はリネアの肌に光るマッサージオイルの痕を見つめ…そっと首を振った。


 実際のところ、誰もが勘違いしていた。


 リネアと俺は本当にただマッサージをしていただけだ。何も起きていない。

 きっかけは彼女が筋肉痛を訴えた時、全身マッサージを約束したことだった。


 ロソウ市にいる間、俺は定期的に彼女を揉んでいた。するとリネアは逆にハマり、毎晩押しかけるようになった。


 ナイラは専用マッサージオイルを(見た目が少々… あやし)瓶に入れてくれた。

 ラベンダー香のこの液体は、肌ケアと抗菌効果を兼ね備えている。


 だから…今夜も本当にただのマッサージだった。母が想像した「あの」シナリオではない。


「…」


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