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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第一巻
8/88

第8章 俺たち力

 

「クソッ、その汚い手を離せ!」


 俺がまだ胸の二つの膨らみを握っているのを見て、リネアが顔を叩いた。この少女の体の影響かどうかはわからないが、本物の涙が零れ落ちた。


「ぼ、僕はそんなつもりじゃ…」



 震える弱々しい声で、涙を堪えながら俯く。神様、これがまだ俺なのか?女性の体が心理に与える影響ってどれほど大きいんだ?


「可愛いわね」


 ナイラの目が危険な輝きを放ちながら俺の涙を見つめる。さっきまで怒っていたリネアは逆に少し後悔した表情で、あんなに強く叩くつもりはなかったようだ。


「それ…ごめん」


 普段は高飛車なリネアが謝罪の言葉を口にした。


「ふん、あんたの謝罪なんか受け入れないからね!」ああ、まずい。今度は俺がツンデレっぽく振る舞ってる。完全にリネアの傲慢なスタイルを真似てしまった。


「性転換した男性は女好きになると聞いたわよ」ナイラが突然背後から抱きしめ、耳元に息を吹きかけてくる。


「あぁんっ!」


 この女性の体は敏感すぎる!ナイラの悪戯に俺は無力にぐらついた。それを見たリネアが慌てて俺を引き寄せる。だが彼女の手が平然と胸を揉み始める。


「ナイラ、アバターとはいえ私の体を勝手に弄ぶなよ」


 リネアにむかついた。ナイラには勝手なことをするなと言っておきながら、自分は好き放題やっている。実はリネア自身も、この体を見た時に湧き上がる独占欲の理由がわからず困惑していた。


「あら、だって本物の体じゃないんでしょ——」


「そういう問題じゃない!」


 突然鋭い痛みが三人の股間を襲った。床の上で転げ回る。どうやら現実世界での出来事への反動が来たらしい。


「ぐえっ、ごめんよ!」


 痛みを感じていなかったリネアが今度は泣きじゃくった。女性の体には想像を絶するこの苦痛に、二度と「重要部位」を蹴らないと誓ったようだ。


 痛みが引いた後、円座になって各々の体の変化について議論した。


 ナイラが説明を始める:

「あの異世界から染色体レベルの遺伝子操作能力を得たわ。要するに、映画『エイリアン』の強化版エイリアンクイーンみたいなものね」


 彼女の手が突然映画そっくりのフェイスハガーに変化した。


「わあ、本当にフェイスハガーみたい!」


 子供の頃見た映画の気持ち悪い生物を思い出す。だがよく見ると——フェイスハガーが俺の顔に飛びかかってきた!


「ひゃっ!」


 避ける間もなく捕まった。引き剥がそうとするが握力が強すぎる。


「ちくしょう、ナイラ!これを外せ!」


「はいはい、悪戯はここまで」


 寄生生物はナイラの体に戻り、普通の手に戻った。


「ひぃっ、気持ち悪い!リネアはどんな変化があったの?」


「外見の変化はないけど、脳の演算能力が飛躍的に向上したわ。たぶん日本のスーパーコンピュータ『富岳』並みね」


「じゃああなたは人間型コンピュータになったってこと?」ナイラがニヤリと笑う。


「で…俺の能力は?」待ちきれずに質問をぶつける。


「君のひげを触ってごらん」


「あっ!」


 指先が鼻の下の硬い毛に触れた。口ひげが残ってる!


「もしかして動物模倣能力?」


 新しい感覚を確認する:鋭く刺すような嗅覚、空中の塵さえ捉える視力、潜在力を秘めた筋肉。この体は明らかに常人を超えている。


「単なる模倣じゃない。即時進化よ」


 ナイラが血滴を垂らした指を差し出す。液体が肌に融合していく。


「雪原生態系に適応するよう遺伝子改造されたけど、リセット可能。環境に応じて進化するの」


「凄い!自然なら数千年かかる進化を数分で逆転させるなんて。俺の能力でもこれは不可能だ」 ナイラの目はキラキラする


 リネアが嘆息すると、彼女のぺしっと叩いた。


「おい!見た目がリネアでも心は男だぞ!」


 再び近づこうとするナイラを押しのけ、わざとリネアの隣に立つ。


「ところで、なんで俺の顔がリネアに似てるんだ?」


「進化の副作用よ。あなたが雪虎の特性と、潜在意識でリネアを脅威と認識した記憶を同時に吸収したから」ナイラが舌打ち。「二つのテンプレートを融合させたの」


「元の姿に戻る方法は?」


「男性的な肉体への欲求に集中してみて」


 太い腕の筋肉感、低い声、がっしりした体格をイメージする。徐々に体が反応し始めた。


「あっ!変化してる気が…!」


「外はまだ吹雪いてるし、一旦休みましょ」ナイラが肩を撫でる。


「あの部屋…本当は何なんだ?」


「グリーンハウスは私たちの集合意識の顕現かも。三つのキャビンは各個人のメンタルルームよ」


「もういい。寝るわ」リネアが毛布を引っ張る。


「寝る位置どうする?」


「ハジメ様が心配なら、もしまた女の子に戻ったら、私を抱きしめて寝てもいいよ~」ナイラが投げキッス。


「安心しろ、そんな事態にはならん」


「リネア、一緒に寝ましょう〜」ナイラが標的を変更。


 いつものように銀髪の少女はナイラを無視し、私の腕を枕がわりに奪う。ナイラは不機嫌そうに反対側の隅に寝転がり、冷たい距離を保った。


 時間は過ぎたが、以前と違い、俺はなかなか眠れなかった。昨日の疲れは消え、進化能力のおかげで休みなく活動可能になっていた。


 横になった瞬間、左腕に重みを感じた。少し離れて寝ていたはずのナイラが無意識に近づき、今や俺の腕に抱きついている。


「はぁ~、厄介な女だ」


 翌朝

 太陽が顔を出したが、ナイラの怨恨混じりの視線が俺を迎えた。自分が俺を抱きしめていたことに気付くと、彼女の顔は真っ赤に燃え上がった。


「説明はいらない。お前が勝手に抱きついてきたこと、全部偶然だろ?もう知ってるから。だから、怒らないでくれよ。」


 起きたばかりのリネアはナイラの赤面を見て笑いを堪えきれなかった。「道理で今朝は空気が熱いと思ったわ」とからかう。


 ナイラが落ち着いた後、洞窟の外を確認した。吹雪は収まっている。集合記憶を通じ、外が安全なことを知っていた。「準備しよう」洞窟内に戻りながら言った。


「嵐は去った。お前が心配する前に山を下りるべきだ」


「雪虎の死体はどうする?この大量の肉を運ぶのは無理よ」


「あら、心配いらないわ」


 ナイラが微笑む。彼女の手がフェイスハガーに変化し、死骸へと這っていった。酸性の液体が噴出し、3体の肉を完璧に保存されたハム状に変えた。


「その新能力、なかなか使えるじゃないか!」


「よし、これで1週間分の食料ね。ただし食べすぎると問題が起きるから注意して」


「オーケー、準備が整ったら出発だ」


 下山中、リネアのスパコン並み頭脳が最安全ルートを導き出した。急峻な斜面では、雪虎を思わせる俺の筋力が二人の安全を確保した。


「この進化、悪くないな」二人の少女の体重を支えながら呟く。


 ナイラが薄笑いを浮かべた。「あなたのツンデレ感情を制御する訓練も忘れないでね~」


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