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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第二巻
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第73章 リネアの告白

 意識空間で、俺が昏睡状態の時、ナイラと協力してリネアの意識の家からソファを外に運んだ。二人で並んで座り、リネアの子供時代の写真アルバムを見ていた。


「ねえ」ナイラが言った。「自分の身体、放ったらかしで大丈夫?」時間が経つにつれ、俺の心にはまだ不安が絡みついていた。


「リネアは守れたけど、ヘリの後部キャビンに横たわるお前の身体がどうなってるか分からない」


「それに俺自身の身体も今、瀕死の状態だ」と俺は焦りを込めて付け加えた。


「もういいよ、お前の頭の中なんて分かりきってる。少し待って。リネアがパニックになったら戻るから」彼女は涼しい顔で応えた。


 ナイラは全く心配していなかった。彼女は手をリネアのフォトアルバムから離すと、立ち去った。


「よし、今だ!」ナイラはタイミングを計り、手を叩き合わせると、ソファから飛び降り、ひび割れ始めた俺の意識空間と飛び込んだ。


 問題はこうだ:二人の関係にリネアが怒っているのは分かっていた。彼女を落ち着かせるため、ナイラは策略を練った。本当に狡猾な奴だ…


 ヘリを丘に着陸させた後、リネアは俺をキャビン内で水平に寝かせた。


 俺の脈はほとんど感じられず、心臓の鼓動は永久に止まりそうなほど弱々しかった。


 リネアはエピネフリン注射器(おそらくヘリの救急キットから)を取り出し、消毒もせずに俺の左腕の血管に直接注射した。その後、医療器具を手に取り、俺の傷口に緊急止血処置を施した。


 終わると、リネアは耳を俺の胸に押し当て、心音を聞いた。


「ドクン。ドクン… ドクン…… ドクン………」鼓動は次第に遅くなり、やがて完全に消えた。


「そんなはずない!嘘つき!」リネアは慌てて耳を俺の鼻の下に近づけ、呼吸の兆候を探った。結果は無──俺はもう息をしていなかった。


「ナイラの能力!」リネアは即座に眠らせ虫に睡眠命令を下した。意識空間に入るやいなや、彼女は俺の名前を叫んだ。


 返事はなかった。意識空間は重い沈黙に包まれている。俺の意識キャビンは深刻な損傷を受け、ナイラのキャビンは無惨にひび割れていた。


 悪い予感がリネアを襲った。ナイラと俺が目覚められないなら…

 彼女は独りぼっちだ!


「ありえない!」リネアはナイラのキャビンの扉へ突進し、全力で木材を蹴り上げた。しかし、どれだけ叩きつけても、扉は微動だにしなかった。


「ダメだ…独りは嫌!あんたたちを死ぬなんていや!」絶望したリネアは子供のように扉の前で崩れ落ちた。膝の間に顔を埋め、震える肩で嗚咽を必死に押し殺した。


 俺は意識キャビンに隠れ、リネアを抱きしめたい衝動を必死に抑えていた。全てを説明したい──だがナイラが俺の腕を掴み、警告の眼差しを向けた。「甘くなるな。後悔がピークに達するまで待て」


 リネアは長く泣き続け、気絶するんじゃないかと心配になるほどだった。しばらくして、彼女は姿を消した──現実世界に戻ったのだ。


 リネアが去ると同時に、俺たちはこっそり外へ。「ナイラ、これやりすぎじゃないか?こんな冗談……リネアが本気で怒らないか?」と俺は不安げに尋ねた。


「安心しろ」彼女はニヤリと笑った。「長年、女の子と付き合って──いや、女性心理を研究してきた俺の経験上、リネアは一度心の防御が崩れたら二度と修復できないタイプだ。たとえ後で嘘だと気づいても、無条件でお前を愛し続けるさ」と肩をポンと叩いた。「信じろ」


 俺は嫌悪の目で彼女を見た。「それ、チャラ男の自慢話にしか聞こえないんだが」


「……」ナイラは口を開き、また閉じた。ちっ、少しは的を射ている。


 現実世界で、リネアは俺とナイラの身体を並べて横たえた。指を震わせながら二人の頬を撫でる彼女の視線は虚ろだった。


 ナイラは生物学的遺伝子を操作し、自身の身体を完璧な仮死状態に見せていた──リネアでさえその偽装を見抜けなかった。


 この悪魔はさらに「条件反射」まで仕込み、遠隔操作で身体を制御。リネア(そして俺も!)は彼女の思考を読めなくなっていた。こうしてリネアは絶望の罠に陥った──二人が死んだと思い込んだのだ。


「私……一人になるの?」リネアは涙をこらえようと唇を噛んだが、頬は既に涙で濡れていた。


「ハジメ……知ってる?私は結婚の誓いの言葉まで考えてたんだよ……」俺の亡骸を見つめ、恥ずかしくて胸が張り裂けるような言葉を紡いだ。


「なのに君は絶対知ってたはずだろ!なんで認めないの?言ってくれれば……絶対『はい』って答えたのに!」嗚咽がこぼれた。「私がツンデレなことぐらい分かってるくせに──どうして押し切ってくれないの!?」


 ナイラの亡骸に向き直り、声を詰まらせて:「ナイラ……実は雪山であの時……心が揺れ始めてた。女同士でも?構わない!ただお互いが──」


[本当にそれでいいのかい?] ナイラの声が突然、テレパシーで彼女の思考に潜り込んだ。


「ん?」リネアが表情を変え始めたナイラの顔を見つめる。記憶の洪水が彼女の思考を襲った──俺たちが共謀して騙していたことを悟ったのだ。


 リネアの口元がピクッと震えた。安堵と怒りが入り混じった感情が渦巻く。今の彼女の表情は、言葉では表現できないものだった。


 死んでないのか…?彼女の心臓は喜びで高鳴り、二人を抱きしめたい衝動に駆られた。

 でも騙したのか…?その手は二人をぶん殴りたいほど痒くなった。


「リ、リネア…?」俺が躊躇いながら呼びかける。


 感情が爆発したリネアは俺を乱暴に押しのけた。目は真っ赤に染まり、突然俺の唇を噛み切るかと思うほど強く噛んだ。


「もういい!やめて!」傷ついたライオンのように暴れる彼女を必死になだめる。


「離して…怖いんだよ!」俺が逃れようとしたその瞬間、水晶のように透き通った涙が彼女の瞳から俺の頬へ落ちた。


「酷いよ…そんな風に私をいじめて…」嗚咽が空間を震わせた。


「はあ?」俺が呆然とナイラを見ると、彼女は満足げに微笑んでいた──狡猾な作戦が成功したのだ。


 長い間泣き続けたリネアは、あばら骨が折れそうなほど強く俺を抱きしめ、ようやく落ち着いた。


「ずるい!二人で仲良くして…私も彼女になりたいのに!」顔を赤らめながら、今度は復讐心に燃えた決意をにじませて言った。


「もちろん、愛しい人よ」ナイラが蜂蜜のように甘い声で応じた。「その言葉をずっと待っていた」


「え?ちょっと…その手どこに触れてるの!?」リネアがナイラの制服の下へ潜り込もうとする右手を押しのける。


「自分で彼女になりたいって言ったじゃない~」ナイラは素早くリネアの手を掴み、抱擁に引き寄せた。


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