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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第二巻
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第55章 再会

「ありがとう」俺は複雑な感情を込めて言った。

「よろしい」


 エレシュは満足そうに、こちらの感謝の眼差しを受け止めた。今の俺は、優しい少女に拾われた野良犬みたいに見えたかもしれない。彼女は誇らしげに俺の頭をポンポンと叩いた。


 一瞬、エレシュがとても優しく見えた。彼女のなだめ方は可愛らしく感じられた。洞窟の奥へ進んでいくと、三叉路に到着した。数人の兵士が傍らに立ち、スーツケースを守っている。


「お嬢、ようこそ。首長が残されたものです」兵士の一人が敬礼し、スーツケースをエレシュの前に差し出した。


「ええ。配置に戻りなさい」エレシュはそれを受け取り、兵を退けた後、暗証コードを入力して開け、一通の手紙を取り出した。


 エレシュは手紙に目を通すと、きっちりと折りたたんだ。

「火を」


 兵が即座にマッチを差し出し、手紙を燃やした。


「行くわよ、左の道に入って」エレシュはスーツケースをしっかり握りしめ、指示を出した。


「待て…!」エレシュが突然、中央の分岐路を警戒しながら見据え、部下に出口への照準を合図した。拳を握りしめ、額の魔法の角がピンと張る。


「俺が確認する!」俺は即座に出口へ走り、彼らの視界を遮った。リネアたちがもうすぐ現れるはずだ。エレシュが発砲命令を出せば、彼らは格好の的になる。


「ハジメ、戻りなさい! 全員、武器を下ろせ!」エレシュは慌てて近づき、俺を後ろに引き戻そうとした。


 しかし彼女が成功する前に、二つの影が洞窟の暗がりから飛び出してきて――俺にぶつかり、転倒させた。


「*ズドン*」


[この懐かしい感覚は何だ?] 丸くて柔らかい何かを手が擦り、甘い疼きが広がる。ナイラかリネアのものに違いない。

[おかしい…視界が真っ暗だ? 口元に何か窪んだ温かいものが?]


 反射的に舌でその部分を舐めた――するとリネアが激しく反応した。

[これは…?] 確かめるように、もう一度舐めた。

[リネアの匂いのはずだが…なぜこんなに柔らかい? いや、なぜ口の中が湿っぽい?]


「や、やめて…!」リネアがかすれた声で叫んだ。突然、彼女が俺の顔を強く押さえつけ、息が詰まりそうになった。


[リネア、離して、息ができない!] 起き上がろうとしたが、足がナイラの体に挟まれている。その間も手は二つの柔らかな膨らみから離れることを拒み、結果的に俺はこの恥ずかしい瞬間を味わう羽目になった。


 第三者の視点から:

 リネアがハジメの顔に跨り――ハジメの唇は彼女の禁断の領域に密着していた。ナイラはハジメの膝の上に座り、顔はハジメの足元の不適切な位置に埋もれている。ハジメの手はリネアの胸を掴んだ(前述の通り)。リネアは足をつり、ナイラは筋肉痙攣(人間の体が超跳躍に耐えられず)を起こしていたため、三人は外目には... 極めて官能的な姿勢で絡み合っていた。


 久々の再会は... 絶望的にドタバタな形で訪れた。


 この痛気持ちいい感覚を楽しみ始めた頃、一つの手が俺の襟を掴み地面から引き剥がした。


「ハジメ、よくも他の女に跨られて平然としていられるわね?!」

 エレシュが俺の頬を殴打する。その一撃はあまりに強烈で、俺の体が吹き飛び、リネアとナイラを追っていた二人の兵士に衝突! それでも足りず、エレシュと兵士たちは俺を岩壁に叩きつけるまで平手打ちを繰り返した!


 奇跡的に、これほどの殴打にも耐えて生き延びた。岩壁から起き上がり、体の埃を払い、首の骨を軽く整え直して歩き戻る。


「跪け」

 俺が何か言う前に、エレシュが足を振り上げて俺の膝を蹴り飛ばした!


「*ズキッ!*」

 膝が粉砕され、体が崩れ落ち、俺は彼女の前に座り込む。口を開く間もなく、彼女の革靴が俺の口を塞いだ。「ンムッ――!」と唸るしかない。


「説明しなさい、この二人の女とお前の関係は?」

 エレシュが殺気立った目でリネアとナイラを睨みつける。


「ンムッ… ンムッ!」


「なるほどね。一人は恋人で、もう一人は片思いか。立派だ… 本当に立派だわ」

 エレシュが歯軋りしながら氷のような目で呟く。


 まだ何も言ってないのだが!?

 気づけば涙が零れそうだった。エレシュの直感が鋭すぎる!


「バカ! あいつなんか好きじゃないわよ!」

 ツンデレのリネアが感情を認めるはずもなく、逆上して反論する。


「冗談でしょう、ハジメ? 傲慢で冷酷なこんな女が好みだなんて」

 エレシュがさらに強く踏み込む。


[他人を冷酷呼ばわりするお前が言うか?]

 泣きたい… でも可愛い美少女たちに会えた後悔は一切ない。


「動くな! 核爆弾よ!」

 俺が虐められるのを見てナイラが我慢できず、バスケットボール大の核爆弾を取り出し脅す――


 ドカン!

 エレシュが炸裂踢で爆弾を蹴飛ばす。爆弾は岩壁にめり込みひび割れを生じさせ、崩れた小石がナイラの頭を直撃した。


「あらあら、狡猾な小娘。ハジメ、君の趣味… 実に多様ね」

 エレシュが俺に温かな笑みを向ける。左手で俺の頬を撫でる――本来なら心地よい光景だが、今すぐ行動しなければ命がないと確信した。


 二人の戦闘班員がリネアとナイラを拘束しようとする。その動きがエレシュの逆鱗に触れた。

「余計な動きね?!」

 彼女の拳が閃く。二人は吹っ飛び、口から血を噴いた。


 彼らは身体硬化が可能だが、エレシュの一撃には耐えられなかった…

 化け物級の力とはこのことか?


「誰が動けと許可した?」

 エレシュが倒れた兵士たちを陰鬱な目で見下ろす。


「わ、我々は命令を執行しただけです! お許しを!」

 彼らは震える声で平伏した。


 実は彼らは状況を理解していなかった。ただ‘叔父貴’に従っていただけで、目の前の少女がその娘だとは知らなかったのだ。


「誰の命令だ?」


「名前は知りません…ただ『長老』と呼んでいました」


 彼らは権力を求めて叔父貴に仕えているだけで、忠誠心からではない。生き延びるためなら誰でも裏切れる。


「…『長老』?お父様のことか?」エレシュの顔が曇る。俺への‘裏切り’への怒りが突然怪しくなり、彼女の頭の中でパズルのピースが組み合わされ始めた。


「なぜお父様が彼女たちの逮捕を?」


「核爆弾を所持しているためです。長老は我々に爆弾の押収と彼女たちの拘束を命じました」


「よろしい。戻ってお父様に報告せよ――私が引き継いだと伝えろ。君たちを罰したりはしない」


 エレシュは状況を理解した:リネアとナイラが祭壇から核爆弾を持って脱走。出口で父が追っ手を送り、道を塞いでいたハジメが彼女たちに押し倒されたのだ。


 誤解…全ては勘違いだった。

 エレシュは後悔の眼差しで俺を見つめた。


「悪かったわ、私の不注意よ。こちらの二人の女性が騒動の原因者ね。彼女たちを罰して償わせる」彼女は俺を立ち上がらせると、鋭い目でリネアとナイラを睨みつけた。


 頭の中では、すでに二人への“制裁方法”を練っているのが伝わってくる。


「ふん、本日は重大な用件がある。暫くは自由にさせてやる。だが全てが終わったら…」声が低く渇く。「…死より辛い生を味わわせてやる」


「君たち!」エレシュが兵士を指さす。「彼女たちを引きずっていけ!核爆弾も回収だ!」


 そう言うと左の分岐路へ向き直った。


[ハジメ、どうやら再会は一旦お預けのようね] 兵士に引きずられながらナイラが俺を見つめる。


[自分たちを守れ。特にお前だリネア。俺の力がなければお前の身体能力は三人の中で最弱だ。心配するな、こっちの面倒は俺が見る]


[…わかったわ] リネアは罪悪感混じりに応じた。


 エレシュは一行を率いて左の道へと消えていった。


 俺は彼女にお姫様抱っこされている。男としてこの体位は恥ずかしい。それに、俺の回復力で粉砕された膝は既に治っている。自分で歩けるのだ。だが体裁を保つため、演技で足が不自由なふりを強いられている。


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